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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

265【挨拶回りの前後編17】慣例です

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【パラディン大佐隊・第三班小会議室】

 エリゴール、入室。
 その後ろには、第一号副長・ホフマンがいる。
 エリゴールが入室したと同時に、九人の艦長たちは起立して敬礼。
 エリゴールは立ち止まって、しばらく眺めている。

エリゴール
「……副班長」

副班長(第六号艦長)・クライン
「はい! 班長!」

エリゴール
「この班は、班内会議の前に班長に敬礼するのが慣例になってるのか?」

副班長・クライン
「え、ええと……」

エリゴール
「嘘はつくな」

副班長・クライン
「……はい。そのような慣例はございません」

エリゴール
「なら、どうして今やってる?」

副班長・クライン
「それは……」

第二号艦長・ハミルトン
「はい! それは自分たちが今の班長に敬意を表したかったからです!」

エリゴール
「俺は今、副班長に訊ねてる。勝手に発言するな、〝死んだふり〟」

第二号艦長・ハミルトン
「はっ! 大変申し訳ございませんでしたっ!」

ハミルトン以外の艦長たち・ホフマン
(やっぱり、〝死んだふり〟で覚えられてるんだ。……羨ましいような、羨ましくないような)

副班長・クライン
「……すぐに返答できず、大変申し訳ございません。ですが、ハミルトンの発言内容自体は間違っておりません。我々は現班長に敬意を表すため、敬礼をいたしました」

エリゴール
「そうか。じゃあ、次の班長にもそうしてやれ。俺はあくまで臨時で、敬礼されるような立場でも人間でもない。でもまあ、されたら返すのが礼儀だからな」

 エリゴール、見本のような答礼をする。

エリゴール
「直れ。着席。……もう俺には敬礼なんてしなくていいぞ。時間の無駄だ」

副班長・クライン
「……はい。了解いたしました」

エリゴール
「ところで、ここは席順はどうなってる?」

副班長・クライン
「え……ああ、班長隊と副班長隊に分かれて座っています。あちらが班長隊。こちらが副班長隊。どちらも艦号順です」

エリゴール
「なるほど。じゃあ、俺の座る席がないな」

第二号艦長・ハミルトン
「え! 班長はここです! ここに座ってください!」

 ハミルトン、いわゆるお誕生日席を必死で指し示す。
 ちなみに、ハミルトンの対面はクラインである。

エリゴール
「副班長。そういう慣例か?」

副班長・クライン
「慣例です!」

エリゴール
「だろうな。……副長。椅子持ってきて、俺の隣に座れ」

第一号副長・ホフマン
「了解しました!」

副班長・クライン
「あの……副長が参加する慣例はありませんが……?」

エリゴール
「ああ、それは知ってる。単に、俺が同じ説明繰り返すのが面倒くさいから連れてきた」

副班長・クライン
「そうでしたか。それは失礼いたしました……」

 エリゴールとホフマン、ようやく着席。

エリゴール
「で、このミネラルウォーターも慣例か?」

 テーブルの上にはよく冷えたミネラルウォーターの瓶が置かれている。
 他の艦長の前にも同じ瓶が。

副班長・クライン
「はい! 慣例です!」

クライン以外の艦長たち
(あ……クラインが嘘をついた……)

エリゴール
「そうか。いい慣例だな。誰が買って準備するんだ?」

副班長・クライン
「持ち回りです! 今回は自分が準備しました! 次回は第七号艦長が準備します!」

クライン以外の艦長たち
(あ……クラインが慣例を作った……)

第七号艦長・ガース
(俺は炭酸がいいな……元四班長に炭酸でもいいか確認しておかないと)

エリゴール
「そうか。俺は次回参加できないかもしれないが、まあ、その慣例は続けてくれ」

 エリゴール、喉が渇いていたのか、さっそくミネラルウォーターを開栓して飲み出す。
 それを息を呑んで見守る一同。

副班長・クライン
「あの……お味はいかがでしょうか……?」

エリゴール
「よく冷えててうまいが? おまえらは飲まないのか?」

艦長たち
「飲みます! ありがとうございます!」

エリゴール
「いや、買ったのも準備したのも俺じゃないけどな。……ああ、副長の分がないな。予備とかないか?」

副班長・クライン
「ご安心ください! 予備ならあります!」

 クライン、足元に置いていたクーラーボックスを机上に置いて蓋を開ける。
 中にはミネラルウォーターの瓶が数本入っている。

エリゴール
「それならよかった。副長、もらっとけ」

第一号副長・ホフマン
「班長……艦長ではない自分にまで、お気遣いありがとうございます……! このホフマン、一生ついてまいります……!」

エリゴール
「大袈裟な。礼なら副班長に言え。あと、俺はあくまで臨時の班長だからな。ついてくるのはその間だけでいい」

第一号副長・ホフマン
「はい! 了解しました!」

艦長たち
(あの副長……きっと嘘をついている……一生ついていくつもりだ……)

第七号艦長・ガース
「あの、班長。準備する飲み物は、アルコール以外は基本的に自由なんですが、班長は炭酸飲料はお好きですか?」

ガース以外の艦長たち
(あ……今度はガースが慣例を作った……)

エリゴール
「あー、俺は炭酸はあんまり得意じゃないな。でも、俺の好みはどうでもいいだろ」

第七号艦長・ガース
「いえ! 全員が飲めるものでないといけませんから! そうですか……炭酸はお好きではないですか……」

副班長・クライン
(微炭酸のミネラルウォーターにしなくてよかった……本当によかった……)

第八号艦長・ブレイド
(ミネラルウォーター推した俺、グッジョブ!)

第二号艦長・ハミルトン
(元四班長が飲んだ瓶、何とかして手に入れられねえかな……)
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