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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

179【交換ついでに合同演習編84】訓練二日目:中央はいらない

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【パラディン大佐隊・ミーティング室】

フィリップス
「そして何となく〝レフト〟が残った……」

一班長・ハワード
「おまえたち、どうして引き上げないんだ?」

二班長・キャンベル
「そう言う一班長たちこそ、なぜ?」

一班長・ハワード
「うーん、何かなあ。正直、明日の演習のことより、今日の対抗戦のことがどうしても気になってなあ。結局、コールタン大佐隊役はどう布陣するのがベストだったんだろうかと」

十二班長・ザボエス
「最後の延長戦のときの〝ライト〟の布陣じゃねえのか? あれで〝ライト〟は勝ったんだから」

フィリップス
「あんたには訊いてない、この役立たず」

十二班長・ザボエス
「生で聞くとよりいっそういいなあ……」

フィリップス
「うわ、モノホンの変態だ! おとっつぁん、助けてくれ!」

一班長・ハワード
「この程度なら、〝砲撃隊〟にもゴロゴロいるだろ」

五班長・ロング
「ああ、たとえば七班長カットナーとか」

フィリップス
「いや、違う! 俺に罵られて喜んでるあたりがモノホンだ!」

一班長・ハワード
「そうか。じゃあ、席替えするか」

フィリップス
「ありがとう! おとっつぁん!」

十二班長・ザボエス
「くそっ、〝おとっつぁん〟を〝ファイアー・ウォール〟にしやがったか!」

フィリップス
「〝大佐代行〟の元四班長にはとうてい及ばないが、〝一班長〟だからこの場では最強だ!」

一班長・ハワード
「子供のケンカか」

十班長・ヒールド
「十二班長……敢闘賞で〝飴ちゃん〟もらえなくて残念でしたね」

十二班長・ザボエス
「まあな。でも、十班はよかったな。ようやく〝飴ちゃん〟ゼロから脱出できて」

十班長・ヒールド
「はい……どうもすみません」

十二班長・ザボエス
「いや、おまえの一個は納得できる。が、〝無旋回〟の〝炙り撃ち〟で一個はどうしても納得できない!」

八班長・ブロック
「え、何でですか?」

十二班長・ザボエス
「おまえはここで思いつき口にしただけだろうが!」

フィリップス
「俺も苦しまぎれにおまえに振るんじゃなかった!」

八班長・ブロック
「訊かれたから一生懸命答えただけなのに!」

一班長・ハワード
「まあまあ。十二班長は〝飴ちゃん〟もらえなくてもしょうがない。悪の黒幕かくまってるからな」

フィリップス
「あ、そういえば」

十二班長・ザボエス
「あんたら……エリゴールによく似てきたな……」

フィリップス
「元四班長はうちの〝先生〟だから」

五班長・ロング
「その〝先生〟だが、今日は攻守にわたって問題点を指摘してたような気がするな」

フィリップス
「問題点?」

五班長・ロング
「たとえば〝ファイアー・ウォール〟の縦置き。コールタン大佐隊役は〝魚〟に〝壁〟の外側を通られたり、〝壁〟を〝側面撃ち〟されたりする。一方、〝魚〟は〝魚〟で、〝ファイアー・ウォール〟の一部を反転されてたら、結局、外側を通っても撃たれることになる。そう考えると、いちばん無難なのは〝ファイアー・ウォール〟の横置きで、外側を通ろうとする〝魚〟には、いちばん両端の軍艦ふねで対応することだ」

フィリップス
「うーん……つまり、こうか? ……あ、メモリカードが足りない。二班長、貸して」

二班長・キャンベル
「あ、はい」

フィリップス
「……何か、〝椅子〟の配置みたいだな」

一班長・ハワード
「そうだな。ちょうど同じ六班だし」

フィリップス
「そうか、〝護衛隊〟別にしなくちゃな。〝護衛隊〟はやっぱり一班か?」

五班長・ロング
「いや、延長戦の最後の攻防を聞いたかぎりでは、最低でも二班はいたほうがいいように思う」

フィリップス
「二班?」

五班長・ロング
「結局、十一班は我が身を削って、あんたたち一班を〝背面撃ち〟したってことだろ。そんな真似ができるのは十一班だけだ。十一班がいなかったら、〝背面撃ち〟専門の〝護衛隊〟を用意しといたほうがいいんじゃねえかな」

フィリップス
「そしたら〝砲撃隊〟は四班だけになっちまうぞ? それに、この数でこの陣形だと、〝魚〟は中央突破しないで、両端を迂回していこうとするんじゃないか?」

五班長・ロング
「確かにな。だから、あえて中央をあけて、わざとそこも通らせる」

フィリップス
「中央なし? 〝無旋回〟のサンドイッチ作戦!?」

五班長・ロング
「いや、〝魚〟が通りすぎたら、すぐに〝縦走り〟を始めて〝炙り撃ち〟する。それがいちばん確実に〝魚〟を焼ける方法だろ」

フィリップス
「まあ、それは言えるな。じゃあ、配置はこんなふう?」

一班長・ハワード
「うーん、シンプル」

フィリップス
「だったら、延長戦のときの六班は、あそこに配置しないほうがよかったってことか?」

五班長・ロング
「八班八隻落としたから、まったく無駄だったとまでは言わないが、それより十一班の護衛してたほうがよかったんじゃないかねえ」

フィリップス
「……できたらもう一回、今日の延長戦やり直したい」

十二班長・ザボエス
「俺は、昨日の最後の訓練やり直してえ」

フィリップス
「明日は〝椅子〟のやり直しだけはできるんじゃないか?」

十二班長・ザボエス
「あ、そうか」

フィリップス
「しかし、一〇〇隻で二〇〇隻以上〝全艦殲滅〟しろなんて、元四班長も無茶言うな」

十二班長・ザボエス
「だから〝背面撃ち〟しろって言ったんだろ。ちなみに、向こうが護衛隊形・横なら、こっちも同じ護衛隊形・横――つまり〝開き〟のままのほうがたぶん当てられるぞ」

フィリップス
「『たぶん』か、役立たず」

十二班長・ザボエス
「試したことがないので『たぶん』です。フィリップス副長殿」

フィリップス
「じゃあ、明日〝無旋回〟で試させてもらおう」

一班長・ハワード
「そうだな」

八班長・ブロック
「ひいっ!」

フィリップス
「あーあ。あのサンドイッチ作戦なら、敢闘賞とまではいかなくても、特別賞くらいもらえるんじゃないかと思ってたんだけどなー。すっかり当てがはずれたなー」

十二班長・ザボエス
「俺もー」

八班長・ブロック
「そんな、昨日は面白いって言ってくれたのに!」

フィリップス
「いや、俺は今でも面白いと思ってるけど、それで負けて何の賞ももらえなかったらなー。しかも、自分はちゃっかり〝飴ちゃん〟もらいやがって。畜生! メモリカード攻撃!」

八班長・ブロック
「うわ、曲がった!」

十二班長・ザボエス
「六班並みにうまいな」

一班長・ハワード
「フィリップス……昨日、ロールケーキで〝無旋回〟に先を越されたのがそれほど悔しかったのか……」

フィリップス
「〝無旋回〟に先を越されたら、もう仕事のできる副長とは言えない……!」

十班長・ヒールド
「そんなことはないと思いますが……」

八班長・ブロック
「そうですよ、フィリップス副長が調達してきたロールケーキのほうがうまかったですよ」

フィリップス
「〝無旋回〟のくせに追従を言うな! メモリカード攻撃第二撃!」

八班長・ブロック
「うわ、さっきのの横に!」

十二班長・ザボエス
「ほんとにうまいな」

二班長・キャンベル
「ところで、この陣形をとられたら、〝魚〟はどう対処したらいいんでしょう?」

フィリップス
「結局のところ、外側と中央の三隊に分かれて通過して、あとは必死で〝ロールケーキ〟から逃げつづけるしかないよな」

二班長・キャンベル
「〝ロールケーキ〟が〝炙り撃ち〟……」

十班長・ヒールド
「〝ファイアー・ロールケーキ〟……」

八班長・ブロック
「……そうか! 〝半身〟は〝ロールケーキ〟を囓ってたんだ! 〝解体撃ち〟じゃなくて〝囓り撃ち〟だ!」

フィリップス
「いやいや、〝半身〟は死体だし」

八班長・ブロック
「でも、死体でも動いてるんですから、〝ロールケーキ〟を囓るかも!」

フィリップス
「こいつめ! また思いつきで〝飴ちゃん〟ゲットを狙ってるのか! メモリカード攻撃第三撃!」

八班長・ブロック
「うわ、さらに横に!」

十二班長・ザボエス
「すでに選手権出場レベルだ!」

五班長・ロング
「どんな選手権だ」
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