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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

273【挨拶回りの前後編25】四班の場合

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【パラディン大佐隊・第四班第一号ブリッジ】

四班長・ワンドレイ
「くそう! こうなるんじゃないかと思ってたら案の定だ!」

副長
「本当に。元四班長は本気でうちを〝留守番〟にしようとしていますね」

ワンドレイ
「それならもう、こんなタイムトライアルなんかしないで〝留守番〟にしてくれよ!」

副長
「いや、元四班長にそんな権限はありませんから。うちを〝留守番〟にすると大佐に言わせるために、こんなタイムトライアルを具申したのでは?」

ワンドレイ
「大佐は元四班長に言われれば、迷わずうちを〝留守番〟にするだろ……」

副長
「それはしたくないんでしょう。元四班長が」

ワンドレイ
「……おまえはどこのの副長だ?」

副長
「残念なことに四班の班長艦です。現四班長」

ワンドレイ
「現四班長……」

副長
「せめて、二班のタイムは越えたいところですが……最初の〝移動しながら縦〟でつまずきそうなんですよね……」

ワンドレイ
「……〝移動しないで縦〟するか」

副長
「最悪、そうなりますね」

パラディン
『それでは、四班の計測、開始します! 五、四、三、二、一、ゴー!』

 ***

【パラディン大佐隊・第八班第一号ブリッジ】

八班長・ブロック
「ついに今日の大本命だ。……十一位か十二位になってもらわないと」

副長・ウィルスン
「いっそもう、〝留守番〟にしてやれよ……」

ブロック
「スタートダッシュは悪くない! が、〝ゆっくり移動しながら縦〟になってしまっている!」

ウィルスン
「ここに来るまでに練習しなかったのかね。それとも、練習してあれかね」

ブロック
「第一チェックポイントは、必ず〝魚〟で通過しなければならないからな……そこからどこまで巻き返せるか」

ウィルスン
「巻き返すどころか、もう心折れてるな。〝開き〟が歪んでる……」

ブロック
「そして、やっぱり四班が苦手な〝縦走り〟。……今回は〝縦走り〟がいちばんまともだな」

ウィルスン
「〝移動しながら縦〟さえなければ、そこそこのタイムは出せてたかもな」

ブロック
「それじゃ困るから、元四班長は〝移動しながら縦〟を入れたんだろ」

ウィルスン
「公式では大佐が考えたことになってるぞ。注意しろ」

パラディン
『四班、お疲れ様! タイムは……六分三秒〇五! 何かの間違いじゃないかって何度も確認しちゃったよ! 二巡目までにもっと練習して、せめて五分台にはしてね!』

ブロック
「……これ以上悪いタイム、なかなか出せないな」

ウィルスン
「敗因は何だ?」

ブロック
「三班の次だったことかな。あとは慢心。班長も、班員も」

ウィルスン
「オールディス班長みたいなこと言うな」

ブロック
じきだから。昔も、今も」

 ***

【パラディン大佐隊・第一班第一号ブリッジ】

フィリップス
「今頃、元四班長は嘲笑っているかな」

ハワード
「嘲笑ってはいないだろ。……含み笑ってる」

フィリップス
「うわあ……リアルに目に浮かぶ……」

 ***

【パラディン大佐隊・第三班第一号ブリッジ】

副長・ホフマン
「四班は〝移動しながら縦〟の練習はしていなかったんでしょうか?」

エリゴール
「まったくしてなかったことはないだろうが、練習量は二班よりも圧倒的に少なかったんじゃないのか?」

ホフマン
「ああ、なるほど。〝縦走り〟のほうを重点的に練習してしまったんですね」

エリゴール
「なぜそう思う?」

ホフマン
「え? 四班は〝縦走り〟が苦手だと言っていましたから……班長が……」

 ホフマン、何かに気づいた顔をしてエリゴールを見る。
 エリゴールは満足げに笑う。

エリゴール
「何が苦手かは、自分でも把握しておかないとな。他人の言うことが正しいとは限らない」

ホフマン
「……肝に銘じておきます」

クルーたち
(元四班長が臨時でも班長でよかった……本当によかった……)
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