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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

120【交換ついでに合同演習編25】訓練一日目:ケーキは五個

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【パラディン大佐隊・第九班第一号ブリッジ】

十二班長・ザボエス
『作戦タイム終了か。……〝椅子〟組。もう〝椅子〟はできてるか?』

九班長・ビショップ
「できてます!」

ザボエス
『じゃあ、〝位置について〟』

ビショップ
「えっ! もう配置につくんですか?」

ザボエス
『ああ、今は俺らの前に無人艦はいねえからな。……〝よーい、ドン!〟』

ビショップ
「〝護衛隊〟ではこの号令がスタンダードなのか?」

副長
「まあ、〝よーい、ドン〟のほうが、元四班長のフェイントや六班の〝突進〟よりましか」

ビショップ
「さらに言うなら、フェイントのほうが〝突進〟よりかなりましだ」

 ***

【パラディン大佐隊・第十一班第一号ブリッジ】

ロノウェ
「ザボエスの奴、俺のパクったなあ!」

レラージュ
「独自性を主張できるような号令でもないと思いますが」

ロノウェ
「しかし、配置につくの早すぎないか? まだ『連合』ははるか彼方だぞ?」

レラージュ
「さっき十二班長も言っていましたが、今日は無人艦はいませんから、早く配置につけるならそのほうがいいでしょう。さすが無駄に年食ってるだけあります」

ロノウェ
「あいつ、俺とタメなんだがな……」

レラージュ
「脳年齢は班長のほうが十二班長よりずっと若いですよ」

ロノウェ
「……それ、褒めてねえだろ」

 ***

【パラディン大佐隊・第一班第一号ブリッジ】

エリゴール
「もう〝椅子〟組は配置についただろうな。……一班長、出撃だ」

ハワード
「え? なぜもう配置についたとわかる?」

エリゴール
「今日は訓練だから、実戦のときみたいに無人艦が出払うまで待つ必要はない。早く配置につけるなら配置につく」

ハワード
「そこは実戦前提じゃないのか。俺たちだったら、無人艦が出払う平均時間まで待って配置につくな」

エリゴール
「無駄に律義だな」

ハワード
「無駄に律義……」

エリゴール
「この訓練の主眼は、今の〝椅子〟組がどれくらい『連合』を撃ち落とせるかだろ。時間は考える必要はない」

フィリップス
「そのへんの見極めが俺たちにはできないんだよな」

ハワード
「だから〝護衛隊〟に負けつづけたんだろう……くっ!」

エリゴール
「ああ……あんたらはほんとに〝惜しい!〟の連続だったな」

フィリップス
「あんたがまだ〝護衛隊〟にいたら、きっと今でも俺たちは〝惜しい!〟と思われるようなこと続けてたよ……」

 ***

【パラディン大佐隊・第十二班第一号ブリッジ】

ザボエス
「……来たぞ」

ヴァッサゴ
「宣言どおり、護衛隊形・縦一列か」

ザボエス
「……このままだと、レラージュが言ってたとおり、俺らのほうに来るな」

ヴァッサゴ
「先頭は?」

ザボエス
「オペレータ!」

オペレータ
「画像拡大します。……五班です」

ヴァッサゴ
「五班?」

ザボエス
「なるほどな。まあ、先頭は絶対一班じゃねえだろうとは思ってたが……そうか、五班か」

ヴァッサゴ
「何で『なるほど』なんだ?」

ザボエス
「『連合』役で元Aチームは、一班以外はあの五班だけだ。元Aチームなら、横列隊形で猛スピードで飛べる。切りこみ隊長まかせられるのは、確かに五班以外いねえ」

ヴァッサゴ
「じゃあ、一班はあの中のどこにいるんだ?」

ザボエス
「うーん……どん尻がおまえの大好きな三班だってことは間違いねえんだが……それよりこっちは迎撃態勢とらねえとな。当てられるのはすげえ慣れてるが、当てるのはあまり慣れてねえ」

ヴァッサゴ
「笑えない……」

オペレータ
「……班長!」

ザボエス
「ん?」

オペレータ
「『連合』の最後尾から……!」

ザボエス
「……まあ、絶対何かしてくるとは思ってたが、これは完全に〝詐欺〟だな」

ヴァッサゴ
「エリゴールにとっては常套手段だ」

ザボエス
「違いねえ。でも、これでエリゴールの狙いが何かはっきりわかった。俺らは五班のほうに集中だ」

クルーたち
「了解!」

 ***

【パラディン大佐隊・第九班第一号ブリッジ】

クルーA
「おい、あれ……」

クルーB
「〝魚〟だ……護衛隊形解隊して、二匹の〝魚〟になった……」

ビショップ
「〝魚〟ができるってことは一班だな。最後尾に隠れてたのか……でも、この訓練で〝魚〟ってありか!?」

副長
「あそこはもう何でもありだから……」

ビショップ
「〝魚〟なら、向かって右が班長隊ってことになるが……とりあえず〝頭〟を潰せ! 〝頭〟を潰されたら〝魚〟も死ぬ!」

 ***

【パラディン大佐隊・第十一班第一号ブリッジ】

レラージュ
「ここで〝魚〟ですか……」

ロノウェ
「明日〝魚〟の訓練するのに、何でまた……」

レラージュ
「その前に試してみたかったんでしょう。〝魚〟で本当に『帝国』を突破できるかどうか」

ロノウェ
「まさか、演習二日目の予行演習しようとしてるのか? 一班だけで?」

レラージュ
「元四班長も〝魚〟で突破には不安を覚えていたんじゃないでしょうか。今日試してみて、無理なようなら攻撃方法を変えようと考えているのではないかと思います。俺らは今、一班にとっては左翼のパラディン大佐隊ではなく、コールタン大佐隊の中央なんですよ」

ロノウェ
「……勝手な男だ」

レラージュ
「でも、一班は今頃大喜びでしょう。他の班とは違うことを最初にするのが好きな班のようですから」

ロノウェ
「一班長は真面目そうな男に見えたがなあ……」

レラージュ
「人は見かけによりません」

ロノウェ
「おまえに言われると素直にうなずける」

レラージュ
「〝ロールケーキ〟は十二班がどうにかしてくれるでしょう。こちらはコールタン大佐隊になったつもりで、右の〝魚〟を撃ち落とします」

ロノウェ
「左は?」

レラージュ
「九班、十班に任せます。……〝魚〟はたぶん、この二班の間をすり抜けようと考えているでしょうから」

 ***

【パラディン大佐隊・第六班第一号ブリッジ】

六班長・ラムレイ
「くそう! 宿命のライバル一班! 俺たちを出し抜きやがったなあ!」

副長
「そりゃ〝ライバル〟だから」

クルーA
「でも、同じ組だったらきっと誘ってくれてたと思いますよ。現時点で〝魚〟ができるの、一班とうちだけですし」

ラムレイ
「そうだ! 明日には〝魚〟が増殖してしまう! 今日のこの〝椅子〟のように!」

副長
「増殖……」

クルーA
「それより、うちは『連合』と〝魚〟、どっちを攻撃するんですか?」

ラムレイ
「……両方だ」

クルーA
「え?」

ラムレイ
「左半分『連合』、右半分〝魚〟。〝魚〟はきっと、うちと〝先生〟の間を突っ切ろうとする。戦略的にというより、嫌がらせ的に!」

クルーA
「班長……〝魚〟、したかったんですね……」

ラムレイ
「やっぱり、〝椅子〟よりあっちのがかっこいい……!」

クルーA
「明日、好きなだけできますから……」

ラムレイ
「畜生! 宿命のライバル一班! 来るなら来い! 〝焼き魚〟にしてくれる!」
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