寂しいからそばにいて(仮)【『無冠の皇帝』スピンオフ】

有喜多亜里

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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

07【引っ越しついでに演習編04】無茶振り大佐

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【元ウェーバー大佐隊・作戦説明室】

パラディン
「昨日の今日ですまないが、明日、演習をする」

元ウェーバー大佐隊班長一同
「…………」

ザボエス
「事前に聞いてはいたんだろうが、みんな信じられねえって顔してるな……」

ロノウェ
「信じたくなかったんだろうな……気持ちはよくわかる」

ザボエス
「レラージュやヴァッサゴにも見せてやりたかったな」

ロノウェ
「見ようと思えば見れたけど、自己紹介したくないからって土壇場で逃げたんだろうが。でも、レラージュは逃げるだろうと思った。あいつ、人見知りだから」

ザボエス
「とても信じられねえが、おまえがそう言うんならそうなんだろうな。きっと今頃、廊下でエリゴールと立ち話してんだろ」

ロノウェ
「まさか、エリゴールも自己紹介回避するとは思わなかった」

ザボエス
「確かに、肩書はねえからな。普通だったらここには入れねえ」

ロノウェ
「大佐が普通じゃねえんだから、入っても別にかまわねえと俺は思うけどな」

ザボエス
「おまえのそれは嫌味じゃなくて本気マジだな」

ロノウェ
「何が?」

パラディン
「砲撃が片翼二〇〇隻になって、必然的に前衛一〇〇隻、後衛一〇〇隻という形になったが、どちらの負担が大きいかと言えば、間違いなく後衛だ。前衛はドレイク大佐隊が旗艦を落とすまで、『連合』両翼の中央への攻撃を無人艦と共に防ぎきればいい。正味な話、後衛のところまで『連合』の艦艇を追い立ててしまえば、前衛は〝手抜き〟ができる。
 『連合』の砲撃艦群の最終目標は、あくまで〈フラガラック〉だ。もちろん後衛にも無人艦はついているし、無人護衛艦の壁もあるが、砲撃の意地にかけて、『連合』に突破されるわけにはいかなかった。……そうだろう?」

元ウェーバー大佐隊班長一同
「た、大佐殿……!」

パラディン
「かわいそうにねえ。今までのやり方しか知らない元マクスウェル大佐隊員押しつけられたあげく、負担と責任ばかり増やされて。よく右翼と比較されてしまうけど、君たちはよくやってきたと思うよ。右翼はね、同じ前衛でも、ダーナ大佐隊がかなりの数を減らしているんだ。まあ、元マクスウェル大佐隊が君たちより優秀だというのも事実だけれども」

元ウェーバー大佐隊班長一同
「うっ!」

ザボエス
「爽やかな笑顔ではっきり言うなあ……」

ロノウェ
「なまじ笑顔なだけに、余計ダメージでかそう……」

パラディン
「だから諸君。我々はもうこう割りきろう。……我々は凡人だ。元マクスウェル大佐隊には決してなれない。下手に真似れば死を招く」

一班長・ハワード
「凡人……」

二班長・キャンベル
「やっぱりそうなんだ……」

パラディン
「だが、この世の人間のほとんどは凡人だ。凡人には凡人なりの戦い方がきっとある。それをこれから見出して……アルスター大佐隊を見返してやろう!」

元ウェーバー大佐隊班長一同
「た……大佐殿っ!」

ロノウェ
「大佐……政治家の才能、あるんじゃねえかな……」

ザボエス
「前から思ってたが、何で軍人になったのか、よくわからねえお人だよな……」

パラディン
「というわけで諸君。本題の演習だが、『帝国』役と『連合』役に分かれてやってみよう。一班から十班が『帝国』、私と十一班・十二班が『連合』だ。時間と場所の詳細は後で連絡するが、〝勝つ〟ということはどういうことか、よく考えて作戦立案するように。では解散」

元ウェーバー大佐隊班長一同
「え……それだけ?」

ロノウェ
「畜生……やっぱり無茶振りじゃねえか……エリゴールの奴、だから訊いても何も答えなかったんじゃねえだろうな……」

ザボエス
「安心しろ。……録音した」

ロノウェ
「え……今の大佐の話をか?」

ザボエス
「ああ。俺らの会話も一緒にな」

ロノウェ
「それは消せ。絶対消せ。今すぐ消せ」
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