寂しいからそばにいて(仮)【『無冠の皇帝』スピンオフ】

有喜多亜里

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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

226【交換ついでに合同演習編131】合同演習二日目:護衛は優秀(棒)

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【パラディン大佐隊・旗艦〈オートクレール〉ブリッジ】

パラディン
「今日もエリゴール中佐はいない……が、今日は私を追いかけてきてくれる! エリゴール中佐が! 私だけを!」

モルトヴァン
「あくまで〝敵〟としてですけどね……」

パラディン
「それでもいい! 赤ピーマンなんか木っ端微塵にして、まっすぐ私を追いかけてきて!」

モルトヴァン
「いや、木っ端微塵にされたらまずいでしょ。今日は味方同士ですよ。一応」

パラディン
「まずいのは赤ピーマンだけだろう。しかし、そもそも〈フラガラック〉の護衛なら、無人艦だけで充分だと思うがな。あのドレイク大佐の〝告白言い逃げ〟に対応できたのも、我々ではなく〈フラガラック〉と無人艦だけだった」

モルトヴァン
「それは! 護衛艦隊の護衛の黒歴史! でも、ドレイク大佐が来ちゃったからもう正史!」

パラディン
「あれで我々は〝栄転〟を覚悟したが、〝栄転〟どころか処罰すらされなかった。ドレイク大佐だからこそできたことだろうが、ドレイク大佐でなかったら、あの場で全員〝栄転〟になっていたな」

モルトヴァン
「……告白されたのが、よほど嬉しかったんでしょうか……」

パラディン
「殿下は決して認めないだろうけど、あんな手段で告白言い逃げされたら、私も護衛の処罰なんかどうでもよくなるね」

モルトヴァン
「そこは共感されるんですね」

パラディン
「しかし、粒子砲が使えなくても、〈フラガラック〉にはまだ身を守る術はいくらでもある。だから今日の我々が演じるのは、粒子砲を使ってしまった上に、無人艦の遠隔操作もできなくなった最悪状態の〈フラガラック〉だ。したがって、『連合』に砲撃することもできず、不本意ながら逃げに徹するしかないわけだ」

モルトヴァン
「元ウェーバー大佐隊に砲撃しなくてもいい理由、うまいこと捻り出しましたね」

パラディン
「それは撃ちたくないだろう。せっかく十二班の〝事故車〟をなくしたのに」

モルトヴァン
「そんな理由で」

パラディン
「ついでに言うなら、コクマーに戻るより、ソフィアに向かったほうがいいと思うんだが。……体面的には〈フラガラック〉にしか無人艦は遠隔操作できないことになっているが、実はソフィアでもできるんじゃないか? 戦場に無人艦を出撃させるのも〈フラガラック〉の仕事だとしたら、あまりに仕事量が多すぎる」

モルトヴァン
「そう言われてみれば……」

パラディン
「たぶん、『連合』〈フラガラック〉にしか無人艦は遠隔操作できないと思いこんでいるだろう。だから、あえてソフィアに向かい、ソフィアからありったけの無人艦を出撃させ、『連合』を蜂の巣にしてもらう。……これなら〈フラガラック〉は撤退したことにもならない」

モルトヴァン
「大佐……今、久しぶりに大佐を見直しました……」

パラディン
「失敬な、と言いたいところだが、私も久しぶりに自分の頭を使ったような気がするな。もうずいぶんエリゴール中佐に丸投げしているから」

モルトヴァン
「でも、今回はソフィアには行かないんですよね?」

パラディン
「もちろんだ。あそこは殿下の許可がなければ近寄ることもできない。だが、万が一そういう事態に陥ったら、ドレイク大佐がそう指示するんじゃないかな」

モルトヴァン
「殿下ではなく?」

パラディン
「殿下は自分からは〝後退〟されないだろう。この前の円錐陣形のときだって、ドレイク大佐に言われたから動いたに違いない。だからこそ、この手のことは、ドレイク大佐に〝お願い〟してもらわないといけないんだよ」

モルトヴァン
「……うちの艦隊、本当にドレイク大佐に依存しまくっていますね」

パラディン
「よかったな。ドレイク大佐が殿下よりまともな人で」

モルトヴァン
「殿下よりまとも……今なら素直に同意できます……」
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