寂しいからそばにいて(仮)【『無冠の皇帝』スピンオフ】

有喜多亜里

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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

85【合流編04】真の役職は大佐代行

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【パラディン大佐隊・ミーティング室】

エリゴール
「では、新名称が決まったところで、今日の本題に入る。本来なら、大佐が作戦説明室で話すべきことだが、貴重な時間を無駄遣いしたくないので、ここで俺が代わりに話すことになった。ちなみに、うちの大佐は出撃の前日に部下を招集して作戦の最終確認をするような普通の〝大佐〟ではないのでそのつもりで」

フィリップス
「そうか……普通は最終確認するのか……」

一班長・ハワード
「ウェーバーもアルスターも、一度決めたら作戦変更は絶対しなかったから、最終確認なんてしたこともなかったな……」

十二班長・ザボエス
「安心しろ。マクスウェルもしてなかった」

フィリップス
「じゃあ、この艦隊では、最終確認はしないほうが普通なんじゃ?」

十一班長・ロノウェ
「ここは戦闘間隔短くて、いつも決まりきったことしかやってなかったからじゃねえのか?」

フィリップス・ハワード
「それだ」

エリゴール
「外野がうるさいが話を進めるぞ。……普通じゃないうちの大佐は、三日後にはもう出撃なのにもかかわらず、自分も実戦を想定した訓練をしたいとほざきやがった。何のために十一班を護衛にしたと思っていやがるんだと言いたいところだが、今のところまだ上官なので、お望みどおりの訓練をさせてやることにした。そこで、意外と事務仕事のできるフィリップス副長」

フィリップス
「だから、何で〝意外と〟をくっつけるんだよ。……いきなり何だ、元四班長」

エリゴール
「パネル使って説明なんて上品なことはやってられないから、超アナログな方法で行く。『1』から『12』までの数字でっかく書いた大きめのカード、用意してくれ。一応言っとくが、一枚のカードに『1』から『12』までの数字を書くんじゃないぞ」

フィリップス
「いくら俺でも、そんな勘違いはしないよ。……カードねえ。ちょうどいいの、何かあったかな……」

 フィリップス、椅子から立ち上がると、ミーティング室の隅に置いてある書類棚をごそごそしはじめる。

一班長・ハワード
「元四班長……本音がもうダダ漏れだな……」

十一班長・ロノウェ
「エリゴールの肩持つわけじゃねえが、出撃三日前にんなこと言われたら、普通はキレるだろ」

一班長・ハワード
「俺だったら、キレる前に胃に穴が空いてるな……」

十二班長・ザボエス
「……エリゴールがいると、すっげえ楽だろ」

一班長・ハワード
「ああ……申し訳ないが、ものすごく楽だ……胃痛も今ではほとんどない……」

十班長・ロノウェ
「そうか……そりゃよかったな……エリゴールがいる間に、しっかり養生しておきな」

フィリップス
「元四班長、できたぞ」

エリゴール
「予想外に早かったな」

フィリップス
「そのへん漁ってみたら、写真用のプリンタ用紙が出てきた。これでいいか?」

エリゴール
「何でここにそんなものがあるのか若干疑問には思うが上等だ。じゃあ、自分の班番のカード取って左回りに回していってくれ。フィリップス副長には、手間賃として〝飴ちゃん〟一個やろう」

 エリゴール、ポケットから飴を取り出してフィリップスに手渡す。

フィリップス
「え、これだけで!?」

エリゴール
「よかったな。これで〝おとっつぁん〟と一個を舐めあわなくて済むぞ」

フィリップス
「いや、それは絶対しないから」

一班長・ハワード
「さすがにそれは俺も無理だ」

エリゴール
「〝親子〟なのに……」

フィリップス
「元四班長……どうしてそこまで真顔で言えるんだ……」

十一班長・ロノウェ
「エリゴール……何と言うか……はっちゃけたな……」

十二班長・ザボエス
「レラージュが見たら、何て言うかね……」

エリゴール
「カード、全員取ったな? じゃあ、一班長以外は全員起立。一班長、フィリップス副長にカード渡してやってくれ」

一班長・ハワード
「え? あ、ああ……」

 ハワード以外、皆素直に立ち上がる。エリゴールも立ち上がる。

エリゴール
「いいか、この一班長が『連合』の旗艦だ。……フィリップス副長、〝おとっつぁん〟の代わりに、いま四班長がいるあたりに移動してくれ。その右隣に二班、四班、五班。テーブルの上にカードを並べて置く」

フィリップス・キャンベル・ワンドレイ・ロング
「了解!」

エリゴール
「で、今度は十一班、六班、七班、八班、九班、十班。七班長が座ってたあたりのテーブルの上に、同じようにカードを並べて置く。三班と十二班は一班長の横で待機」

ラムレイ・カットナー・ブロック・ビショップ・ヒールド
「了解!」

十二班長・ザボエス
「何か、ここにいると、自分が『連合』になったような気分になるな」

エリゴール
「実際、さんざん『連合』になっただろうが。……見てのとおり、実戦のときはこういう配置になる。で、明日はこの配置で〝演習〟をする」

エリゴール以外
「ええ!?」

エリゴール
「もちろん、十一班の中には〈オートクレール〉がいる。……ロノウェ。本番に備えて、〈オートクレール〉とよく息を合わせておけ」

十一班長・ロノウェ
「息ねえ……そういや、一緒に砲撃したことはまだなかったんだなあ……」

フィリップス
「でも、元四班長。『連合』役は……はっ、まさか!」

エリゴール
「たった二十隻しかいないが、被弾しても退場アウトさせなけりゃ、的としては充分使えるだろ。万が一故障しても、当日は留守番だ。何の不都合もない」

十二班長・ザボエス
「おまえ……また俺らに的やらせる気か!」

三班長・プライス
「的って……ええっ!?」

エリゴール
「なお、『連合』役は原則横列隊形。一班組は最初は〝ファイアー・ウォール〟で、最後は砲撃隊形。六班から十班はとりあえず砲撃隊形。……余裕があったら十一班真似してみろ」

六班長・ラムレイ
「……十一班長。十一班は砲撃隊形じゃないんですか?」

十一班長・ロノウェ
「ああ、違う。うちでは〝椅子〟って呼んでるけどな。〝ファイアー・ウォール〟の変形みたいなもんだ」

六班長・ラムレイ
「見たい……ものすごく見たい……!」

エリゴール
「明日になればいくらでも見られる。とりあえず、軽くシミュレーションしてみるぞ。まず、『連合』の三班と十二班。中央を迂回するように、十一班に向かってカードを動かせ」

十二班長・ザボエス
「一班組の本体をなぎ倒していってもいいのか?」

エリゴール
「本体にはいったんテーブルから離れてもらえ」

十二班長・ザボエス
「そうか。残念だな」

一班長・ハワード
「あんたたちの冗談は、限りなく本気のように聞こえる……」

エリゴール
「そこで、一班組は遠慮なく〝ファイアー・ウォール〟。今回は『連合』も遠慮なく逃げていいぞ。ただし、中央は〈ワイバーン〉と無人艦がいる設定だ。……〈オートクレール〉がもう一隻あったら、そこに置きたかったな」

フィリップス
「それは本当に本気だね、元四班長」

エリゴール
「そして、十一班組。『連合』は死に物狂いでそこを突破しようとしてくるから、こちらも死に物狂いで撃て。何なら、戦闘不能になるまで」

十二班長・ザボエス
「おいおい、不穏なことを言うなよ」

エリゴール
「中古の護衛艦二十隻なら、すぐに調達できる」

三班長・プライス
「ほ、砲撃艦は……?」

エリゴール
「三班はこの次も留守番だろ? 心配ご無用だ」

三班長・プライス
「ひいい!」

フィリップス
「ものすごくいい笑顔で、ものすごくひどいことを言った……」

二班長・キャンベル
「でも、事実だから」

フィリップス
「……え?」

エリゴール
「とにかく、明日の演習内容はそうなる。時刻と場所は大佐が各待機室に連絡するそうだ。最後に一班組。カード持って立ててみろ。〝ファイアー・ウォール〟作るみたいに」

フィリップス
「えーと。……こう?」

エリゴール
「そう。で、それの表を十一班のほうに向ける」

フィリップス
「え?」

エリゴール
「『連合』の軍艦ふねは横からじゃなく後ろから撃て。……一班だけはもう少し正面を向いたほうがいいか。他の壁の壁だ」

フィリップス
「……念のため訊くけど、元四班長。出撃のときは俺たちの軍艦ふねに乗るんだよな?」

エリゴール
「俺はそのつもりだったが、ヒラだから基地で留守番になってもいい」

フィリップス
「いや! やめて! 元四班長は絶対出撃して!」

一班長・ハワード
「そうだ! 艦長席ならいつでも譲る!」

十一班長・ロノウェ
「……俺は絶対、また〈オートクレール〉に乗ることになると思うがな……」

十二班長・ザボエス
「以下同文」

六班長・ラムレイ
「え? 元四班は〈オートクレール〉に乗っていたんですか?」

十一班長・ロノウェ
「そうか。こっちは知らねえのか。……ああ、うちの軍艦ふねに乗って出撃したことは一度もねえ」

十二班長・ザボエス
「ついでに言うと、演習や訓練でもな」

六班長・ラムレイ
「元四班長の役職はいったい……」

十一班長・ロノウェ
「俺はもう〝大佐代行〟だと思ってるけどな」

十二班長・ザボエス
「以下同文」




七班長・カットナー
「すごいな、ラムレイ……あの二人と平然と会話してるぞ……」

八班長・ブロック
「さすが、〝飴ちゃん〟十一個ホルダー……肝が据わってる……」
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