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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)
28【リハビリついでに演習編08】それはないだろう
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【パラディン大佐隊・旗艦〈オートクレール〉ブリッジ】
エリゴール
「今度こそ、元ウェーバー大佐隊に〝詐欺だ〟と言われますね」
パラディン
「そうしたら、今度こそ〝ごめんね〟が試せるじゃないか。まあ、うちが負けたら私が謝る必要もなくなるがね」
エリゴール
「正直、うちは負けたほうがいいような気もしますが……」
パラディン
「それほど私に〝ごめんね〟を言わせたくないのかい?」
エリゴール
「それもありますが、メインで戦うことになるのは元ウェーバー大佐隊のほうでしょう。このような演習は、彼らのためにはならないと思うのですが」
パラディン
「そうかな。彼らも変化を欲していたように私には思えるんだけどね」
エリゴール
「はあ……しかし」
パラディン
「私は十一班・十二班を自分の〝身内〟だと思っている。これから先、またどこかへ飛ばされたとしても、君らは手放したくない。そのためにも〝栄転〟だけは絶対されるわけにはいかないんだ」
エリゴール
「……そうですか。それでは大佐殿。〝詐欺〟をお願いいたします」
パラディン
「ははは、本当に君らはとんでもないことを思いつくね。……正確には君か」
エリゴール
「は?」
副長
「うちの悪魔様が楽しげに笑っていらっしゃる……」
モルトヴァン
「本当に今、楽しくて仕方がないんでしょう……エリゴール中佐しか見ていない……」
副長
「……大佐にとって、私は必要な人材なんでしょうか?」
モルトヴァン
「ふ、副長……あなたまでエリゴール中佐みたいなことを言わないでください。エリゴール中佐はもう実戦時には乗艦しませんよ。昨日、大佐にそう約束させていましたから」
副長
「実戦時には、私も大佐に必要とされていませんが……」
モルトヴァン
「……それはまあ、大佐はもともとそういう方でしたから……エリゴール中佐のことは、大佐のお守り役とでも思っていてください」
副長
「お守り役……羨ましいような、恐ろしいような……」
モルトヴァン
「私は恐ろしいです……二十四時間、拘束されそうで……」
***
【パラディン大佐隊・第一班第一号ブリッジ】
ハワード
「今日はあちらさんも、ゼロ・アワーは守るつもりらしいな」
フィリップス
「うちは『連合』になっても、律義に時刻は守るのか」
ハワード
「凡人だからな」
フィリップス
「……〈オートクレール〉が〝右翼〟か。妙な隊形だな。今度は何を狙ってる?」
ハワード
「それがわかったら、俺たちは凡人じゃないな。凡人は凡人らしく、当たって砕けろだ。……ゼロ・アワーから五十分以内に親衛隊を〝全艦殲滅〟。五十分を過ぎても決着がつかなかったら、打ち合わせどおり〝撤退〟。……正直言って〝撤退〟まで持ちこたえられたら屈辱だな」
フィリップス
「そうか? 俺はむしろ嬉しいがな」
ハワード
「……マゾか?」
フィリップス
「いや、それだけあの大佐と親衛隊が俺たちより強いってことだろ。忘れるなよ。俺たちの第一の敵はアルスター大佐隊で、第二の敵は『連合』だ」
ハワード
「『連合』のほうが第二の敵か。……イカれてるな、凡人のくせに」
フィリップス
「そんなところだけ凡人じゃないのも何だかな」
***
【パラディン大佐隊・第十一班第一号ブリッジ】
ロノウェ
「今日、五十分以内に〝全艦殲滅〟されたら、大佐から何か仕置きされそうな気がする……」
レラージュ
「仕置き……たとえば何ですか?」
ロノウェ
「……今度は元ウェーバー大佐隊だけに差し入れするとか?」
レラージュ
「それは別に仕置きだとは思いませんが。それより、十一班と十二班をバラバラにされて、元ウェーバー大佐隊に振り分けられることのほうが……」
ロノウェ
「おまえ……本当に恐ろしいことを思いつくな……」
レラージュ
「でも、大佐はそんなことはしないと思いますよ。せいぜい、俺らに毎日訓練させるくらいじゃないですか?」
ロノウェ
「それはまっとうに恐ろしいな……」
レラージュ
「で、自分はその間、元四班長を〈オートクレール〉の中に連れこんでるんですよ」
ロノウェ
「……エリゴールにとっても仕置きだな」
***
【パラディン大佐隊・第十二班第一号ブリッジ】
ザボエス
「こんなことを思いつくエリゴールもエリゴールだが、それを受け入れる大佐も大佐だな」
ヴァッサゴ
「いや、エリゴールはまともな演習したいと思ってると思うぞ? でも、うちの大佐殿が無茶振りするから、仕方なくまともじゃない作戦提案してるんだろ」
ザボエス
「仕方なくか」
ヴァッサゴ
「仕方なくだ。今、大佐の下にいる元マクスウェル大佐隊員で、いちばん頭が切れるのは、やっぱりエリゴールだからな」
ザボエス
「こう言ったら何だが……こういう方面にもエリゴールは頭を使えたんだな」
ヴァッサゴ
「エリゴール本人は、ずっとヴァラクの〝命令〟に従っていたかったんだろうがな。もう頼りたくても頼れない」
ザボエス
「……エリゴールには絶対言えねえが、これでよかったんじゃねえか?」
ヴァッサゴ
「何が?」
ザボエス
「ヴァラクに元マクスウェル大佐隊追い出されて、パラディン大佐隊に転属されて、大佐に異常に気に入られて」
ヴァッサゴ
「異常……」
ザボエス
「あの異常さに気づかないエリゴールも異常だ」
ヴァッサゴ
「あるいは自己防衛本能……」
***
【パラディン大佐隊・第一班第一号ブリッジ】
オペレータ
「班長、ゼロ・アワーです……え?」
フィリップス
「あ?」
ハワード
「〈オートクレール〉……どこに向かって飛んでるんだ?」
フィリップス
「しいて言うなら『連合』の旗艦方向だが……何だ、あのスピードは!?」
ハワード
「ここから撃てるか!?」
オペレータ
「駄目です! 射程圏外です!」
フィリップス
「どうする!?」
ハワード
「……予定どおり軍艦を出せ! 『連合』の右翼なら、親衛隊のほうを優先する!」
フィリップス
「まあ……あれじゃ俺たちには追いつけないしな……いったい何を考えて……」
オペレータ
「班長! 〈オートクレール〉、隊の後方に回りこみ反転、砲撃開始しました!」
ハワード
「何!?」
フィリップス
「まさか……アルスター大佐隊と同じことをしてるのか!?」
ハワード
「おいおい……それはないだろう……」
エリゴール
「今度こそ、元ウェーバー大佐隊に〝詐欺だ〟と言われますね」
パラディン
「そうしたら、今度こそ〝ごめんね〟が試せるじゃないか。まあ、うちが負けたら私が謝る必要もなくなるがね」
エリゴール
「正直、うちは負けたほうがいいような気もしますが……」
パラディン
「それほど私に〝ごめんね〟を言わせたくないのかい?」
エリゴール
「それもありますが、メインで戦うことになるのは元ウェーバー大佐隊のほうでしょう。このような演習は、彼らのためにはならないと思うのですが」
パラディン
「そうかな。彼らも変化を欲していたように私には思えるんだけどね」
エリゴール
「はあ……しかし」
パラディン
「私は十一班・十二班を自分の〝身内〟だと思っている。これから先、またどこかへ飛ばされたとしても、君らは手放したくない。そのためにも〝栄転〟だけは絶対されるわけにはいかないんだ」
エリゴール
「……そうですか。それでは大佐殿。〝詐欺〟をお願いいたします」
パラディン
「ははは、本当に君らはとんでもないことを思いつくね。……正確には君か」
エリゴール
「は?」
副長
「うちの悪魔様が楽しげに笑っていらっしゃる……」
モルトヴァン
「本当に今、楽しくて仕方がないんでしょう……エリゴール中佐しか見ていない……」
副長
「……大佐にとって、私は必要な人材なんでしょうか?」
モルトヴァン
「ふ、副長……あなたまでエリゴール中佐みたいなことを言わないでください。エリゴール中佐はもう実戦時には乗艦しませんよ。昨日、大佐にそう約束させていましたから」
副長
「実戦時には、私も大佐に必要とされていませんが……」
モルトヴァン
「……それはまあ、大佐はもともとそういう方でしたから……エリゴール中佐のことは、大佐のお守り役とでも思っていてください」
副長
「お守り役……羨ましいような、恐ろしいような……」
モルトヴァン
「私は恐ろしいです……二十四時間、拘束されそうで……」
***
【パラディン大佐隊・第一班第一号ブリッジ】
ハワード
「今日はあちらさんも、ゼロ・アワーは守るつもりらしいな」
フィリップス
「うちは『連合』になっても、律義に時刻は守るのか」
ハワード
「凡人だからな」
フィリップス
「……〈オートクレール〉が〝右翼〟か。妙な隊形だな。今度は何を狙ってる?」
ハワード
「それがわかったら、俺たちは凡人じゃないな。凡人は凡人らしく、当たって砕けろだ。……ゼロ・アワーから五十分以内に親衛隊を〝全艦殲滅〟。五十分を過ぎても決着がつかなかったら、打ち合わせどおり〝撤退〟。……正直言って〝撤退〟まで持ちこたえられたら屈辱だな」
フィリップス
「そうか? 俺はむしろ嬉しいがな」
ハワード
「……マゾか?」
フィリップス
「いや、それだけあの大佐と親衛隊が俺たちより強いってことだろ。忘れるなよ。俺たちの第一の敵はアルスター大佐隊で、第二の敵は『連合』だ」
ハワード
「『連合』のほうが第二の敵か。……イカれてるな、凡人のくせに」
フィリップス
「そんなところだけ凡人じゃないのも何だかな」
***
【パラディン大佐隊・第十一班第一号ブリッジ】
ロノウェ
「今日、五十分以内に〝全艦殲滅〟されたら、大佐から何か仕置きされそうな気がする……」
レラージュ
「仕置き……たとえば何ですか?」
ロノウェ
「……今度は元ウェーバー大佐隊だけに差し入れするとか?」
レラージュ
「それは別に仕置きだとは思いませんが。それより、十一班と十二班をバラバラにされて、元ウェーバー大佐隊に振り分けられることのほうが……」
ロノウェ
「おまえ……本当に恐ろしいことを思いつくな……」
レラージュ
「でも、大佐はそんなことはしないと思いますよ。せいぜい、俺らに毎日訓練させるくらいじゃないですか?」
ロノウェ
「それはまっとうに恐ろしいな……」
レラージュ
「で、自分はその間、元四班長を〈オートクレール〉の中に連れこんでるんですよ」
ロノウェ
「……エリゴールにとっても仕置きだな」
***
【パラディン大佐隊・第十二班第一号ブリッジ】
ザボエス
「こんなことを思いつくエリゴールもエリゴールだが、それを受け入れる大佐も大佐だな」
ヴァッサゴ
「いや、エリゴールはまともな演習したいと思ってると思うぞ? でも、うちの大佐殿が無茶振りするから、仕方なくまともじゃない作戦提案してるんだろ」
ザボエス
「仕方なくか」
ヴァッサゴ
「仕方なくだ。今、大佐の下にいる元マクスウェル大佐隊員で、いちばん頭が切れるのは、やっぱりエリゴールだからな」
ザボエス
「こう言ったら何だが……こういう方面にもエリゴールは頭を使えたんだな」
ヴァッサゴ
「エリゴール本人は、ずっとヴァラクの〝命令〟に従っていたかったんだろうがな。もう頼りたくても頼れない」
ザボエス
「……エリゴールには絶対言えねえが、これでよかったんじゃねえか?」
ヴァッサゴ
「何が?」
ザボエス
「ヴァラクに元マクスウェル大佐隊追い出されて、パラディン大佐隊に転属されて、大佐に異常に気に入られて」
ヴァッサゴ
「異常……」
ザボエス
「あの異常さに気づかないエリゴールも異常だ」
ヴァッサゴ
「あるいは自己防衛本能……」
***
【パラディン大佐隊・第一班第一号ブリッジ】
オペレータ
「班長、ゼロ・アワーです……え?」
フィリップス
「あ?」
ハワード
「〈オートクレール〉……どこに向かって飛んでるんだ?」
フィリップス
「しいて言うなら『連合』の旗艦方向だが……何だ、あのスピードは!?」
ハワード
「ここから撃てるか!?」
オペレータ
「駄目です! 射程圏外です!」
フィリップス
「どうする!?」
ハワード
「……予定どおり軍艦を出せ! 『連合』の右翼なら、親衛隊のほうを優先する!」
フィリップス
「まあ……あれじゃ俺たちには追いつけないしな……いったい何を考えて……」
オペレータ
「班長! 〈オートクレール〉、隊の後方に回りこみ反転、砲撃開始しました!」
ハワード
「何!?」
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「まさか……アルスター大佐隊と同じことをしてるのか!?」
ハワード
「おいおい……それはないだろう……」
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