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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)
232【交換ついでに合同演習編137】合同演習二日目:私怨より保身
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【コールタン大佐隊・旗艦〈デュランダル〉ブリッジ】
オペレータ
「大佐! 後続の六班も移動隊形縦になりました!」
コールタン
「何ィ!?」
オペレータ
「六班のうち四班が先行に追随、残り二班が……本艦の後方に回りこもうとしています……!」
コールタン
「……その二班のどっちかにエリゴールがいるな」
クルタナ
「確実にいますね。……どうします? 振り切りますか?」
コールタン
「振り切ってどうする? 俺らの仕事は〈フラガラック〉を無事に逃がすことだが、この艦隊のスローガンは『連合』の〝全艦殲滅〟だ」
クルタナ
「スローガン……まあ、そうですが、我々は一隻、向こうは二十隻です。まともにやり合ったら勝ち目はありません」
コールタン
「まともにやり合わなくても勝ち目はねえだろ。ただし、エリゴールが乗ってる軍艦だけは必ず落としていく! あいつがいなくなれば、元ウェーバー大佐隊も妙な動きはできなくなるはずだ!」
クルタナ
「一見もっともらしいですが、私怨にまみれていますね」
コールタン
「演習中の今しかできねえことだろうが! ……あいつのことだ、どっちかの班長艦に絶対乗ってる! 適当なとこで反転して、班長艦を狙い撃ちしろ! それさえできれば今回は万々歳だ!」
クルタナ
「適当なところって、アバウトすぎません?」
コールタン
「じゃあ、今から十秒後に反転! 射程に入ったら班長艦狙い撃ち!」
クルーたち
「了解!」
クルタナ
「……四班長なら大佐の考えることも予想していそうですが……いったいどうやって裏をかくつもりでしょうか……」
コールタン
「裏をかかれる前提か」
クルタナ
「四班長ですので」
***
【パラディン大佐隊・第一班第一号ブリッジ】
フィリップス
「〈オートクレール〉でも思ったけど、やっぱ護衛の旗艦は足が速いよな! 演習じゃなかったら完全に逃げられてる!」
ハワード
「背面撃ちを狙うより、〈オートクレール〉と一緒に逃げてたほうが絶対によかったよな……」
フィリップス
「それほどうちを背面撃ちしたかったのか……」
オペレータ
「班長! 〈デュランダル〉が反転しました! そのままこちらに向かってきます!」
ハワード
「何!?」
フィリップス
「背面撃ち諦めて正面撃ち!?」
エリゴール
「まあ、どこかで反転しなきゃ、背面撃ちもできないからな」
フィリップス
「なに悠長に構えてるんだよ! コールタン大佐を追いつめたのはあんただろうが!」
エリゴール
「追いつめた覚えはないが……オペレータ! 六班の射程に〈デュランダル〉は入ってるか!」
オペレータ
「は……はい! ギリギリですが入っています!」
エリゴール
「通信士! 六班に緊急連絡! 〝魚〟から砲撃隊形になって〈デュランダル〉を攻撃しろ!」
通信士
「りょ、了解!」
フィリップス
「え? 何? どういうこと?」
エリゴール
「単純な話だ。そもそも〈デュランダル〉は、〝背面撃ち組〟からの砲撃を恐れて、大きく迂回していた。ところが〝背面撃ち組〟が解体して攻撃目標がなくなった上、逆にうちと十二班に追われる立場になった。さっきあんたが言ったとおり、〈デュランダル〉は逃げようと思えばいくらでも逃げられる。でも、それじゃ演習にならないから、相撃ち狙いで正面から攻撃しようと反転した」
フィリップス
「まあ、それはそうだろうな。でも、何で六班……あ、そうか! 六班は俺たちと入れ替わったようなもんだ! だから背面撃ちも狙える!」
エリゴール
「そういうことだ。おまけに、あの六班だ。〝魚〟から砲撃隊形への移行なんて簡単にこなすだろ」
フィリップス
「まさか……そこまで計算して六班に直進を!?」
エリゴール
「それ以前に、六班は勝手に逆走してただろうが」
フィリップス
「言われてみれば確かに!」
エリゴール
「いわば、俺たちは囮だ。〈デュランダル〉は六班に任せて、〝切りこみ組〟の後を追うぞ」
フィリップス
「え? 六班の援護はしないのか?」
エリゴール
「いくら〈デュランダル〉が高性能の軍艦だろうが、相手は小回りのきく砲撃艦十隻だぞ? 逆に、六班が落とせなかったら、次の出撃、問答無用で〝留守番〟だ」
フィリップス
「いつのまにか六班の進退問題に発展してる!」
ハワード
「六班には言わないほうがいいな」
十二班長・ザボエス
『意外だな。おまえは〈デュランダル〉だけは人任せにしねえと思ったが』
エリゴール
「撃てる奴が撃てばいい。それに、俺が乗ってる軍艦が撃ったら、あとあと面倒になりそうなことに今気がついた」
フィリップス
「最後の最後で保身!?」
ハワード
「いや、むしろ冷静さを取り戻したんじゃないのか?」
フィリップス
「何にせよ、コールタン大佐、気の毒だな……」
ハワード
「殿下から、何のお咎めもなければいいけどな……」
***
【コールタン大佐隊・旗艦〈デュランダル〉ブリッジ】
コールタン
「やっぱり、裏をかきやがった……!」
クルタナ
「裏をかかれたというより、これは完全に我々の不注意でしょう……先行の一班が逆走していたことに、まったく気づかなかった……」
コールタン
「……おまえら、減給」
クルーたち
「ひい!」
クルタナ
「……このことは、後で必ずパラディン大佐に報告しておきます」
コールタン
「それだけは! それだけはどうか!」
オペレータ
「大佐! 後続の六班も移動隊形縦になりました!」
コールタン
「何ィ!?」
オペレータ
「六班のうち四班が先行に追随、残り二班が……本艦の後方に回りこもうとしています……!」
コールタン
「……その二班のどっちかにエリゴールがいるな」
クルタナ
「確実にいますね。……どうします? 振り切りますか?」
コールタン
「振り切ってどうする? 俺らの仕事は〈フラガラック〉を無事に逃がすことだが、この艦隊のスローガンは『連合』の〝全艦殲滅〟だ」
クルタナ
「スローガン……まあ、そうですが、我々は一隻、向こうは二十隻です。まともにやり合ったら勝ち目はありません」
コールタン
「まともにやり合わなくても勝ち目はねえだろ。ただし、エリゴールが乗ってる軍艦だけは必ず落としていく! あいつがいなくなれば、元ウェーバー大佐隊も妙な動きはできなくなるはずだ!」
クルタナ
「一見もっともらしいですが、私怨にまみれていますね」
コールタン
「演習中の今しかできねえことだろうが! ……あいつのことだ、どっちかの班長艦に絶対乗ってる! 適当なとこで反転して、班長艦を狙い撃ちしろ! それさえできれば今回は万々歳だ!」
クルタナ
「適当なところって、アバウトすぎません?」
コールタン
「じゃあ、今から十秒後に反転! 射程に入ったら班長艦狙い撃ち!」
クルーたち
「了解!」
クルタナ
「……四班長なら大佐の考えることも予想していそうですが……いったいどうやって裏をかくつもりでしょうか……」
コールタン
「裏をかかれる前提か」
クルタナ
「四班長ですので」
***
【パラディン大佐隊・第一班第一号ブリッジ】
フィリップス
「〈オートクレール〉でも思ったけど、やっぱ護衛の旗艦は足が速いよな! 演習じゃなかったら完全に逃げられてる!」
ハワード
「背面撃ちを狙うより、〈オートクレール〉と一緒に逃げてたほうが絶対によかったよな……」
フィリップス
「それほどうちを背面撃ちしたかったのか……」
オペレータ
「班長! 〈デュランダル〉が反転しました! そのままこちらに向かってきます!」
ハワード
「何!?」
フィリップス
「背面撃ち諦めて正面撃ち!?」
エリゴール
「まあ、どこかで反転しなきゃ、背面撃ちもできないからな」
フィリップス
「なに悠長に構えてるんだよ! コールタン大佐を追いつめたのはあんただろうが!」
エリゴール
「追いつめた覚えはないが……オペレータ! 六班の射程に〈デュランダル〉は入ってるか!」
オペレータ
「は……はい! ギリギリですが入っています!」
エリゴール
「通信士! 六班に緊急連絡! 〝魚〟から砲撃隊形になって〈デュランダル〉を攻撃しろ!」
通信士
「りょ、了解!」
フィリップス
「え? 何? どういうこと?」
エリゴール
「単純な話だ。そもそも〈デュランダル〉は、〝背面撃ち組〟からの砲撃を恐れて、大きく迂回していた。ところが〝背面撃ち組〟が解体して攻撃目標がなくなった上、逆にうちと十二班に追われる立場になった。さっきあんたが言ったとおり、〈デュランダル〉は逃げようと思えばいくらでも逃げられる。でも、それじゃ演習にならないから、相撃ち狙いで正面から攻撃しようと反転した」
フィリップス
「まあ、それはそうだろうな。でも、何で六班……あ、そうか! 六班は俺たちと入れ替わったようなもんだ! だから背面撃ちも狙える!」
エリゴール
「そういうことだ。おまけに、あの六班だ。〝魚〟から砲撃隊形への移行なんて簡単にこなすだろ」
フィリップス
「まさか……そこまで計算して六班に直進を!?」
エリゴール
「それ以前に、六班は勝手に逆走してただろうが」
フィリップス
「言われてみれば確かに!」
エリゴール
「いわば、俺たちは囮だ。〈デュランダル〉は六班に任せて、〝切りこみ組〟の後を追うぞ」
フィリップス
「え? 六班の援護はしないのか?」
エリゴール
「いくら〈デュランダル〉が高性能の軍艦だろうが、相手は小回りのきく砲撃艦十隻だぞ? 逆に、六班が落とせなかったら、次の出撃、問答無用で〝留守番〟だ」
フィリップス
「いつのまにか六班の進退問題に発展してる!」
ハワード
「六班には言わないほうがいいな」
十二班長・ザボエス
『意外だな。おまえは〈デュランダル〉だけは人任せにしねえと思ったが』
エリゴール
「撃てる奴が撃てばいい。それに、俺が乗ってる軍艦が撃ったら、あとあと面倒になりそうなことに今気がついた」
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「最後の最後で保身!?」
ハワード
「いや、むしろ冷静さを取り戻したんじゃないのか?」
フィリップス
「何にせよ、コールタン大佐、気の毒だな……」
ハワード
「殿下から、何のお咎めもなければいいけどな……」
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コールタン
「……おまえら、減給」
クルーたち
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