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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

194【交換ついでに合同演習編99】合同演習一日目:狙われた四班

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【パラディン大佐隊・旗艦〈オートクレール〉ブリッジ】

パラディン
「勝った! 赤ピーマンに勝った!」

モルトヴァン
「赤ピーマンって……その人のところにある軍艦ふねと十二班の軍艦ふねとをこれから交換してもらうんじゃないですか」

パラディン
「確かに真の目的はそれだが、表向きはあくまで演習だ! 何だ、あの隊列は! あの赤ピーマンが小賢しい真似をしたせいで、今日まともに演習できたのは、一班組とこの〈オートクレール〉くらいのものだったじゃないか! その一班組も〝ファイアー・ウォール〟はできずに終わってしまった!」

モルトヴァン
「まあ……確かにそうですけどね……」

パラディン
「だが、どのような班をあそこに配置しなければならないかは、今日の演習でよくわかった。それが収穫といえば収穫だな。あと、私の気が半分ほど晴れた」

モルトヴァン
「えっ! あれでまだ半分!?」

パラディン
「残りの半分は明日晴らす!」

モルトヴァン
「大佐……明日はうちの隊が『連合』役だってわかってますよね? うちの隊の軍艦ふねを容赦なく撃って晴らすんですか?」

パラディン
「……うちの隊を援護して、コールタン大佐隊を撃つか……」

モルトヴァン
「それ、絶対にしないでくださいね。もし殿下に見られてたら、本当に〝栄転〟になりますよ」

 ***

【パラディン大佐隊・第一班第一号ブリッジ】

ハワード
「結局、あそこで〝ファイアー・ウォール〟はできなかった……」

フィリップス
「まあ、確かに残念だったが、今日は仕方なかった。実戦で頑張ろう、おとっつぁん」

エリゴール
「俺もせっかくの有人艦二〇一隻プラス三十隻を、あんな使い方されるとは思わなかった。隊列まで指定しておけばよかったか」

フィリップス
「そこまで手のうちがわかってたら、演習にならないだろ」

エリゴール
「俺が黙ってればいいだけの話だ」

フィリップス
「じゃあ、あれは本当に元四班長にも予想外の隊列だったんだな。俺はあれを予想して、一昨日おととい〝椅子〟組に〝ロールケーキ〟を突っこませたのかと思った」

エリゴール
「まさか。ただの偶然だ。おまけに、〈オートクレール〉が勝手に中央に移動したもんだから、ますます俺たちの演習にはならなくなった」

フィリップス
「ああ……あれは本当に〝恐怖〟だった……〈デュランダル〉だけ撃ち落としてくれればよかったのに、残りの〝ロールケーキ〟もほとんど一隻で砕きつくした……」

エリゴール
「明日の演習では、一応〈オートクレール〉は逃げに徹することになってるが……大佐のことだから、いつ気まぐれを起こすかわからないな」

ハワード
「それほど訓練に参加できなかったのが不満だったのか」

エリゴール
「そうらしいな。でも、大佐に訓練参加されると、俺たちが訓練できなくなる」

フィリップス
「今日のあれ見て激しく同意」

ハワード
「大佐には実戦のときだけ参加してもらいたい」

フィリップス
「ところで、四班を次の実戦で〝留守番〟にするって本気?」

エリゴール
「もちろん本気だ。〝縦走り〟が苦手なだけならまだしも、〝無旋回〟を見逃した! よりにもよって演習で! 〝無旋回〟だったからよかったものの、馬鹿正直な班だったら、今頃大佐が負けた悔しさで怒りまくってたぞ」

フィリップス
「……四班、命拾いしたな」

ハワード
「でも、よく考えてみたら、うちが〝無旋回〟に撮影依頼してなければ、今回の事態は避けられたんじゃないか?」

フィリップス
「えー、それは関係ないだろ。やっぱり四班が間抜けなだけだろ」

エリゴール
「そのとおりだ。あそこで自由に動き回れたのは四班だけだった。昨日渡した〝飴ちゃん〟、全部返却してもらいたいくらいだ」

ハワード
「しかし、今度の〝留守番〟は三班と〝無旋回〟ともう決まってしまっているだろう。いったいどんな手を使って四班を〝留守番〟にするつもりだ?」

エリゴール
「まあ、いちばん手っ取り早いのは大佐に進言することだが、それは禁じ手にしたから、もう一度〝留守番〟決定戦をしないかと大佐に提案してみる。今度は四班が絶対最下位になるようなのを」

フィリップス
「それってもう、大佐に四班〝留守番〟にしてくれって言ってるようなもんだろ!」

ハワード
「それなら素直に大佐にそう言ったほうがいいんじゃないのか?」

エリゴール
「いや、誰もが納得できる理由がなければ、四班を〝留守番〟にはできない」

フィリップス
「今日の演習で、みんな納得してくれると思うけど……四班自身も」

エリゴール
「タイムとか根拠がないと、俺が納得できない」

フィリップス
「なるほど。でも、俺はタイムトライアルより対抗戦のほうが好きだけどな。昨日の延長戦で十一班に出し抜かれたのが今でも悔しい」

エリゴール
「悔しいのに対抗戦のほうが好きなのか」

フィリップス
「自分の馬鹿さ加減がよくわかる。……ああ、あのとき反転して、あの八隻を逆に〝背面撃ち〟するんだった!」

ハワード
「その前に、〝正面撃ち〟されてたんじゃないのか?」

エリゴール
「対抗戦ねえ……そういや、一班は十一班と同じチームになったことはまだないんだな」

フィリップス
「そうだな。そう言われてみればそうだ」

ハワード
「三班は?」

フィリップス
「三班とは、チームとまでは言えないけど、一緒に〝ロールケーキ〟になったことはある。うちはすぐに〝半身〟になっちまったけど」

ハワード
「十一班か……勝った記憶があまりないな」

フィリップス
「決してないわけでもないんだけどな。負けたときの記憶があまりにも強烈すぎて。現に昨日も負けたし!」

エリゴール
「じゃあ、班長会議終わって待機室に戻ったら、昨日の延長戦のときの一班の動きを教えてもらえるか。ついでに、七班・〝無旋回〟・九班が撮った例の映像も見せてくれ」

フィリップス
「いいけど、何で今さら昨日の延長戦?」

エリゴール
「あの延長戦で十二班を全滅させた後、俺はずっと三班に〝縦走り〟させてたから、ほとんど結果しか知らないんだ。どう動いて負けたのか興味がある」

フィリップス
「興味だけ? 今後のために指導してくれるんじゃないの?」

エリゴール
「今後、あんな対抗戦をする予定はない。あれはあくまで明日の演習のためにやった」

フィリップス
「え、面白かったのに!」

エリゴール
「訓練で〝面白かった〟と言われてもな……まあ、同じのはやらないだけで、対抗戦自体はやる。あれは各班の特徴がよくわかるからな。四班が〝縦走り〟苦手なのも昨日の対抗戦でわかった」

フィリップス
「〝縦走り〟の訓練してなかったからじゃないのか?」

エリゴール
「他の班だって特にしてなかっただろ。十二班以外」

フィリップス
「まあ、確かに。Aチームじゃなかった二班・十班・〝無旋回〟も、〝縦走り〟はできてたしな」

エリゴール
「そういえば、四班もBチームだったか」

ハワード
「三班もな。でも、四班よりタイムは悪かった〝無旋回〟はできてたから、そこが元四班長の言う〝各班の特徴〟なんだろうな」

フィリップス
「……きっと、十一班は〝縦走り〟しても速いんだろうな……」

エリゴール
「なら、今度は〝縦走り〟でタイム計測してみるか?」

フィリップス
「それ、ピンポイントで四班狙いだよね?」

 ***

【コールタン大佐隊・旗艦〈デュランダル〉ブリッジ】

コールタン
「パラディン……映像通信は応答拒否か!」

クルタナ
「大佐、もう諦めましょう。執務室に戻ってからメールを送信しましょう。メールでならやりとりしてくれるでしょうから」
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