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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

207【交換ついでに合同演習編112】合同演習一日目:十五分は長すぎる

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【パラディン大佐隊・ミーティング室】

エリゴール
「以上、今日の演習もどきの総括終わり。明日の〝本戦〟の打ち合わせに入る。……心も読めるフィリップス副長。例の班番カード、全員に配ってくれ」

フィリップス
「嫌味か、それは。……これもテーブルの上滑らせられたらいいのにな。……おとっつぁん、二班長に回して」

エリゴール
「……そうだな。メモリカードのケースにシール貼って班番書くか。それなら早く配れる」

一班長・ハワード
「早いか?」

フィリップス
「少なくとも、元四班長の〝ストレート〟は速かった」

エリゴール
「じゃあ、どうしても〝カーブ〟になるフィリップス副長。さっき遊んだメモリカード、おとっつぁんの前に二十二枚並べてくれ」

フィリップス
「悪かったなあ。根性はあんたよりはまっすぐな自信あるんだけどなあ。……こっちも前に使ったやつがあるぞ?」

エリゴール
「メモリカードのほうが小さくて並べやすいだろ。……〝おとっつぁん〟、悪いが前に〝息子〟と一緒に作った〝凡人布陣〟、もう一度作ってくれ」

一班長・ハワード
「〝凡人〟のほうでいいのか?」

エリゴール
「とりあえずはな。……残りは全員起立。こっちもとりあえず、一昨日おととい決めた並び順で班番カードを並べる。……フィリップス副長、〝一班〟、好きなところに置いてくれ」

フィリップス
「好きなところって、テーブルのど真ん中でもいいのか?」

エリゴール
「俺はかまわないが、それだと右寄りになるぞ」

フィリップス
「あ、そうか。なら、ごく普通にここ」

十二班長・ザボエス
「じゃあ、省スペースのためここ」

フィリップス
「何が省スペースだ! それらしい理由くっつけてぴったり横にくっつけんな! 離せ! せめてメモリカードケース一個分は離せ!」

十二班長・ザボエス
「メモリカードケース一個分ときたか……せめてメモリカード本体一個分にしてほしかったな……」

フィリップス
「ほんとはメモリカード箱一個分にしたいわ!」

レラージュ
「……班長。十二班長、本気みたいです」

十一班長・ロノウェ
「ああ……わざと罵られるようなことしてんな。あれはフィリップス副長じゃなくても我慢できねえわ」

レラージュ
「もし俺があんなことされたら、無言で相手のカードを破り捨てます」

十一班長・ロノウェ
「さすがおまえだ。特に無言ってとこが」

 ***

エリゴール
「フィリップス副長、〝凡人布陣〟は完成したか?」

フィリップス
「完成した。〈デュランダル〉は中央の班の上に置いてみた」

エリゴール
「なるほど。頭いいな」

フィリップス
「あんたにそう言われると、逆に馬鹿にされてるような気がする……」

エリゴール
「俺は馬鹿には馬鹿って正直に言うよ」

一班長・ハワード
「そういうとこだけ正直だな、元四班長」

フィリップス
「で、この〝凡人布陣〟を想定して、各列の配置を考え直すのか?」

エリゴール
「考え直すも何も、もう各列、考え済みじゃないのか?」

班長たち
「ギクッ!」

七班長・カットナー
「さすが元四班長、ちゃんと覚えてた!」

九班長・ビショップ
「あのときは〝必ず勝てる配置にしろ〟って言ってたけど、さっきの話を聞いたかぎりでは、本当は負けてもいいと思ってたのか?」

八班長・ブロック
「そういうとこは正直じゃないから……」

エリゴール
「……今から十五分間、時間をやる。その間に明日の演習用に配置を並べ替えろ。……必ず勝てる配置にな」

七班長・カットナー
「ひいっ! また言った!」

八班長・ブロック
「でも、今のは間違いなく本気!」

九班長・ビショップ
「とにかく、列ごとに分かれて相談だ!」

 ***

フィリップス
「元四班長。ほんとはこの時間は何のための時間だ?」

エリゴール
「俺が休憩するための時間」

一班長・ハワード
「相変わらず本気なのか冗談なのかわからない……」

フィリップス
「まあ、本人がそう言ってるからそうなんだろ。なら、元四班長が休憩中のうちにこっそり言うが、コールタン大佐は『連合』がどこまで攻めこんできたら陣形を変えるのかね?」

一班長・ハワード
「どこまで?」

フィリップス
「つまりさ……戦闘中の護衛の布陣ってこうだろ?」

一班長・ハワード
「あ、せっかく作った〝凡人布陣〟を!」

フィリップス
「そう。その〝凡人布陣〟をいったいどの段階で形成するのかってこと。実際には、殿下の撤退命令を待って撤退するんだろうけど、その前には撤退態勢とっておかないと、いざ命令されたとき、すぐに撤退開始できないと思うんだよな」

一班長・ハワード
「それはそうだが、どの段階と言われても……無人護衛艦群突破されたときか?」

フィリップス
「俺はそれじゃ間に合わないと思う。もうその段階では〈フラガラック〉は撤退してないと。で、そのためにはわざわざ〝凡人布陣〟なんかにしたりしないんじゃないかな」

一班長・ハワード
「ということは?」

フィリップス
「今のこの陣形が、そのままコールタン大佐の布陣。二〇〇と一隻で〈フラガラック〉を護衛しながら、少しずつ隊を割いていって、追撃してくる『連合』にぶつけていく。『連合』はとにかく早く〈フラガラック〉に追いつきたいから、応戦するよりかわそうとするだろう。そんな『連合』には待ってましたとばかりに〝背面撃ち〟。……昨日の延長戦で、うちはそうやって十一班さんにやられちゃいました」

十二班長・ザボエス
「そりゃ、タチわりぃな」

フィリップス
「同じことをあんたに言ってやりたい、十二班長」

レラージュ
「フィリップス副長に同意します」

一班長・ハワード
「……でも、フィリップス。もしおまえの言うとおりだったとしたら、うちは配置どころか、一から全部考え直さなきゃならなくなる。〝ファイアー・ウォール〟を突破する必要がないんなら、わざわざ〝魚〟になる必要もなくなるだろう」

フィリップス
「いや、当てられにくいっていう利点もあるから、〝魚〟にはなったほうがいいと思う。問題は〝組分け〟だ」

一班長・ハワード
「組分け?」

フィリップス
「そう。〝切りこみ組〟と〝背面撃ち組〟」

一班長・ハワード
「そのネーミングだけで何となく想像はつくが、一応説明してくれ」

フィリップス
「〝切りこみ組〟はコールタン大佐隊をかわしてひたすら〈フラガラック〉を追いかける。〝背面撃ち組〟は〝切りこみ組〟がかわしたコールタン大佐隊をひたすら〝背面撃ち〟する。以上」

一班長・ハワード
「……どうやって組分けすればいいんだ……!」

フィリップス
「ほら、悩むだろ。……ああ、うちが全部十一班だったら!」

レラージュ
「……褒められているんでしょうか」

十一班長・ロノウェ
「最高の褒め言葉だろ」

六班長・ラムレイ
「え、〝先生〟が十二人!? あ、でも俺がいない!」

十一班長・ロノウェ
「六班、寝不足か?」

フィリップス
「……でも、現実には十一班は一つしかないからさ。この際、悩む時間を少しでも減らすために、昨日の組分け、そのまま流用したらどうだろう?」

一班長・ハワード
「昨日の組分けって……〝レフト〟と〝ライト〟か?」

フィリップス
「そう。それならどっちがどっちを担当したらいいか悩むだけで済む。……本当はトレードもしたいけど」

十一班長・ロノウェ
「十二班ならいらねえぞ」

フィリップス
「くそ、言う前に言われた!」

十二班長・ザボエス
「ひでえな。三班扱いかよ」

フィリップス
「今なら三班のほうがずっとましだ!」

レラージュ
「フィリップス副長に完全に同意します!」

十二班長・ザボエス
「副長同士、仲いいな」

フィリップス
「あー、ほんとにトレードに出したい。……レラージュ副長、四班とならどう?」

レラージュ
「四班……そうですね……四班なら……」

十二班長・ザボエス
「え、勝手にトレード成立!?」

十一班長・ロノウェ
「レラージュ! 本気か!?」

フィリップス
「まあ、トレードの件はいったん置いといて。……休憩してるふりしてる元四班長。あんたが望んでた答えはこれかい?」

一班長・ハワード
「休憩してるふり?」

エリゴール
「……フィリップス副長には十五分は長すぎたか」

フィリップス
「俺は早く待機室戻って、今日中に〝ストレート〟マスターしたいんだよ」

十二班長・ザボエス
「ストレート?」

十一班長・ロノウェ
「……おまえも六班も、今日だけは遅刻しねえほうがよかったな」

十二班長・ザボエス
「何? 何があった!?」

六班長・ラムレイ
「まだ会議は始まってなかったんじゃ!?」

十一班長・ロノウェ
「会議は始まってなかったが、イベントはあったんだよ……」

十二班長・ザボエス
「イベント!? どんな!?」

十一班長・ロノウェ
「遅刻者には教えられねえな……」

十二班長・ザボエス
「そんな! 俺は好きで遅刻したわけじゃねえのに!」

六班長・ラムレイ
「俺は天罰!」

フィリップス
「……元四班長。あんた、ここまで計算して、昨日のチーム分けを〝レフト〟と〝ライト〟にしたのか?」

エリゴール
「どんな計算だよ?」

フィリップス
「あの並び順で縦分けすれば、だいたい戦闘力は同じくらいになる。ただ、三班は他の班との差があまりにもありすぎたから、あんたがわざわざ出張して底上げした。……結果的に今度は四班が底になっちゃったけど」

エリゴール
「確かに、縦分けした理由はそれだが、別に明日の演習用にチーム分けしたわけじゃないぞ。俺だって何もかも計算してるわけじゃない。気分で決めたらたまたまそうなっちまったこともかなりある」

フィリップス
「気分ねえ……じゃあ、今はどうしたい気分?」

エリゴール
「休憩タイム打ち切って、あんたの希望どおり、早く会議を終わらせたい気分」

フィリップス
「ほんとに休憩してたのか」

エリゴール
「口だけな」
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