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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

309【予定は未定編09】護衛隊の未来予想図

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【パラディン大佐隊・第十一班第一号待機室】

 班長会議終了後、ザボエスがヴァッサゴを連れて来訪。
 レラージュは珍しく、コーヒーを淹れて出す。
 なお、食べきれなかったチョコレートは、ポケットに入れて持ち帰っている。

ロノウェ
「まさか、ドレイク大佐がアルスター切ろうとしてたとは夢にも思わなかったぜ……」

ヴァッサゴ
「噂で聞いたかぎりじゃ、そんなことするような人には思えないけどな」

ザボエス
「でもまあ、今のアルスター大佐隊見てたら、ドレイク大佐じゃなくても、戦死者出る前にアルスター切りたいって思うわな」

ヴァッサゴ
「それでも、ドレイク大佐は〝砲撃隊〟のために、左翼入れ替えてくれたわけだ」

ロノウェ
「その左翼入替言ったのは、ヴァラクらしいけどな……」

ヴァッサゴ
「ヴァラクか……ドレイク大佐の口利きで〝大佐〟になれたってのはほんとかね……」

ザボエス
「ほんとだと思うぞ。ドレイク大佐にずいぶん気に入られてるそうだからな。ダーナ大佐とは違った意味で」

ヴァッサゴ
「ダーナ大佐か……完全につかまったな」

ザボエス
「ああ、つかまった。もう逃げられねえ」

ロノウェ
「まあ、あっちはもうどうでもいいや。俺らはこっちの人間だ」

ザボエス
「そうそう。こっちに転属されて本当によかった」

ロノウェ
「……意外とエリゴールが冷静だったな」

ザボエス
「冷静?」

ロノウェ
「いや、ヴァラクが言ったって知ったら、さすがヴァラクだって興奮するかと」

ザボエス
「ドレイク大佐に知らされたときには興奮したんじゃねえのか。俺らの前で話したときにはもう冷めてただけで」

ロノウェ
「……何か、そのドレイク大佐のほうに、ものすごく心酔してるみたいだったな」

ザボエス
「あ、それは俺も思った。〝ドレイク大佐が触ったチョコ取った〟って〝砲撃隊〟みてえなこと言ってたしな」

ロノウェ
「まあ、あんなこと言われたら心酔もするか」

ザボエス
「〝部下タラシ〟だよな。……〝部下に罪はない。部下を生かすも殺すも指揮官しだいだ〟」

ロノウェ
「よく覚えられたな」

ザボエス
「録音した」

ヴァッサゴ
「またか」

ザボエス
「エリゴールもまた、よく覚えてたよな」

ロノウェ
「あいつは俺らと頭の出来違うから。でも、よくドレイク大佐のところに行けたよな。あそこにゃあいつが見捨てた部下がいるんだろ?」

ザボエス
「そりゃ、パラディン大佐に言われたら嫌でも行くしかねえだろ。他に代理で行けるような奴はいねえ」

ロノウェ
「〝大佐代行〟だからな」

ザボエス
ヒラだけどな」

ロノウェ
「しかし、前衛か。……俺らはどうにかなるだろうけど、アルスターのほうはどうにかなるのかね?」

ザボエス
「どうだろな。どうにかならなかったら、ウェーバーとマクスウェルのときみたいに強制撤収されて、アルスターは〝栄転〟ってことになるんだろうけどな」

ロノウェ
「ドレイク大佐的には万々歳だな」

ザボエス
「俺らも万々歳だよ」

ヴァッサゴ
「でも、アルスターが出撃前にいなくなる可能性もあるんだろ?」

ザボエス
「殿下に抗議して〝栄転〟。何か理由つけて〝勇退〟。〝砲撃隊〟にゃ悪いが、ドレイク大佐的には超万々歳だろうな。アルスターに馬鹿な命令されなくて済む」

ロノウェ
「馬鹿な命令?」

ザボエス
「たとえばだが。……『連合』のに突っこんで玉砕」

ロノウェ
「そら馬鹿だ。それでも、無人艦は守ろうとするのか?」

ザボエス
「ドレイク大佐は〝ウェーバー大佐隊の悲劇〟を繰り返したくねえそうだから、今度は何があっても有人艦を守るように殿下に言うんじゃねえかねえ。もしかしたら、もう言ってるかもしれねえな」

ヴァッサゴ
「ああ、殿下にメールで左翼入替してもらえる人だからな。それくらい平気で言えるな」

ロノウェ
「しかし、改めて考えると、ドレイク大佐ってすげえな」

ヴァッサゴ
「〝すげえ〟っていうより〝こええ〟」

ロノウェ
「アルスターはどれを選ぶかねえ……」

ザボエス
「出撃はするんじゃねえか? 最年長〝大佐〟の意地で」

ロノウェ
「それでもし、どうにかなっちゃったら?」

ザボエス
「それはそれでいいんじゃねえのか? ドレイク大佐がアルスター切ろうとしたのは、アルスター大佐隊が劣化したからだろ? 使えるようになったら無理に切る必要もなくなるんじゃねえのか」

ロノウェ
「でも、どうにかなるとは思えねえなあ。〝後衛なめんな、前衛野郎ども〟だぜ」

ヴァッサゴ
「理想としては、強制撤収そして〝栄転〟か。……もし強制撤収されたら、その後はどうするんだ?」

ロノウェ
「あー、そうだな。無人艦がカバーに入るだろうが、前衛だけで……はっ、だから二組に分けたのか!」

ザボエス
「まあ、そうなんだろうな。……すげえな、エリゴール」

ロノウェ
「はっきり言って、もう〝大佐〟クラスだけど、エリゴール本人にその気はまったくねえし、そもそもパラディン大佐が手放すわけねえしな」

ザボエス
「ああ、手放さねえ。何があっても手放さねえ」

ロノウェ
「ついでに言うと、一班も手放さねえ」

ザボエス
「あそこはエリゴールも気に入ってるだろ。あいつ、あっち行ってからはっちゃけた」

ロノウェ
「〝四班長〟だった頃のことを知らない奴らといたほうが居心地いいんだろ……」

ヴァッサゴ
「本当に、あいつらの底上げのためにあっちに行ったのか?」

レラージュ
「元三班長に追い出されたからですよ」

ヴァッサゴ
「おまえ! 今までずっと黙ってたくせに!」

レラージュ
「…………」

ヴァッサゴ
「またシカトか!」

ロノウェ
「……ところで、アルスター大佐隊が〝元アルスター大佐隊〟になったら、指揮官はパラディン大佐になるんだよな?」

ザボエス
「そうなるだろうな。もしかしたら、新しい〝大佐〟がそこの指揮官に任命されるかもしれねえが、まずは大佐に二〇〇隻まかせてみるんじゃねえのか?」

ロノウェ
「それで、もし大佐がアルスターみたいに失敗したら、また同じように指揮権取り上げられるのか?」

ザボエス
「たぶんな。でも、〝元アルスター大佐隊〟なら、それでもよくねえか?」

ロノウェ
「あー、何か、そっちのほうがいいな。むしろ、そっちの方向で」

ヴァッサゴ
「でも、一応挑戦はするわけだろ? ……まさか、今度は〝元アルスター大佐隊〟の底上げにエリゴールが行ったりしないだろうな?」

ロノウェ
「それはないだろ。軍港違ったら、大佐の護衛ができなくなる……はっ、大佐がエリゴール追っかけて引っ越し!?」

ザボエス
「ありそうだ! すっげーありそうだ!」

ロノウェ
「もしそんなことになったら、俺らはどうなるんだ?」

ザボエス
「大佐的には、エリゴールさえいれば満足だろ……」

ロノウェ
「俺らはここに置き去り!?」

ザボエス
「そんなこと言ったら、〝砲撃隊〟も置き去りだよ」

ロノウェ
「でも、エリゴールは一班気に入ってるだろ!?」

ザボエス
「いや、いくら気に入ってても、あいつはやらなきゃならなきゃ行くだろ」

ヴァッサゴ
「うわあ……行きそう……行ってまたすぐに牛耳りそう……」

ザボエス
「あいつ、人を切るのも仕切るのも得意だからな」

ロノウェ
「でも、〝砲撃隊〟は〝変態〟だったから、あっというまに手なずけられたが、〝元アルスター大佐隊〟はそう簡単にはいかないだろ」

ザボエス
「いや、〝元アルスター大佐隊〟も〝ジジイはもうたくさんだ〟と思ってるかもしれない」

ロノウェ
「また若くて美形の〝大佐〟に飢えてるのか!?」

ザボエス
「その可能性は高い! もしかしたら〝砲撃隊〟よりも!」

ロノウェ
「くそう! 〝大佐〟に若さと美貌を求めるな!」

ヴァッサゴ
「決めつけるなよ。まだ何もかも臆測だろ」

ロノウェ
「でも、エリゴールがあっちに行くのはありそうだろ。そしたら、今度は一〇〇隻対一二〇隻で訓練だ!」

ヴァッサゴ
「うわあ、規模が一気にでっかくなった!」

ザボエス
「これでコールタン大佐と合同演習したら、ほぼ互角になる!」

ロノウェ
「互角になったらまずくねえか? 『連合』役のほうが多くないと」

ザボエス
「とにかく、エリゴールは間違いなく俺らの敵になる!」

ロノウェ
「うおお、絶対勝てねえ! 今からあいつのドヤ顔が目に浮かぶ!」

ザボエス
「もし、あいつが一〇〇隻指揮してたら、もう〝大佐代行〟じゃなくて〝大佐〟だな」

ロノウェ
「今さらだろ。大佐の代わりにドレイク大佐に会って、俺らに話してるんだぞ?」

ヴァッサゴ
「……あ。何か訓練で大佐がこっちの隊率いてエリゴールと一騎討ちしそうな予感が。エリゴールが負けたら一緒に食事しろとか言って」

ザボエス
「おい……それでこっちが負けたら、俺らはどうなるんだよ……?」

ロノウェ
「……懲罰?」

ザボエス
「くそっ! どっちもものすごくありそうだ!」
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