寂しいからそばにいて(仮)【『無冠の皇帝』スピンオフ】

有喜多亜里

文字の大きさ
上 下
240 / 349
砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

222【交換ついでに合同演習編127】合同演習二日目:サンドイッチ作戦考

しおりを挟む
【パラディン大佐隊・第十一班第一号ブリッジ】

ロノウェ
「〝レフト〟が本当に〝魚〟を〝横泳ぎ〟させてやがる……」 

レラージュ
「〝レフト〟の班は全体的に器用ですね。変態も十班長と十二班長だけですし」

ロノウェ
「変態……まあ、そうか」

レラージュ
「八班長も微妙ですが、まだ憧れ要素が強そうなので、保留にしておきます」

ロノウェ
「おまえにしては寛大だな」

レラージュ
「八班は十班より撮影はうまかったので」

ロノウェ
「そんなに十班の映像は気に食わなかったか」

レラージュ
「もう二度と見返したくありません」

ロノウェ
「タイムはよかったんだがな」

レラージュ
「今は〝蛇〟の変形タイムより、〝移動しながら横縦〟ができるかどうかです。今のところ、これが完璧にできるのは、一班と六班、うちと十二班だけです。三班はたぶん、元四班長に直接指示されなければできないでしょう」

ロノウェ
「〝移動しながら横縦〟?」

レラージュ
「つまり、いつでもすぐに〝移動隊形〟にも〝魚〟にもなれるということです。〝魚〟組が〝移動しながら縦〟であの配置につくのには、元四班長同様、俺も反対ですが、それ以外の場面では、〝移動しながら横縦〟ができたほうが有利です。一昨日の延長戦でしみじみそう思いました」

ロノウェ
「何だ、かっこいいからじゃねえのか」

レラージュ
「俺はそんなの追求してませんから」

ロノウェ
「だったら、十班のあの映像だって別にいいじゃねえか。一応撮れてはいたんだし」

レラージュ
「撮るだけなら防犯カメラだってできます。記録映像としてなっていません」

ロノウェ
「だからって、何でおまえもフィリップス副長も八班なのか、いまだによくわからねえ……」

レラージュ
「八班を選ばなかった班長たちには、わかっていただかなくて結構です」

ロノウェ
「悪かったな。……しかし、改めて考えてみると、八班長ってのは不思議な男だよな。次の出撃じゃ三班と同じ〝留守番〟だってのに、あいつの言うことにはエリゴールも一班も耳を貸す。〝魚〟を〝横泳ぎ〟させるなんて、あのサンドイッチ作戦に匹敵する馬鹿作戦だと思うけどな」

レラージュ
「サンドイッチ作戦ですか……まあ、結果的に馬鹿作戦になってしまいましたが、〝今日だけ三班長〟に〝壁〟を〝側面撃ち〟されてなければ、配置の仕方としてはかなり有効だったと思いますよ」

ロノウェ
「配置?」

レラージュ
「たとえばあのとき、うちが六班横一列に並んで〝壁〟の右側に迂回したとします。このとき、〝壁〟にいちばん近い班はたぶん全滅か全滅に近い状態になるでしょう。〝レフト〟は〝壁〟を分解して残りの五班を〝背面撃ち〟していけば、わりと短時間で効率よくうちを〝全艦殲滅〟できたのではないでしょうか」

ロノウェ
「何ておっかねえことを考えやがる……でも、それなら〝壁〟一枚でもいいんじゃねえのか?」

レラージュ
「それだと、〝レフト〟のほうがうちにサンドイッチされてしまいます。うちは隊を二つに分けて、手前から順に〝全艦殲滅〟していけばいいんですから」

ロノウェ
「じゃあ、どうしても〝壁〟は二枚必要だったのか。でも、それだって、うちが全部〝半身〟になれば、向こうを全部サンドイッチできたんじゃねえのか?」

レラージュ
「〝ロールケーキ〟を〝半身〟でサンドイッチですか。班長も面白いこと考えますね。逆に〝ロールケーキ〟に返り討ちにあいそうな気もしますけど」

ロノウェ
「……ほんとに、馬鹿作戦のようで馬鹿作戦じゃなかったんだな」

レラージュ
「おまけに、この作戦を遂行するには、全班〝魚〟並みの速さで〝縦走り〟ができることが絶対条件です。三班と四班がいるこちらでは、決して真似できない作戦です」

ロノウェ
「でも、八班長は、あくまで〝壁〟で〝魚〟をサンドイッチしつづけるつもりだったんだよな?」

レラージュ
「……本気だったんでしょうか」

ロノウェ
「へ?」

レラージュ
「実戦ではまた別でしょうが、フィリップス副長は奇抜な作戦が大好きなようです。八班長はフィリップス副長のウケを狙ってサンドイッチ作戦を提案したんじゃないでしょうか」

ロノウェ
「え! ウケ狙い!?」

レラージュ
「実際、作戦としては失敗しても、フィリップス副長は今でも捨てがたいと言うほどサンドイッチ作戦を気に入ってるんでしょう? 八班長としては大成功なんじゃないですか」

ロノウェ
「ウケ狙い……じゃあ、今回の〝横泳ぎ〟も……?」

レラージュ
「今回は元四班長が同席してましたから、サンドイッチ作戦よりは真剣に考えたんじゃないでしょうか。でも、今回も難易度高いですよ。うちのチームじゃ絶対にできません……」

ロノウェ
「……〝レフト〟がうらやましいのか」

レラージュ
「十班の代わりに向こうに行きたいです」

ロノウェ
「おまえがあっちに行きてえのか」

レラージュ
「あっちのほうがいろんなことがやれそうです。うちはまだ〝縦走り〟もしたことがありません」

ロノウェ
「そういやそうだな。……もしかして、うちだけか?」

レラージュ
「たぶんそうです。後半では十二班に〝背面撃ち〟されてそのまま退場アウト、延長戦では〝護衛隊〟をしたので」

ロノウェ
「……今やるか?」

レラージュ
「必要もないのにやれません」

ロノウェ
「……たぶん、そのうちやれるチャンスが来る」

レラージュ
「そのときには〝炙り撃ち〟もできるでしょうか……」

ロノウェ
「おまえ……〝砲撃隊〟に染まりはじめてる……?」
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

【完結】人型兵器は電気猫の夢を見るか?

有喜多亜里
BL
【猫キチ男が猫型ロボットを撫で回している、なんちゃってスペースファンタジー(コメディ寄り)】 別宇宙から現れて軍艦を襲う〝何か〟。その〝何か〟に対抗するため、天才少年博士ナイトリーは四体の人型兵器を作り、銀河系を四分する各勢力にパイロット供出を要請した。だが、二年後のある日、ナイトリーは謎の死を遂げてしまう。周囲は頭を抱えるが、パイロットの一人・カガミが飼っている猫型ロボットの中にナイトリーの記憶の一部が潜んでいた。

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

名無しの龍は愛されたい。−鱗の記憶が眠る海−

だいきち
BL
【名無しの龍は愛されたい スピンオフ】 深海で生きていた変わりものの魔物ラト×群れから追い出された魔族の少年シューロ シュマギナール皇国の陰謀を暴き、男性でありながらエルマーの子供を孕んだ神の御使いであるナナシと共に、永遠の愛を誓ってから一週間。 美しい海を誇る南の国カストールでの甘やかなハネムーンは、相変わらずのエルマーのおかげで穏やかには終わらなかった。 「海上での魔物討伐、お前も巻き添えで。」 エルマーが持ってきた依頼。レイガンが巻き込まれたのは、海で暴れる巨大な魚型魔物、羅頭蛇の討伐であった。それに加えて行方不明だったニアも、何やら面倒ごとを引き連れて戻ってきた! エルマー達五人と一匹の前に現れた、孤独な海の魔族。ネレイスのシューロ。彼が大切に抱きかかえていたのは、死んだ番いの卵であった。 海を舞台に大きな波乱が巻き起こる。愛を知らないもの同士の、純粋な家族の形がそこにあった。 ニアの、神様としての本当の姿。そして紫の瞳が映す真実とは。全ての答えは、海の魔族である少年シューロが握っていた。 これは、一つの海の物語。魂の邂逅、そして美しくも残酷な恋の物語。 ※名無しの龍は愛されたい読了後推奨 ※BLですが、性描写はなしです ※魚型魔物×孤独な魔族 ※死ネタ含む

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

無冠の皇帝

有喜多亜里
BL
「連邦」、「連合」に次ぐ銀河系内の第三勢力「帝国」。その宗主であった「連合」五星系の一つザイン星系は「帝国」の再植民地化をもくろみ侵攻しようとするも「帝国」宇宙軍と皇帝軍護衛艦隊に阻まれる。「帝国」の元皇太子アーウィンが司令官を務める皇帝軍護衛艦隊の鉄則はただ一つ。〝全艦殲滅〟。――なーんて感じの「なんちゃってSF」。コメディ寄りのボーイズラブ(自称)。大佐(変態だけどまとも)×元皇太子(ツンデレストーカー)。 ---- ◆BOOTH様で同人誌を通販しています。既刊4冊(https://aarikita.booth.pm/)。 ◆表紙はかんたん表紙メーカー様で作成いたしました。ありがとうございました(2023/03/16)。 ---- ◆「第11回BL小説大賞」(2023)で奨励賞をいただきました。ありがとうございました。 ◆「第12回BL大賞」(2024)で奨励賞をいただきました。ありがとうございました。

処理中です...