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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

177【交換ついでに合同演習編82】訓練二日目:炙り撃ち

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【パラディン大佐隊・ミーティング室】

エリゴール
「とりあえず、これでひととおり映像交換は終わったな。もしまだ欲しい映像があったら、当事者同士で直接交渉してくれ。それじゃ、明日の演習の最終打ち合わせに入る」

九班長・ビショップ
「やっとメイン」

八班長・ブロック
「俺はもっとメモリカード滑らせていたかった」

七班長・カットナー
「あとで自主練しようかな」

エリゴール
「コールタン大佐隊はおそらく護衛隊形をとって攻めてくるだろうが、どう隊列を組んでくるかはわからない。何しろ向こうは約二〇〇隻プラスおまけ二十隻いる。たとえば横三列・縦八列でくるかもしれない」

一班長・ハワード
「八列!」

フィリップス
「まあ、本物の『連合』に比べりゃそれでも少ないけど、こっちは無人艦なしで一〇〇隻だからな……」

エリゴール
「発進順は、〝最初から縦〟で〝魚〟組、〝最初から椅子〟で〝椅子〟組だ。どんな手段を使ってでも、コールタン大佐隊を〝全艦殲滅〟させる。〝魚〟組はコールタン大佐隊が通りすぎたら背後に回りこんで撃て」

四班長・ワンドレイ
「え、コールタン大佐隊を〝卑怯撃ち〟!?」

エリゴール
「俺自身は〝卑怯〟だとは微塵も思っていないがな」

フィリップス
「って元四班長が言うから、うちじゃ〝元四班長撃ち〟って呼んでた」

エリゴール
「何だよ、そのネーミング」

フィリップス
「第一人者に敬意をこめて」

エリゴール
「それ、敬意じゃないだろ」

五班長・ロング
「だったら、何て呼べばいいんだ? 〝背面撃ち〟?」

七班長・カットナー
「えー、やっぱりあれは〝卑怯撃ち〟」

フィリップス
「元四班長はどれがいい?」

エリゴール
「〝卑怯撃ち〟も〝元四班長撃ち〟も嫌だから〝背面撃ち〟」

フィリップス
「そんな! 普通すぎてつまらない!」

エリゴール
「普通でいいだろ、普通で」

フィリップス
「じゃあ、護衛隊形〝縦走り〟で、後ろから〝半身〟を撃つのは何撃ち?」

エリゴール
「当然〝背面撃ち〟」

フィリップス
「え、だったら逆に、〝半身〟で後ろから護衛隊形〝縦走り〟を撃つのは?」

エリゴール
「やっぱり〝背面撃ち〟」

フィリップスと班長たち(三班長除く)
「つまらない!」

エリゴール
「全員で声をそろえて叫ぶなよ。どうだっていいだろ、そんな呼び方」

フィリップス
「よくない! あの恐怖と屈辱を、〝背面撃ち〟というありきたりな言葉でひとくくりにされたくない!」

班長たち(三班長除く)
「そうだそうだ!」

エリゴール
「ほんとにどうでもいいことにこだわるな。そもそも〝卑怯撃ち〟っていうのは、事前に正面から撃ちあう約束をしていたにもかかわらず正面以外から撃った場合に言えるのであって、そんな約束をしていない以上、背後から撃ったとしても〝卑怯〟とは言えない」

フィリップス
「理詰めで来たあ!」

一班長・ハワード
「誰か、反論しろ! このままでは何もかも〝背面撃ち〟にされてしまう!」

フィリップス
「こんなときこそ〝無旋回〟! 何か言え!」

八班長・ブロック
「え、俺ですか!? えーと……〝悪党撃ち〟?」

九班長・ビショップ
「〝悪党撃ち〟……〝卑怯撃ち〟よりレベルアップした……!」

十班長・ヒールド
「こういうの、レベルアップって言うのか?」

九班長・ビショップ
「とりあえず、〝卑怯〟は越えた」

フィリップス
「じゃあ〝無旋回〟! 〝半身〟を後ろから護衛隊形〝縦走り〟で撃つのは何撃ちだ!」

八班長・ブロック
「えーと……〝炙り撃ち〟!」

十班長・ヒールド
「炙り撃ち……」

九班長・ビショップ
「前から薄々思ってはいたが、こいつの頭の中はどうなってるんだ……」

十班長・ヒールド
「それはブロックだけでなく、おまえに対しても言いたい……」

フィリップス
「では、護衛隊形〝縦走り〟を後ろから〝半身〟で撃つのは何撃ち!」

八班長・ブロック
「うーん……護衛隊形を〝壁〟だとしたら〝解体撃ち〟!」

九班長・ビショップ
「〝解体撃ち〟……」

十班長・ヒールド
「駄目だ! 俺の脳みそのほうが〝解体〟されそうだ!」

エリゴール
「〝悪党撃ち〟はともかく、〝炙り撃ち〟と〝解体撃ち〟は面白いな」

フィリップス
「ええっ、元四班長、そっちには食いつくの!?」

エリゴール
「特に〝炙り撃ち〟は〝半身〟が〝ファイアー・ウォール〟で焼かれてる感があっていいぞ。〝解体撃ち〟は〝半身〟で〝壁〟は壊せないだろうと思えるところがネックだな」

八班長・ブロック
「そうですね……確かに〝半身〟では無理ですね……」

フィリップス
「おまけに、真面目に論評してる!」

一班長・ハワード
「呼び方、どうでもいいんじゃなかったのか?」

エリゴール
「まー、面白かったんで〝炙り撃ち〟だけ採用だ。ちなみに、〝ファイアー・ウォール〟状態の護衛隊形を真横から撃つのは〝側面撃ち〟だ」

フィリップス
「あ、しまった! その撃ち方もあったか!」

一班長・ハワード
「俺は心の中で〝今日だけ三班長撃ち〟と呼んでいた!」

フィリップス
「もう言っても間に合わない! でも、それもきっと元四班長に却下されてた!」

エリゴール
「とにかく、〝炙り撃ち〟以外は〝背面撃ち〟もしくは〝側面撃ち〟だ。〝無旋回〟、面白かったから〝飴ちゃん〟一個やる。おら」

八班長・ブロック
「え、何だかよくわかんないですけど、ありがとうございます!」

七班長・カットナー
「えーっ、あんなんで一個!? 十班と同じ!?」

フィリップス
「しまったあ! 〝無旋回〟に〝飴ちゃん〟もらえる機会を与えちまったあ!」

一班長・ハワード
「元四班長のツボがよくわからない……」

九班長・ビショップ
「でも〝無旋回〟の言うことは、一見ぶっとんでいるようでいて、一応筋は通ってるんだよな」

十班長・ヒールド
「確かに〝炙り撃ち〟には、もう焼かれて食われるしかない〝半身〟の悲愴感がある……」

九班長・ビショップ
「本物の魚は、半身にされたときにはもう死んでるけどな」

エリゴール
「……何だ、こんなどうでもいい話してたら、もうこんな時間になっちまったか。じゃあ、明日もあるし、今日はこれで解散。とりあえず、『パラディン大佐隊・〈オートクレール〉の恐怖!』だけは見とけよ。……本当に〈オートクレール〉が恐ろしいぞ」

フィリップス
「ええっ、元四班長! 最終打ち合わせってこれだけ!?」

エリゴール
「細かい打ち合わせなら、一昨日もう済ませただろ。『どんな手段を使ってでもコールタン大佐隊を〝全艦殲滅〟』。明日はそれだけだ。それじゃ、俺はちょっと用事があるから先出るぜ。お疲れー」

フィリップス
「お疲れー」

一班長・四班長・五班長
「お疲れさん」

二班長・六班長・七班長・八班長・九班長・十班長
「お疲れ様でした!」

 エリゴール、退室。

フィリップス
「あれ、大佐の迎えに行ったんだよな?」

一班長・ハワード
「たぶんな」

フィリップス
「相変わらず、絶対にそうとは言わないな。うちは妬んで追い出したりなんかしないのに」

十一班長・ロノウェ
「だから、追い出してねえって!」

 ***

【〝飴ちゃん〟ゲット数ランキング】

一位 六班 (二十一個)
二位 九班 (十三個)
三位 十一班(八個)
四位 四班 (七個)
五位 七班 (六個)・八班(六個)←(五個+一個)←NEW!
七位 三班 (五個)
八位 一班 (四個)
九位 二班 (二個)
十位 五班 (一個)・十班(一個)
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