寂しいからそばにいて(仮)【『無冠の皇帝』スピンオフ】

有喜多亜里

文字の大きさ
上 下
74 / 349
砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

60【異動編09】パラディン大佐は心配性

しおりを挟む
【パラディン大佐隊・執務室】

モルトヴァン
「大佐……まだ悩んでいらっしゃるんですか?」

パラディン
「だって、あんなに十一班に執着していたエリゴール中佐が、いきなり一班に異動したいなんて……新しい環境で一から始めたくなったからなんて言ってたが、その原因はやっぱり十一班で何かあったからじゃないだろうか?」

モルトヴァン
「それは何もなかったことはないでしょうし、実際本人の知らないところでいろいろありましたが、特に問題はなかったと思いますよ。むしろ、問題がなくなったから一班に異動を希望したのでは?」

パラディン
「そういえば……モルトヴァン。おまえはほとんど驚いていなかったな。事前に知っていたのか?」

モルトヴァン
「まさか。ただ、副長と話していたんです。エリゴール中佐は、今度は元ウェーバー大佐隊を〝指導〟するかもしれないと」

パラディン
「指導?」

モルトヴァン
「はい。エリゴール中佐は、元マクスウェル大佐隊員たちを〝指揮〟するというより〝指導〟しているように私には見えました。昨日の訓練で、彼らがもう自分なしでもやっていけると判断して、大佐の言う〝凡人〟な元ウェーバー大佐隊の〝指導〟についに乗り出したんじゃないかと思ったんです」

パラディン
「そんな……私のせい!?」

モルトヴァン
「いや、十一班と十二班に比べたら、元ウェーバー大佐隊がいまいちなのは、誰の目にも明らかでしたし……」

パラディン
「そう言われてみれば、エリゴール中佐の言葉の端々はしばしに、それを臭わせるものがあったような……まったく気づかなかった! 不覚!」

モルトヴァン
「大佐はエリゴール中佐がそばにいるだけで、躁状態に陥りますからね……でも、これまでどおり護衛は続けてくれるそうですから、所属が一班に変わっても、大佐に不都合はないでしょう。エリゴール中佐も言っていましたが、一班の第一号待機室なら、呼べばすぐに駆けつけてきてくれますよ。十一班の第一号待機室と比べたら、それこそ目と鼻の先です」

パラディン
「それはそうだが……もし万が一、元ウェーバー大佐隊がものすごーく強くなってしまったら、エリゴール中佐が十一班に戻りづらくなってしまうじゃないか!」

モルトヴァン
「あれだけ元ウェーバー大佐隊に発破かけといてよく言いますね……」

パラディン
「まさか、エリゴール中佐が、元ウェーバー大佐隊に異動を希望するとは夢にも思わなかったから……大丈夫かな? 元ウェーバー大佐隊でいじめられたりしないかな?」

モルトヴァン
「私は逆に一班長のほうが心配ですが」

パラディン
「なぜ?」

モルトヴァン
「……エリゴール中佐が身近にいたら、いよいよ自信をなくしてしまいそうで」

パラディン
「そうしたら、エリゴール中佐が一班長になればいいじゃないか……」

モルトヴァン
「ひどっ! 今まで一生懸命、元ウェーバー大佐隊を支えつづけてきた班長なのに!」

パラディン
「うん。だから、〝今までよく頑張ってきたね、もう頑張らなくていいんだよ、お疲れ様〟という意味で、班長交替」

モルトヴァン
「一見優しく聞こえますが、エリゴール中佐を一班長にしてしまえば、そう簡単に退役はできなくなるだろうというさもしい魂胆が見え見えです」

パラディン
「……私が一方的に命じたら絶対断るだろうけど、一班長本人や周囲からやってくれと頼まれれば、エリゴール中佐なら断りきれずに引き受けちゃうんじゃないかと思うんだよね……」

モルトヴァン
「それはありえそうですけど……頼まれますかね?」

パラディン
「それくらいの人間でなくちゃ、元ウェーバー大佐隊の〝指導〟なんて、できないんじゃないのかい?」

モルトヴァン
「たまに正気に返りますね」

パラディン
「ああ、心配だな。十一班と十二班は、エリゴール中佐のことを裏切り者だと誤解したりしないかな。でも、したらそれなりのお仕置きはさせてもらうけどね。ふふふ……」

モルトヴァン
「あ、またおかしくなった」
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

兄たちが弟を可愛がりすぎです

クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!? メイド、王子って、俺も王子!? おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?! 涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。 1日の話しが長い物語です。 誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。

BL学園の姫になってしまいました!

内田ぴえろ
BL
人里離れた場所にある全寮制の男子校、私立百華咲学園。 その学園で、姫として生徒から持て囃されているのは、高等部の2年生である白川 雪月(しらかわ ゆづき)。 彼は、前世の記憶を持つ転生者で、前世ではオタクで腐女子だった。 何の因果か、男に生まれ変わって男子校に入学してしまい、同じ転生者&前世の魂の双子であり、今世では黒騎士と呼ばれている、黒瀬 凪(くろせ なぎ)と共に学園生活を送ることに。 歓喜に震えながらも姫としての体裁を守るために腐っていることを隠しつつ、今世で出来たリアルの推しに貢ぐことをやめない、波乱万丈なオタ活BL学園ライフが今始まる!

処理中です...