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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)
54【異動編03】パラディン大佐親衛隊的前兆
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【パラディン大佐隊・第十一班第一号待機室】
ロノウェ
「『〈オートクレール〉の位置は十一班が決めてね。ついでに、十一班の作戦も』。――今度は実戦にもかかわらず、また笑顔で大佐は俺らに丸投げしていった」
レラージュ
「俺には、『〝籠〟、いいね。君の要望は叶えるよ』と伝言していったそうです」
エリゴール
「……俺にはやっぱり何も言わなかった……」
ロノウェ
「いいかげん、おまえのほうからも何か訊けよ」
エリゴール
「何か、藪蛇になりそうな気がして……」
ヴァッサゴ
「いったい何をそんなに恐れてるんだ?」
ロノウェ
「〈オートクレール〉の位置ねえ……改めて言われると困るよな。昨日みたいに班長艦の後ろに置きっぱなしにしとくには、あまりにももったいなさすぎる」
ザボエス
「かといって、先頭にも置きにくいよな。〝初陣〟だし」
ロノウェ
「一班長の言うとおり、せめて今回だけは一班と場所交換したほうがいいと思うんだけどな。俺ら、そんなに信用されてんのかな?」
ヴァッサゴ
「くっ、悔しい……俺は何もしてないけど悔しい……!」
ザボエス
「今はこらえろ。いつかは俺らにもチャンスは巡ってくる……と思いたい」
エリゴール
「……十一班がどういう作戦をとるかによって、〈オートクレール〉をどこに置くかも決まってくるな」
ロノウェ
「作戦? 大佐に言われたときにも妙に思ったが、一班だけで作戦て……」
エリゴール
「大佐は、少なくとも今回は、元ウェーバー大佐隊と連携するつもりはない。〝十一班組〟と言ってはいるが、実際は〝六班組〟と〝十一班〟のつもりだ。昨日の訓練のときみたいに、十一班だけで何とかしろってことだろ」
ロノウェ
「何とかって……実戦でか? ……やっぱり悪魔だ」
ヴァッサゴ
「あ、悔しさのかわりに安らぎが……」
ザボエス
「とりあえず、よかったな」
レラージュ
「……ということは、うちの班だけで勝手にやっていいってことですね。……ふふ……それはいい……」
ヴァッサゴ
「ひい! 十一班の悪魔が笑ってる!」
ロノウェ
「そういやエリゴール。おまえ、実戦のときは〈オートクレール〉には乗らないんだよな?」
エリゴール
「ああ、大佐にそう言った」
レラージュ
「無理ですよ、元四班長。たぶん、いつものように〈オートクレール〉に乗せられます」
エリゴール
「何で? 俺は実戦のときは十一班の軍艦に乗るってはっきり言ったぞ」
レラージュ
「……屁理屈で来ますよ」
エリゴール
「屁理屈?」
レラージュ
「本当は元四班長には、副班長艦に乗ってもらいたかったんですが……なしの方向で考えます」
エリゴール
「ちょっと待て、屁理屈って何だ?」
レラージュ
「いずれにしろ、きっと元四班長は大佐に押しきられます。実戦中も〈オートクレール〉の中で大佐の機嫌をとっていてください。それが元四班長の仕事です」
ヴァッサゴ
「誰もが心の中で思っていたことをはっきり言った!」
ロノウェ
「俺には絶対言えねえな……」
エリゴール
「……おまえはもう作戦は考えたのか?」
レラージュ
「作戦というか……俺は隊形しか考えられないんで……」
レラージュ、待機室の隅に置いてあるホワイトボードの前に行き、いきなり描きはじめる。
ヴァッサゴ
「何も見ないで描いてるぞ……」
ザボエス
「これで何であの馬鹿の副長なんだ……」
ロノウェ
「馬鹿なのは認めるが、その馬鹿のすぐ隣で言うなよ……」
エリゴール
「……なるほど。また班員が泣かされるな」
ヴァッサゴ
「十二班でよかった!」
レラージュ
「〈オートクレール〉の位置はここになりますが……ほんとにいいんでしょうか?」
エリゴール
「丸投げしたのは大佐なんだから、反対はしないだろ。……大佐、この隊形の名前も知りたがるかな」
レラージュ
「名前ですか? ……班長、パス」
ロノウェ
「パスって……また俺が決めんのか? んー……じゃあ〝椅子〟」
ザボエス
「椅子?」
ロノウェ
「横から見た感じが〝椅子〟かなあと」
ザボエス
「まあ、そのとおりだが……〝籠〟とか〝椅子〟とか、そんな日用品じゃなくて、もっと何か洒落た名前はつけられねえのか?」
ロノウェ
「じゃあ、おまえつけろよ」
ザボエス
「え? そうだな……」
レラージュ
「駄目です」
ザボエス
「え?」
レラージュ
「これは十一班のもので、十一班の班長が〝椅子〟と決めたんですから〝椅子〟です」
ザボエス
「……考案者がそう言っているので〝椅子〟で異議ありません」
レラージュ
「でも、実戦でぶっつけ本番は、さすがにうちの班でも厳しいので、少しでも訓練しておきたいんですが……」
エリゴール
「それはそうだな。なら、大佐に報告がてら訓練申請するか。……何か、大佐も参加したがりそうだな……」
ロノウェ
「訓練はいいが、どことやるんだ? また一班か?」
レラージュ
「そんな、わざわざ元ウェーバー大佐隊に声をかけなくても、格好の訓練相手が今ここにいるじゃないですか……」
ザボエス
「……まさか」
レラージュ
「十二班は出撃当日は〝留守番〟でしょう? 極端な話、訓練で軍艦が壊れても不都合はないでしょう」
ヴァッサゴ
「ひい! 極端すぎる!」
エリゴール
「確かに、十二班がいちばん手軽で手頃だな」
ザボエス
「エリゴール……おまえまで……」
エリゴール
「ついでに、護衛隊形の練習もしとけよ。三班に教えなけりゃならねえんだろ? 三班が今度は他の班に教えるんだから責任重大だぞ?」
ザボエス
「……三班、一日で覚えてくれるかね?」
ロノウェ
「俺はたぶん、他の班のほうが覚えは早いと思う」
ヴァッサゴ
「俺もそんな気がするが……同じ〝三班〟なだけに身につまされる!」
エリゴール
「ああ、コールタン大佐隊にいたときか。……今となっては懐かしいな」
ヴァッサゴ
「そりゃ、おまえはな。コールタン大佐にも気に入られてたし。気に入られなかったのはダーナ大佐にだけ……」
エリゴール
「…………」
ヴァッサゴ
「あ、悪かった! エリゴール、本当に俺が悪かった!」
エリゴール
「いや、事実だからな。もう俺、ここにいなくてもいいよな?」
ロノウェ
「……どういう意味だ?」
エリゴール
「認められるかどうかはわからねえが、ちょっと大佐んとこ行ってくる。認められたら電話する」
ロノウェ
「お、おい、何しに行くつもりだ? まさか、また退役願出すのか?」
エリゴール
「それはまだ保留にしておくつもりでいるが……まあ、とにかく行ってくる」
ヴァッサゴ
「あ、エリゴール!」
エリゴール、退室する。
ザボエス
「……何なんだ?」
ロノウェ
「さあ……でも、何かここから異動したいような……」
ザボエス
「どこに?」
ロノウェ
「とりあえず、この隊内のどこかだとは思うが……まさか、大佐の専属班!?」
ザボエス
「それじゃ大佐の思う壺じゃねえかよ。認めねえわけがねえ」
レラージュ
「いずれにしろ、元四班長はうちの班を離れようとしてるってことですか?」
ザボエス
「もしそうなったら、おまえは嬉しいんじゃねえのか?」
レラージュ
「別に。何でですか?」
ヴァッサゴ
「やっぱり……俺のせい?」
ザボエス
「いや、関係ねえだろ。何となく、前から考えてたみてえな感じだった。……まあ、きっかけにはなったかもしれねえけどな」
ヴァッサゴ
「うああああ!」
レラージュ
「元三班長は、デリカシーあるようでないですね」
ヴァッサゴ
「わああああ! よりにもよって、悪魔にデリカシーないって言われた!」
ロノウェ
「『〈オートクレール〉の位置は十一班が決めてね。ついでに、十一班の作戦も』。――今度は実戦にもかかわらず、また笑顔で大佐は俺らに丸投げしていった」
レラージュ
「俺には、『〝籠〟、いいね。君の要望は叶えるよ』と伝言していったそうです」
エリゴール
「……俺にはやっぱり何も言わなかった……」
ロノウェ
「いいかげん、おまえのほうからも何か訊けよ」
エリゴール
「何か、藪蛇になりそうな気がして……」
ヴァッサゴ
「いったい何をそんなに恐れてるんだ?」
ロノウェ
「〈オートクレール〉の位置ねえ……改めて言われると困るよな。昨日みたいに班長艦の後ろに置きっぱなしにしとくには、あまりにももったいなさすぎる」
ザボエス
「かといって、先頭にも置きにくいよな。〝初陣〟だし」
ロノウェ
「一班長の言うとおり、せめて今回だけは一班と場所交換したほうがいいと思うんだけどな。俺ら、そんなに信用されてんのかな?」
ヴァッサゴ
「くっ、悔しい……俺は何もしてないけど悔しい……!」
ザボエス
「今はこらえろ。いつかは俺らにもチャンスは巡ってくる……と思いたい」
エリゴール
「……十一班がどういう作戦をとるかによって、〈オートクレール〉をどこに置くかも決まってくるな」
ロノウェ
「作戦? 大佐に言われたときにも妙に思ったが、一班だけで作戦て……」
エリゴール
「大佐は、少なくとも今回は、元ウェーバー大佐隊と連携するつもりはない。〝十一班組〟と言ってはいるが、実際は〝六班組〟と〝十一班〟のつもりだ。昨日の訓練のときみたいに、十一班だけで何とかしろってことだろ」
ロノウェ
「何とかって……実戦でか? ……やっぱり悪魔だ」
ヴァッサゴ
「あ、悔しさのかわりに安らぎが……」
ザボエス
「とりあえず、よかったな」
レラージュ
「……ということは、うちの班だけで勝手にやっていいってことですね。……ふふ……それはいい……」
ヴァッサゴ
「ひい! 十一班の悪魔が笑ってる!」
ロノウェ
「そういやエリゴール。おまえ、実戦のときは〈オートクレール〉には乗らないんだよな?」
エリゴール
「ああ、大佐にそう言った」
レラージュ
「無理ですよ、元四班長。たぶん、いつものように〈オートクレール〉に乗せられます」
エリゴール
「何で? 俺は実戦のときは十一班の軍艦に乗るってはっきり言ったぞ」
レラージュ
「……屁理屈で来ますよ」
エリゴール
「屁理屈?」
レラージュ
「本当は元四班長には、副班長艦に乗ってもらいたかったんですが……なしの方向で考えます」
エリゴール
「ちょっと待て、屁理屈って何だ?」
レラージュ
「いずれにしろ、きっと元四班長は大佐に押しきられます。実戦中も〈オートクレール〉の中で大佐の機嫌をとっていてください。それが元四班長の仕事です」
ヴァッサゴ
「誰もが心の中で思っていたことをはっきり言った!」
ロノウェ
「俺には絶対言えねえな……」
エリゴール
「……おまえはもう作戦は考えたのか?」
レラージュ
「作戦というか……俺は隊形しか考えられないんで……」
レラージュ、待機室の隅に置いてあるホワイトボードの前に行き、いきなり描きはじめる。
ヴァッサゴ
「何も見ないで描いてるぞ……」
ザボエス
「これで何であの馬鹿の副長なんだ……」
ロノウェ
「馬鹿なのは認めるが、その馬鹿のすぐ隣で言うなよ……」
エリゴール
「……なるほど。また班員が泣かされるな」
ヴァッサゴ
「十二班でよかった!」
レラージュ
「〈オートクレール〉の位置はここになりますが……ほんとにいいんでしょうか?」
エリゴール
「丸投げしたのは大佐なんだから、反対はしないだろ。……大佐、この隊形の名前も知りたがるかな」
レラージュ
「名前ですか? ……班長、パス」
ロノウェ
「パスって……また俺が決めんのか? んー……じゃあ〝椅子〟」
ザボエス
「椅子?」
ロノウェ
「横から見た感じが〝椅子〟かなあと」
ザボエス
「まあ、そのとおりだが……〝籠〟とか〝椅子〟とか、そんな日用品じゃなくて、もっと何か洒落た名前はつけられねえのか?」
ロノウェ
「じゃあ、おまえつけろよ」
ザボエス
「え? そうだな……」
レラージュ
「駄目です」
ザボエス
「え?」
レラージュ
「これは十一班のもので、十一班の班長が〝椅子〟と決めたんですから〝椅子〟です」
ザボエス
「……考案者がそう言っているので〝椅子〟で異議ありません」
レラージュ
「でも、実戦でぶっつけ本番は、さすがにうちの班でも厳しいので、少しでも訓練しておきたいんですが……」
エリゴール
「それはそうだな。なら、大佐に報告がてら訓練申請するか。……何か、大佐も参加したがりそうだな……」
ロノウェ
「訓練はいいが、どことやるんだ? また一班か?」
レラージュ
「そんな、わざわざ元ウェーバー大佐隊に声をかけなくても、格好の訓練相手が今ここにいるじゃないですか……」
ザボエス
「……まさか」
レラージュ
「十二班は出撃当日は〝留守番〟でしょう? 極端な話、訓練で軍艦が壊れても不都合はないでしょう」
ヴァッサゴ
「ひい! 極端すぎる!」
エリゴール
「確かに、十二班がいちばん手軽で手頃だな」
ザボエス
「エリゴール……おまえまで……」
エリゴール
「ついでに、護衛隊形の練習もしとけよ。三班に教えなけりゃならねえんだろ? 三班が今度は他の班に教えるんだから責任重大だぞ?」
ザボエス
「……三班、一日で覚えてくれるかね?」
ロノウェ
「俺はたぶん、他の班のほうが覚えは早いと思う」
ヴァッサゴ
「俺もそんな気がするが……同じ〝三班〟なだけに身につまされる!」
エリゴール
「ああ、コールタン大佐隊にいたときか。……今となっては懐かしいな」
ヴァッサゴ
「そりゃ、おまえはな。コールタン大佐にも気に入られてたし。気に入られなかったのはダーナ大佐にだけ……」
エリゴール
「…………」
ヴァッサゴ
「あ、悪かった! エリゴール、本当に俺が悪かった!」
エリゴール
「いや、事実だからな。もう俺、ここにいなくてもいいよな?」
ロノウェ
「……どういう意味だ?」
エリゴール
「認められるかどうかはわからねえが、ちょっと大佐んとこ行ってくる。認められたら電話する」
ロノウェ
「お、おい、何しに行くつもりだ? まさか、また退役願出すのか?」
エリゴール
「それはまだ保留にしておくつもりでいるが……まあ、とにかく行ってくる」
ヴァッサゴ
「あ、エリゴール!」
エリゴール、退室する。
ザボエス
「……何なんだ?」
ロノウェ
「さあ……でも、何かここから異動したいような……」
ザボエス
「どこに?」
ロノウェ
「とりあえず、この隊内のどこかだとは思うが……まさか、大佐の専属班!?」
ザボエス
「それじゃ大佐の思う壺じゃねえかよ。認めねえわけがねえ」
レラージュ
「いずれにしろ、元四班長はうちの班を離れようとしてるってことですか?」
ザボエス
「もしそうなったら、おまえは嬉しいんじゃねえのか?」
レラージュ
「別に。何でですか?」
ヴァッサゴ
「やっぱり……俺のせい?」
ザボエス
「いや、関係ねえだろ。何となく、前から考えてたみてえな感じだった。……まあ、きっかけにはなったかもしれねえけどな」
ヴァッサゴ
「うああああ!」
レラージュ
「元三班長は、デリカシーあるようでないですね」
ヴァッサゴ
「わああああ! よりにもよって、悪魔にデリカシーないって言われた!」
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