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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

193【交換ついでに合同演習編98】合同演習一日目:もういいよ

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【コールタン大佐隊・旗艦〈デュランダル〉ブリッジ】

コールタン
「エリゴールめ……本当にえげつねえ攻撃をしてきやがる……」

クルタナ
「背後に回られて、とりつかれたらもう終わり。……四班長の人間性をそのまま反映してますね」

コールタン
「とにかく、食われる軍艦ふねの数を少しでも減らす。隊列を一つにしろ」

クルーたち
「了解!」

 ***

【パラディン大佐隊・第一班第一号ブリッジ】

フィリップス
「わーお、さすが護衛隊! 隊列を華麗に二本から一本にした!」

ハワード
「うちだったら絶対ぶつかって大事故起こしてるな」

二班長・五班長
『元四班長!?』

エリゴール
「あわてるな。これでまた〝サンドイッチ作戦・改〟ができるじゃねえか。……二班は左、五班は右で〝縦走り〟! うちは〝移動しながら横〟になって〝背面撃ち〟する!」

二班長・五班長
『了解!』

ハワード
「……俺は今日、ものすごく楽をしている気がする」

フィリップス
「今日だけじゃなくて、元四班長がうちに異動してきてからずっとだろ、おとっつぁん」

 ***

【パラディン大佐隊・第十二班第一号ブリッジ】

ザボエス
「結局、〝ロールケーキ〟は一本になるのか……」

ヴァッサゴ
「まさに、あの訓練のときの再現だな」

ザボエス
「ただし、今日は先頭にコールタン大佐の〈デュランダル〉がいるがな」

ヴァッサゴ
「でも、きっとあれはあのお方が撃ち落としてくださるんだろ?」

ザボエス
「たぶんな。そのためにわざわざこの危険区域にいらっしゃったんだろうからな」

ヴァッサゴ
「……いつからそんなに仲悪くなったんだろうなあ……」

ザボエス
「根拠は特にねえが、エリゴールがダーナ大佐隊からパラディン大佐隊に来てからじゃねえか?」

 ***

【コールタン大佐隊・旗艦〈デュランダル〉ブリッジ】

コールタン
「げええ! 何で〈オートクレール〉がど真ん中にいるんだ!? あいつはこの前の実戦じゃ、いちばん端っこの十一班の上にいたはずだろ!?」

クルタナ
「そうですが、今日は真ん中に変更されたようですね」

コールタン
「勝手に変更するな! 何のためにあの隊列にしたと思ってるんだ!」

クルタナ
「パラディン大佐はパラディン大佐で、どうして『連合』のいつもの隊列にしなかったのかと怒ってらっしゃるかもしれませんよ」

コールタン
「え?」

クルタナ
「うちがあの隊列をとったせいで、今うちの尻を囓っている別動隊は、作戦変更を余儀なくされたようですから」

コールタン
「尻囓られるより横撃ちされるほうがましだったか!」

クルタナ
「いや、四班長はやっぱり最後は背面撃ちしていたと思いますが」

コールタン
「くそ! とりあえず中央突破できればうちも背面撃ちできる! 〈デュランダル〉は右舷旋回! 後続はそのまま突っこめ!」

 ***

【パラディン大佐隊・旗艦〈オートクレール〉ブリッジ】

パラディン
「今さら逃げるか、赤ピーマン! 副長! 最大出力で〈デュランダル〉を撃て!」

副長
「了解!」

モルトヴァン
「了解しちゃ駄目! 最大出力は駄目!」

 ***

【パラディン大佐隊・第十二班第一号ブリッジ】

ヴァッサゴ
「あ……やっぱり撃たれた……」

ザボエス
「いや、〈デュランダル〉は〈オートクレール〉に撃たれてよかった……そうでなかったら、後でもっと面倒なことに……」

ヴァッサゴ
「ところで、〝ロールケーキ〟はまたこっちに突っこんでくるな」

ザボエス
「でも、今日は大丈夫そうだ」

 ***

【パラディン大佐隊・旗艦〈オートクレール〉ブリッジ】

パラディン
「この消費期限切れ〝ロールケーキ〟が! 廃棄、廃棄、廃棄、廃棄、廃棄!」

モルトヴァン
「うわあ……他の軍艦ふねの援護さえ撃ち落としそうな勢い……」

手隙の通信士
「よっぽど鬱憤たまってたんですね……大佐だけでなく、うちの乗組員も……」

 ***

【パラディン大佐隊・第十一班第一号ブリッジ】

ロノウェ
「今日の〈オートクレール〉は、実戦のときより〝恐怖〟だな……」

レラージュ
「結局、うちの隊でまともに演習できたのは、〝魚〟組とあの〈オートクレール〉だけでしたね」

ロノウェ
「〝魚〟組でも四班は除くだ」

レラージュ
「どこの隊でも四班は出来がいいものだとばかり思ってましたけど、そういうわけでもないんですね」

ロノウェ
「何にでも例外はある」

 ***

【パラディン大佐隊・第一班第一号ブリッジ】

フィリップス
「うおお! まさしく『〈オートクレール〉の恐怖!』」

エリゴール
「二班、五班、退避しろ! 今の〈オートクレール〉は、護衛隊形はすべて敵と見なしている!」

二班長・キャンベル
『ひええっ!』

五班長・ロング
『味方ながら怖すぎる!』

フィリップス
「あれなら〝全艦殲滅〟できそう……あ、まだ〝無旋回〟が!」

ハワード
「そうか! あいつは今日は『連合』だった!」

二班長・キャンベル
『こちら二班……〝無旋回〟発見しました……十班の隣にいる四班の〝半身〟の近くにこそっといます……』

フィリップス
「ええっ!?」

四班長・ワンドレイ
『ええっ!?』

フィリップス
「四班! 二班に言われる前に気づけよ! いちばん近いだろうが!」

四班長・ワンドレイ
『いや……あまりに自然にコールタン大佐隊から離脱したから、てっきりもう撃たれて『連合』じゃなくなったのかと……』

フィリップス
「この場合、八班がすごいのか? 四班が間抜けすぎるのか?」

ハワード
「元四班長?」

エリゴール
「……四班。どんな手を使ってでも、次の出撃では〝留守番〟にする」

四班長・ワンドレイ
『そ、そんなっ!』

フィリップス
「まあ……当然だな。で、どうする? まだ〝無旋回〟に撮影続行させるか?」

エリゴール
「〝全艦殲滅〟しなきゃこの演習は終わりにならないからな。……四班! そこでそのままじっとしてろ! 今、〝無旋回〟と一緒に殲滅しにいく!」

四班長・ワンドレイ
『ひいいっ!』

フィリップス
「どうやって殲滅するんだ?」

エリゴール
「〝半身〟になって、副班長隊は四班の副班長隊、うちは四班の班長隊と〝無旋回〟」

フィリップス
「〝無旋回〟に反撃されるんじゃないか?」

エリゴール
「それならそれでいい。反撃しかえすから」

ハワード
「本当に容赦のない……」

エリゴール
「その気になれば〝無旋回〟は、〝椅子〟組の背後に回って、たとえば〈オートクレール〉を撃つことだってできたんだ。四班が大間抜けだったからな!」

フィリップス
「元四班長、お怒りはごもっともですが、どうかお気をお鎮めになって!」

エリゴール
「……〝無旋回〟は反撃はしないだろう」

フィリップス
「え?」

エリゴール
「待ってたんだ。あそこで。〝一班〟が終わりにしにきてくれるのを」

フィリップス
「うちが?」

エリゴール
「たぶん、あんたらに撮影を命令されてなかったら、今日の〝無旋回〟は三班と一緒に演習終了してた。そのほうが楽だし、パラディン大佐隊を撃たずに済む」

ハワード
「あ……そういや〝無旋回〟、逃げ回るばかりで一度も発砲はしなかったな」

エリゴール
「たとえろくな映像が撮れてなかったとしても、お疲れさんくらいは言ってやれよ。特にフィリップス副長」

フィリップス
「何で俺?」

エリゴール
「あんたの言葉は、あんたが思っている以上に重い」

フィリップス
「ふうん? 何だかよくわかんないけど、とりあえず、撮れてれば言うよ。第二の撮影班にするかどうかは別として」

 ***

【パラディン大佐隊・第八班第一号ブリッジ】

副長・ウィルスン
「ほんとだ。ほんとに一班が〝魚〟でこっちに来た。……何でわかった?」

八班長・ブロック
「うちに撮影させてるの、一班じゃないか。それなら、一班が〝もういいよ〟って言いにきてくれなくちゃ」

ウィルスン
「相変わらずよくわからねえ理屈だ。『連合』役を〝全艦殲滅〟して演習終わりにしたいんなら、たとえば、なぜかうちを見逃した、そこの四班の〝半身〟にうちを撃たせれば済むことだろ」

ブロック
「その四班の〝半身〟も、たぶんうちと一緒に一班に撃たれる」

ウィルスン
「ええっ!?」

ブロック
「元四班長なら、きっと班長隊のほうでうちを撃ってくれるんじゃないかな」

ウィルスン
「何で元四班長?」

ブロック
「今、一班の実質的な班長は元四班長だし、元四班長ならわかってくれる」

ウィルスン
「……また当たったぞ。うちには班長隊だ。いつも思うが、おまえ、予言者か?」

ブロック
「まさか。いつも言ってるけど、たまたまだよ。……ああ、やっぱり一班の班長隊の〝半身〟がいちばんかっこいいなあ……」

ウィルスン
「俺には他の〝半身〟との違いがさっぱりわからねえ……」

 ***

クルタナ
『……こちら〈デュランダル〉。現時刻をもって、我が隊の残存戦力がゼロとなりました。よって、本演習の勝利者は貴隊であります。本演習の終了と帰投の合意を願います……』
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