寂しいからそばにいて(仮)【『無冠の皇帝』スピンオフ】

有喜多亜里

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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

53【異動編02】パラディン大佐隊一班的諦念

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【パラディン大佐隊・第一班第一号待機室】

フィリップス
「まさか、二隊に分けるとは……」

ハワード
「まあ、冷静になってよく考えてみれば、今までと同じことしてたら、今までと同じ結果しか出ないよな。それはわかるが〝初陣〟だからこれって……次はどうするんだ?」

フィリップス
「どうして、十一班はあそこじゃなきゃ駄目なんだ?」

ハワード
「結局、大佐はそれには答えてくれなかったな。ということは、うちには答えにくい理由なんだろう」

フィリップス
「うちには答えにくい?」

ハワード
「逆だよ。うちを十一班のところには置けなかったんだ。あそこはどうしても十一班でなくちゃならなかった」

フィリップス
「なぜだ? 十一班がうちより強いからか?」

ハワード
「……わかってるなら言わせるな」

フィリップス
「すまん。でも、いくら強いといっても、左翼の後衛は初心者だろ? いきなりあそこは十一班には酷じゃないのか?」

ハワード
「と、俺たちは思うが、大佐はそう考えてはいないんだろう。確かにあの十一班と〈オートクレール〉なら、今まで俺たちができなかったことをしてくれそうな気がする。もし万が一、最悪の事態が起こったとしても、あの班なら意地でも大佐を生きて帰してくれるだろう。それより、俺たちは自分たちの心配をしたほうがいいかもしれない」

フィリップス
「心配?」

ハワード
「俺たちだって、あの配置は初めてだろう。横から攻撃して、数を減らすと同時に十一班組に向かわせる。言うのは易しいが、実際やってみるとなると難しそうだ。まず横から攻撃して数を減らすってのが」

フィリップス
「うちのほうは四班しかいないからか?」

ハワード
「それもあるが、奴らが俺たちを相手にしてくれないかもしれない」

フィリップス
「……超高速で〈フラガラック〉をまっすぐめざすか」

ハワード
「俺が『連合』ならそうするな。大佐も俺たちに本当に期待してるのは数減らしじゃなくて、『連合』の群れをばらけさせないことなんじゃないか?」

フィリップス
「ばらけさせない……」

ハワード
「中央には無人艦はやたらといるが、両翼の外にはあまりいないだろ?」

フィリップス
「確かにそうだな。しかし、本当に大佐にそれだけしか期待されていないとしたら、あまりにも情けなさすぎるな」

ハワード
「だから、横撃ちで数を減らす方法だ。今ふと思ったんだが、横撃ちするなら、いつもの砲撃隊形、とる必要もないんじゃないか?」

フィリップス
「じゃあ、どう撃つんだ?」

ハワード
「冗談で言うが、四十隻を横一列に並べて撃ってみたらどうだ?」

フィリップス
「……面白い」

ハワード
「本当にやってみるか?」

フィリップス
「俺個人としてはぜひやってみたいが、他の班の意見を聞いてみてからだな。たぶん、凡人だから反対するんじゃないかと思うが」

ハワード
「うちの班だけでもやってみたいんだがな」

フィリップス
「……ああ、こういうときに〝ファイアー・ウォール〟ができたらいいんだ」

ハワード
「何だ、いきなり」

フィリップス
「ようするに、俺たちは『連合』を〝道〟からはみ出させないようにする〝壁〟みたいなもんだろ? それなら〝ファイアー・ウォール〟で本当に壁になって、かつ砲撃もできれば一挙両得だ」

ハワード
「なるほど。……今から十二班に習いに行くか?」

フィリップス
「今からか? ……間に合うかな」

ハワード
「まあ、無理だろうな」

フィリップス
「俺もそう思う。……仕方ない。今回は見送って、三班から習おう。凡人は凡人らしく、砲撃隊形で行こう。そして、このままじゃいけないというのを、身をもって思い知ろう」

ハワード
「俺たちはもう思い知ってるんだけどな。昨日の十一班のあれがきいた。あんだけブンブン飛び回ってて、どうして軍艦ふね同士がぶつからないんだ?」

フィリップス
「だから俺たち、負けたんだろ」

ハワード
「それでも、最後は惜しかった。訓練で捨て身で来られちゃあな。よっぽど負けたくなかったんだな」

フィリップス
「そういうところも、俺たちには足りないのかもしれないな」
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