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第一話 召喚・勇者・そしてチート
24 実は死体入れだった
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「そう、それだよ。何で殺す必要があるんだ? 帰せないなら帰せないって正直に話してくれりゃ、こっちだっていろいろ考えるだろ」
ずっと知りたかったことだったので、勢いこんでそう訊けば、皆本は呆れたように俺を見つめ返した。
「本当に、君はとことんお人好しだね。これもたぶんだけど、彼らはたかが使い捨ての道具と話し合いもしたくなければ、その面倒も見たくないんだよ。そもそも、魔王城を素振り一回で切れる人間なんて、この世界の人間にとっては脅威でしかないだろう? だから、魔王城が消滅した直後、勇者の隙を突いて毎回殺させている。そして、次回の召喚に備えて、その死体をあの砦に持ち帰らせている」
「……え?」
何か、とんでもないことをさらっと言われたような。
俺が硬直していると、皆本はつまらなそうな顔をして言葉を継いだ。
「僕らを召喚したあの魔法円。きっと、歴代の勇者の血で何度も描き直されているよ。もしかしたらあの下には、死体も埋められているかもね。木の床だから取り外しも楽だろう」
「……マジかよ」
「否定はしないだろ? 勇者を殺し損ねた勇者殺し」
皆本に顎で指されたアルガスはびくりと肩を震わせたが、今さら強がりを言っても仕方がないと思ったのか、目を伏せてうなずいた。
「ああ。俺の家系は勇者殺しだ。勇者が召喚されたときには、家の誰かが勇者を殺して、その死体をあの馬車で砦に持ち帰ることになっている。馬車の中に鍵つきの黒い箱があっただろ? あれは勇者の死体入れだ。入れるときには適当に切り分けてもいいって言われてる。ついでに言うと、砦の周囲や〝勇者の道〟にも、勇者の死体の一部が埋められてるぜ。本当だかどうだか知らないが、魔物避けになるんだと。だから、王や貴族どもがあの砦に詰めてるんだ。あいつらがいたって、クソの役にも立ちゃしないのに」
最後のほうには捨て鉢な冷笑を浮かべていた。皆本いわく〝顔だけ勇者〟(皆本も勇者っぽいと思っていたとわかってちょっと安心した)も、決していい待遇は受けていなかったようだ。溜まりに溜まった不満を一気に吐き出しているみたいだった。
ずっと知りたかったことだったので、勢いこんでそう訊けば、皆本は呆れたように俺を見つめ返した。
「本当に、君はとことんお人好しだね。これもたぶんだけど、彼らはたかが使い捨ての道具と話し合いもしたくなければ、その面倒も見たくないんだよ。そもそも、魔王城を素振り一回で切れる人間なんて、この世界の人間にとっては脅威でしかないだろう? だから、魔王城が消滅した直後、勇者の隙を突いて毎回殺させている。そして、次回の召喚に備えて、その死体をあの砦に持ち帰らせている」
「……え?」
何か、とんでもないことをさらっと言われたような。
俺が硬直していると、皆本はつまらなそうな顔をして言葉を継いだ。
「僕らを召喚したあの魔法円。きっと、歴代の勇者の血で何度も描き直されているよ。もしかしたらあの下には、死体も埋められているかもね。木の床だから取り外しも楽だろう」
「……マジかよ」
「否定はしないだろ? 勇者を殺し損ねた勇者殺し」
皆本に顎で指されたアルガスはびくりと肩を震わせたが、今さら強がりを言っても仕方がないと思ったのか、目を伏せてうなずいた。
「ああ。俺の家系は勇者殺しだ。勇者が召喚されたときには、家の誰かが勇者を殺して、その死体をあの馬車で砦に持ち帰ることになっている。馬車の中に鍵つきの黒い箱があっただろ? あれは勇者の死体入れだ。入れるときには適当に切り分けてもいいって言われてる。ついでに言うと、砦の周囲や〝勇者の道〟にも、勇者の死体の一部が埋められてるぜ。本当だかどうだか知らないが、魔物避けになるんだと。だから、王や貴族どもがあの砦に詰めてるんだ。あいつらがいたって、クソの役にも立ちゃしないのに」
最後のほうには捨て鉢な冷笑を浮かべていた。皆本いわく〝顔だけ勇者〟(皆本も勇者っぽいと思っていたとわかってちょっと安心した)も、決していい待遇は受けていなかったようだ。溜まりに溜まった不満を一気に吐き出しているみたいだった。
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