上 下
199 / 349
砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

181【交換ついでに合同演習編86】訓練二日目:十一班一号待機室の横暴

しおりを挟む
【パラディン大佐隊・第十一班第一号待機室】

ロノウェ
「おーす」

班員たち
「うぃーす」

レラージュ
「え、もう班長会議終わったんですか? 今日はえらく早くないですか?」

ロノウェ
「細かい打ち合わせは一昨日おとといもう済ませたからだってよ。結局、今日いちばん長くやってたのは、メモリカード交換だな」

レラージュ
「メモリカード交換?」

ロノウェ
「エリゴールの奴、何考えてんだか、メモリカード受け渡しするのに、テーブルの上滑らせろって言い出しやがってな。仕方ないからみんなしてメモリカード滑らせてた」

レラージュ
「そんな馬鹿なこと……どうして誰も逆らわないんですか」

ロノウェ
「あの場であの男に逆らえる奴は一人もいねえ。俺は一枚だけしか滑らせられなくて残念だった」

レラージュ
「なら、六班長にコピーの件、頼んできてくれたんですね」

ロノウェ
「ああ。でも、向こうも今日、あのときの映像手に入れたばかりだから、二、三日中には無理だと思うぞ」

レラージュ
「それはわかってます。早急に欲しいものでもありませんから」

ロノウェ
「そのかわり、こっちはメモリカードずいぶんもらった。これが『パラディン大佐隊〈オートクレール〉の恐怖!』で、エリゴールが絶対に見とけって言ってた。〝本当に〈オートクレール〉が恐ろしい〟そうだ」

レラージュ
「六班が撮ったという、あの演習のときの映像ですか?」

ロノウェ
「ああ。あとこれみんな、今日の分の映像。六班長がテーブルの上滑らせて寄こしてきた」

レラージュ
「……本当に、元四班長は何を考えて……」

ロノウェ
「まあ、楽しかったけどな」

レラージュ
「とりあえず、その『〈オートクレール〉の恐怖』とやらを見てみましょうか」

ロノウェ
「あ、あと〝飴ちゃん〟五個!」

レラージュ
「俺はこんなのどうでもいいですけど。……〝飴ちゃん〟管理班!」

班員(管理班)
「はい、副長!」

レラージュ
「五個追加だ。厳重に保管しておけ」

班員(管理班)
「了解しました、副長!」

ロノウェ
「いつのまにそんな班を……」

レラージュ
「もし万が一〝飴ちゃん〟が紛失したら、あいつらのせいにできますから」

ロノウェ
「相変わらず悪魔……」




レラージュ
「……なるほど。あのとき、隣から撮ってたんですね」

ロノウェ
「確かに恐ろしい……」

レラージュ
「実戦のときのほうがもっと恐ろしかったと思いますけど」

ロノウェ
「いくら演習でも、味方を容赦なく撃ってるとこがいちばん恐ろしいんだよ。……ちゃんとカット割りもしてあるんだな。まるで記録映画みてえだ」

レラージュ
「変形マニアなだけではなかったんですね」

ロノウェ
「自称撮影班らしい」

レラージュ
「では、今日のタイム計測のときの映像も見てみます。……〝移動しながら縦〟のほうを」

班員A
「……おおう、かっこいい!」

班員B
「ほんとだ、SF映画みてえ!」

班員C
「でも、俺らはここの配置じゃねえんだよなあ、残念!」

ロノウェ
「……これ、明らかに編集してあるよな?」

レラージュ
「してますね。元四班長は編集しなくていいって言ってましたけどね」

ロノウェ
「撮影班の意地か」

レラージュ
「比較のため、今度は〝移動しながら縦〟のエキシビションの映像を見てみます」

班員A
「……一応、撮れてはいるが物足りなさが……」

班員B
「何というか、素人くさい」

班員C
「そりゃ、素人なんだからしょうがねえだろ」

レラージュ
「……十班の他にこれを撮った班はいないんですか」

ロノウェ
「いないことはないと思うが……不満なのか?」

レラージュ
「班長は不満じゃないんですか?」

ロノウェ
「まあ……実戦で〝移動しながら縦〟で配置につくことはねえだろうから、もっとかっこよく撮ってほしかったなとは思うが……」

レラージュ
「六班以外にもう一つ撮影班が必要ですね」

ロノウェ
「おまえ、〝移動しながら縦〟のこと、馬鹿にしてたくせに……」

レラージュ
「そういえば、六班が撮った〝最初から縦〟のエキシビションの映像はないんですか?」

ロノウェ
「ああ、それは一班・二班・四班・五班にしか配られなかった」

レラージュ
「……もらってきてください」

ロノウェ
「え、どこから?」

レラージュ
「六班からと言いたいところですが、あそこは今、編集作業に追われていそうなので、一班に確認の電話を入れてから、これにコピーしてもらってきてください」

ロノウェ
「今からか!」

レラージュ
「今ならまだいそうです!」

ロノウェ
「おまえ、自分で行けよ!」

レラージュ
「一介の副長が一班長と直接交渉はできません」

ロノウェ
「よく言うなあ……」

レラージュ
「俺の代わりに対外交渉する。それが班長の存在意義です」

ロノウェ
「普通、逆じゃあ……」

レラージュ
「よそはよそ、うちはうちです」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無冠の皇帝

有喜多亜里
BL
「連邦」、「連合」に次ぐ銀河系内の第三勢力「帝国」。その宗主であった「連合」五星系の一つザイン星系は「帝国」の再植民地化をもくろみ侵攻しようとするも「帝国」宇宙軍と皇帝軍護衛艦隊に阻まれる。「帝国」の元皇太子アーウィンが司令官を務める皇帝軍護衛艦隊の鉄則はただ一つ。〝全艦殲滅〟。――なーんて感じの「なんちゃってSF」。コメディ寄りのボーイズラブ(自称)。大佐(変態だけどまとも)×元皇太子(ツンデレストーカー)。 ◆BOOTH様で同人誌を通販しています。既刊4冊(https://aarikita.booth.pm/)。 ◆表紙はかんたん表紙メーカー様で作成いたしました。ありがとうございました(2023/03/16)。 ◆「第11回BL小説大賞」で奨励賞をいただきました。ありがとうございました。

上司と俺のSM関係

雫@更新不定期です
BL
タイトルの通りです。

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

チャラ男会計目指しました

岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように………… ――――――それを目指して1年3ヶ月 英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた 意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。 ※この小説はBL小説です。 苦手な方は見ないようにお願いします。 ※コメントでの誹謗中傷はお控えください。 初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。 他サイトにも掲載しています。

pretty preschool teacher

フロイライン
BL
愛多幼稚園新人教諭の石川遥は、その美貌と優しい性格から、子供達は勿論のこと、その保護者からも圧倒的な支持が寄せられていた。 しかし、遥には誰にも言えない秘密があった…

タイは若いうちに行け

フロイライン
BL
修学旅行でタイを訪れた高校生の酒井翔太は、信じられないような災難に巻き込まれ、絶望の淵に叩き落とされる…

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

処理中です...