寂しいからそばにいて(仮)【『無冠の皇帝』スピンオフ】

有喜多亜里

文字の大きさ
15 / 349
砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

03 初顔合わせの後・元マクスウェル大佐隊(ヴァッサゴ視点)

しおりを挟む
 書類上、前パラディン大佐隊はすでにコールタン大佐隊に所属していることになっている。
 だが、朝になっても、十一班と十二班には、コールタンからの連絡はなかった(他班にはあったことは、ザボエスが電話で確認済み)。
 エリゴールは何も言っていなかったが――ヴァッサゴとザボエスが十一班第一号待機室に入室したのを見計らったように第一号から戻ってきた――すでにパラディンとコールタンとの間で転属の話はついているのではないか。
 薄々そう思いつつも、ヴァッサゴたちは予定どおり朝一で総務部に転属願を提出した。
 なお、十一班はロノウェ、十二班はザボエスが代表して提出した。しかし、二人が乗った移動車を総務部まで運転させられたのはヴァッサゴである。
 セイルの件以降、転属願には嫌な思いばかりさせられてきたが、今回に限っては、ある種の爽快感があった。
 転属希望理由には、全員、パラディンを護衛するためと書いたのだ。
 実際にそう指示したのはレラージュとザボエスだが嘘ではない。エリゴールは苦笑いしながら自分の分の転属願(と委任状)を書いた後、書類上はもうコールタンのものになっているパラディンの執務室に行き、そのまま元ウェーバー大佐隊との初顔合わせに同行した。
 そして夕刻、十一班第一号待機室に、疲れた顔で戻ってきたのだった。

「おう、エリゴール。元ウェーバー大佐隊はどうだった?」

 いつもの席から、からかうようにロノウェが訊ねると、エリゴールは一瞬考えてから、ぼそぼそと答えた。

「アルスターのせいでおかしくなってた」
「何?」

 ロノウェだけでなく、ヴァッサゴもザボエスも驚いて問い返したが、エリゴールは多少投げやりに言葉を続けた。

「まあ、おかげで大佐はやりやすそうだ。……外面よけりゃ腹黒でもいいらしい」

 ――なるほど。そういう意味でか。
 ヴァッサゴたちは安堵したが、またしてもロノウェが口を滑らせた。

「なら、おまえもやりやすいな」
「おまえの趣味、匿名掲示板に書きこんでやろうか?」
「悪かった。本当に俺が悪かった」
「班長たちのそのやりとり。ショートコントのネタですか?」

 ロノウェの隣席にいたレラージュが、さすがに呆れたように眉をひそめる。

「単にロノウェに学習能力がねえだけだろ」

 近くのテーブルに腕組みをして座っていたザボエスが、にやにやと茶々を入れてくる。
 それが面白くなかったのか、レラージュは軽くサボエスを睨みつけた。

「ネタを覚える記憶力はありますよ」
「確かに学習能力はねえがネタじゃねえ」

 うんざりしたようにロノウェが否定する。それを聞いてヴァッサゴは思わず呟いた。

「学習能力がないことは認めるのか……相変わらず潔いな」
「ところで、何で十二班がここにいるんだ?」

 まだ座らずに立っていたエリゴールが、両腕を組んでヴァッサゴたちをへいげいする。
 十一班員たちがそうされていたら間違いなく震え上がっていただろうが、ザボエスはまったく動じず、しれっと返した。

「レラージュに嫌味言われながらレラージュの淹れたコーヒー飲みたかったからだよ」
「変態ですね」

 間髪を入れず、レラージュが冷然と評する。ヴァッサゴはあわてて反論した。

「俺は違うからな! 嫌味は言われたくないからな!」

 そんな一連のやりとりを、エリゴールは無表情で眺めていたが。

「……ザボエスは元ウェーバー大佐隊と気が合うかもしれねえな」

 エリゴールの独り言のような呟きに、一転してロノウェが顔色を変えた。

「え? そういう意味でおかしいのか? 大佐、大丈夫か?」

 だが、エリゴールは鼻で笑って肩をすくめた。

「大佐なら大丈夫だろ。俺もできるときは護衛する」
「いや、おまえも危ないんじゃ……」
「昔のうちと比べたら幼稚園だ」
「幼稚園……」

 ヴァッサゴはあっけにとられたが、ザボエスは訳知り顔でうなずいた。

「その一言だけで、今の元ウェーバー大佐隊の状態がよくわかる」
「でも、レラージュは一人で外は出歩くな。大佐じゃなかったら、たぶんあいつらも遠慮はしねえ」

 真顔で忠告したエリゴールに、同じく真顔で応えたのはレラージュではなくロノウェだった。

「今も歩かせてねえが、わかった。強面なの、必ず二、三人つけておく」

 ヴァッサゴとザボエスは、ロノウェを見て感嘆した。

「〝強面なの〟ってところが馬鹿じゃない」
「〝二、三人〟ってところも馬鹿じゃねえ」

 すかさず、レラージュが口を挟む。

「うちの班長、そういう方面では馬鹿ではないので。そういう方面では」
「大事なことみてえに二度言うな」

 ロノウェが不満の声を上げたが、それはもちろんレラージュに無視された。

「しかし、ダーナ大佐隊、パラディン大佐隊に続き、あっちでも予備ドック生活か。唯一の救いは、上官がパラディン大佐のままだってことだな」

 ヴァッサゴがそうぼやくと、エリゴールは自分の顎に手を添えて、何事か思案しはじめた。

「……元ウェーバー大佐隊も、出来の悪い奴は切り捨ててやるか……余剰人員は二十隻分あるしな……」

 おそらく九割以上本気だ。ロノウェたちは半笑いで聞き流したが、ヴァッサゴは真摯に言った。

「エリゴール……ヴァラクはおまえのそういうとこを嫌ってたが、俺は一種の才能だと思うぞ……」
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】

まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

BLゲームの脇役に転生したはずなのに

れい
BL
腐男子である牧野ひろは、ある日コンビニ帰りの事故で命を落としてしまう。 しかし次に目を覚ますと――そこは、生前夢中になっていた学園BLゲームの世界。 転生した先は、主人公の“最初の友達”として登場する脇役キャラ・アリエス。 恋愛の当事者ではなく安全圏のはず……だったのに、なぜか攻略対象たちの視線は主人公ではなく自分に向かっていて――。 脇役であるはずの彼が、気づけば物語の中心に巻き込まれていく。 これは、予定外の転生から始まる波乱万丈な学園生活の物語。 ⸻ 脇役くん総受け作品。 地雷の方はご注意ください。 随時更新中。

契約満了につき

makase
BL
仮初めの恋人として契約を結んだ二人の、最後の夜。

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️

処理中です...