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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)
11【引っ越しついでに演習編08】パラディン大佐隊旗艦にて
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【パラディン大佐隊・旗艦〈オートクレール〉ブリッジ】
パラディン
「まさか、君が出撃のとき以外でこの軍艦に乗ってくれる日が来るなんて、夢にも思わなかったよ!」
エリゴール
「ええ……自分も夢にも思っていませんでした……」
パラディン
「……元ウェーバー大佐隊に〝詐欺だ〟と非難されないかな?」
エリゴール
「そのときは大佐殿。うまく丸めこんでください」
パラディン
「うーん……自信がないから一緒に釈明してくれないかな?」
エリゴール
「大丈夫です。大佐殿が微笑んで、一言〝ごめんね〟と言えば許されます」
パラディン
「え、そんなことで許されるのかい?」
エリゴール
「充分です」
パラディン
「……〝ごめんね〟?」
エリゴール
「砲撃に転向させられる前に、自分の退役願を受理されなかったことに関してでしたら、未来永劫許しません」
パラディン
「うわあああ!」
エリゴール
「今、艦長席を離れることも絶対に許しません」
副長
「エリゴール中佐……ふっきれたというか……捨て鉢になっていませんか?」
モルトヴァン
「副長もこんな馬鹿げた演習を思いつきで命じられたら、そんな気分にもなるでしょう」
副長
「それはまあ……でも、エリゴール中佐たちは、作戦を立案し、実行しようとしてくれるんですね」
モルトヴァン
「……エリゴール中佐が、そういう隊員しか残しませんでしたから」
副長
「え?」
モルトヴァン
「〝大佐を守る・守らせる〟。今、エリゴール中佐の頭の中にはそれしかありません。退役を保留しているのも、大佐が砲撃担当にされてしまったからです。この艦隊なら〝大佐〟はまず戦死することはありませんが、万が一ということもある。だから、大佐が護衛担当に戻されるまでは、全力で大佐を守ろうとしてくれています」
副長
「そうして、晴れて大佐が護衛に戻れたら、自分は退役するわけですか。……残酷ですね」
モルトヴァン
「元マクスウェル大佐隊から排除されたエリゴール中佐には、自分は〝無価値な罪人〟としか思えないようです。だから、大佐が退役願を受理しようとしない理由もまったくわからない。傍で見ていて恐ろしいほどです。きっと大佐は、エリゴール中佐にわかってもらえるまでは、護衛には戻りたくないと考えているでしょう」
副長
「……〝七班長〟というのは、それほど魅力的な人物なんですか?」
モルトヴァン
「少なくとも、エリゴール中佐やダーナ大佐にはそう見えるようです。訓練生で通りそうなほど童顔で、一見愛想がいい。しかし、うちの隊にいるときには、六班長という真面目で目立つ班長の陰で行儀よくしていました。おそらく、七班長は自分たちがすぐに護衛をやめさせられることになることも予測していたんでしょう。能ある鷹は見事に爪を隠しつづけて、ダーナ大佐の指揮下に入ったわけです」
副長
「そして、ダーナ大佐の前では爪を出したわけですか」
モルトヴァン
「……〝ダーナ大佐ならいける!〟と思ったのではないでしょうか」
副長
「怖い……でも、うちの大佐に似ているような気も……」
モルトヴァン
「ええ。実は私もそう思っていました。大佐も〝これは!〟と思った人間は決して逃がしませんから。……あのように」
副長
「エリゴール中佐も気の毒に……悪魔のような同僚に捨てられて、悪魔のような上官に目をつけられましたか……」
モルトヴァン
「あ、ちょっと泣きそうになりました……」
パラディン
「まさか、君が出撃のとき以外でこの軍艦に乗ってくれる日が来るなんて、夢にも思わなかったよ!」
エリゴール
「ええ……自分も夢にも思っていませんでした……」
パラディン
「……元ウェーバー大佐隊に〝詐欺だ〟と非難されないかな?」
エリゴール
「そのときは大佐殿。うまく丸めこんでください」
パラディン
「うーん……自信がないから一緒に釈明してくれないかな?」
エリゴール
「大丈夫です。大佐殿が微笑んで、一言〝ごめんね〟と言えば許されます」
パラディン
「え、そんなことで許されるのかい?」
エリゴール
「充分です」
パラディン
「……〝ごめんね〟?」
エリゴール
「砲撃に転向させられる前に、自分の退役願を受理されなかったことに関してでしたら、未来永劫許しません」
パラディン
「うわあああ!」
エリゴール
「今、艦長席を離れることも絶対に許しません」
副長
「エリゴール中佐……ふっきれたというか……捨て鉢になっていませんか?」
モルトヴァン
「副長もこんな馬鹿げた演習を思いつきで命じられたら、そんな気分にもなるでしょう」
副長
「それはまあ……でも、エリゴール中佐たちは、作戦を立案し、実行しようとしてくれるんですね」
モルトヴァン
「……エリゴール中佐が、そういう隊員しか残しませんでしたから」
副長
「え?」
モルトヴァン
「〝大佐を守る・守らせる〟。今、エリゴール中佐の頭の中にはそれしかありません。退役を保留しているのも、大佐が砲撃担当にされてしまったからです。この艦隊なら〝大佐〟はまず戦死することはありませんが、万が一ということもある。だから、大佐が護衛担当に戻されるまでは、全力で大佐を守ろうとしてくれています」
副長
「そうして、晴れて大佐が護衛に戻れたら、自分は退役するわけですか。……残酷ですね」
モルトヴァン
「元マクスウェル大佐隊から排除されたエリゴール中佐には、自分は〝無価値な罪人〟としか思えないようです。だから、大佐が退役願を受理しようとしない理由もまったくわからない。傍で見ていて恐ろしいほどです。きっと大佐は、エリゴール中佐にわかってもらえるまでは、護衛には戻りたくないと考えているでしょう」
副長
「……〝七班長〟というのは、それほど魅力的な人物なんですか?」
モルトヴァン
「少なくとも、エリゴール中佐やダーナ大佐にはそう見えるようです。訓練生で通りそうなほど童顔で、一見愛想がいい。しかし、うちの隊にいるときには、六班長という真面目で目立つ班長の陰で行儀よくしていました。おそらく、七班長は自分たちがすぐに護衛をやめさせられることになることも予測していたんでしょう。能ある鷹は見事に爪を隠しつづけて、ダーナ大佐の指揮下に入ったわけです」
副長
「そして、ダーナ大佐の前では爪を出したわけですか」
モルトヴァン
「……〝ダーナ大佐ならいける!〟と思ったのではないでしょうか」
副長
「怖い……でも、うちの大佐に似ているような気も……」
モルトヴァン
「ええ。実は私もそう思っていました。大佐も〝これは!〟と思った人間は決して逃がしませんから。……あのように」
副長
「エリゴール中佐も気の毒に……悪魔のような同僚に捨てられて、悪魔のような上官に目をつけられましたか……」
モルトヴァン
「あ、ちょっと泣きそうになりました……」
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