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【05】始まりの終わり(中)
19 お礼参りされました(前)
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昨日から、アーウィンの機嫌が悪い。
幸か不幸か、もともと執務室に引きこもって仕事をするのが好きな男なので、護衛艦隊の人間たちには気づかれていない。しかし、同じ執務室に居ざるを得ないヴォルフとキャルは、もろにその影響を受けていた。
ただし、キャルは自分も仕事をしているから、業務に支障が出ないかぎり、無理にアーウィンの機嫌を直そうとはしない。基本、放置である。
ヴォルフも、できるものならそうしたい。だが、機嫌の悪いアーウィンをどうにかするのが、ヴォルフの仕事の一つでもあった。
(くそう……俺にこっそりドレイクと連絡をとる手段があれば……!)
自分専用の巨大なソファで腕組みをしながら、ヴォルフは延々考えつづけていた。
もちろん、電話もメールも使えるが、使えばすぐにアーウィンに知られるだろう。結果、ただでさえ悪い機嫌がさらに悪化する。まさに本末転倒。そちらのほうがはるかに厄介だ。
ヴォルフはもう何度目かわからない溜め息をついてから、眉間に皺を寄せたまま端末を操作しているアーウィンに声をかけた。
「アーウィン……何度も言ってるが、残りの一個は自分たち用に買ったんだと思うぞ……」
アーウィンは何も言わなかったが、一瞬だけ、横目でヴォルフを睨みつけた。
――自分でもわかっている。しかし、腹立たしい。
もういっそ、自分にも持ってこいとドレイクに言えと思うが、それはプライドが許さないのだろう。あと、なぜ知っているのかと突っこまれたときの回答に困る。ヴォルフも困る。
(そもそも、何で自分ももらえるって思っちまったんだよ……おまえは同僚じゃなくて上司だろうが……)
これもアーウィンはわかっている。だが、悔しい。
たかがクッキー缶。されどクッキー缶。
たとえ隊の経費で買われていても、ドレイクから手渡しされれば、アーウィンにとっては無上の一品となる。
もしかしたらという期待もあって、パラディンとコールタンの遊戯のような合同演習も、笑って見逃していたくらいだ。昨日の挨拶回りの前ではなく、仮に今日あれをやっていたら、二人に何らかの処罰を与えていたかもしれない。――いくら何でも〝栄転〟はないだろう。ないと信じたい。
(ドレイクはドレイクの目的があって、挨拶回りなんてしたんだろうが……まさか、アーウィンが自分のクッキー缶欲しがってるなんて、夢にも思ってないだろうな……)
むしろ、それが当然である。明らかに、アーウィンのほうがおかしい。
だから、アーウィンもドレイクには何も言えないのだろうが。
(ドレイク! もうどんな内容でもいいから、アーウィンにメールしてやってくれ!)
自分ではアーウィンの機嫌をどうにかできないと完全に悟ったヴォルフは、猛々しい金色の目を閉じると、機嫌悪化の原因とも言えるドレイクに念を送った。
* * *
挨拶回りを終えた翌朝。
イルホンが執務机で事務仕事をしていると、卓上の電話機が鳴った。
電話機のパネルで誰がかけてきたかを知ったイルホンは、受話器を取らずにドレイクを呼んだ。
「た、大佐!」
「ん?」
ソファで横になっていたドレイクが、そのままの体勢で、寝ぼけたような声を返してくる。
今日のドレイクは朝からお疲れ気味だ。移動車の運転はイルホンがしたが、助手席に長時間座っているだけでも体力を奪われるらしい。そして、一晩寝たくらいでは完全に回復しない。
「あの……想定外の人が電話かけてきました!」
「想定外? アルスター大佐?」
「それは想定外すぎますね。違います。七班長です」
「七班長?」
その名前を聞いて、ようやくドレイクが上半身を起こす。
「へー、昨日の今日で何の用かな。じゃあ、俺が直接出るから、スピーカーで話せるようにしといて」
「了解しました」
ドレイクはソファから下りると、ズボンのポケットに両手を突っこんだまま、足早にイルホンの隣に立った。準備はいいかと目配せしてから、スピーカーホンのボタンを押す。
「おう、待たせたな。ドレイクだ」
『え、いきなり大佐?』
スピーカーから七班長ことヴァラクの驚いた声が返ってくる。まさか、最初からドレイクが出るとは思っていなかったのだろう。イルホンも思っていなかったが、ヴァラクはすぐにいつもの調子を取り戻した。
『まあ、直接話せてラッキーか。……大佐、おはようございます。昨日はクッキー、ありがとうございました。とってもおいしかったんで、みんなもう食べちゃいました。缶は今、食玩入れに使ってます』
「え? 食玩入れ?」
これにはさすがにドレイクも意表を突かれたようだ。しかし、続く言葉を聞いてイルホンは脱力した。
「おまえにそんな趣味があったとは。いったい何を集めてるんだ?」
『ああ、昔の宇宙船集めて、レトロ艦隊作ってます』
「へえ、そんな食玩があるのか。面白いな」
『昔の〝連合〟のもありますよ。敵艦隊も必要ですから』
「なるほど。そうやって遊ぶのか」
『ですです。そんなわけで、クッキー缶のお礼を大佐の執務室にお持ちしたいんですけど、いつならご都合いいですか?』
「おまえはいつがいいんだ?」
『できれば、今日の午後二時』
「今日とはまたせっかちだな。まあ、俺はかまわないが、ダーナには言ってから来いよ。おまえらの痴話喧嘩に巻きこまれたくねえからな」
『はいはい。ちゃんと言ってから参ります。大佐にご迷惑はおかけしません』
「そうか、それならいいが。ちなみに、礼って何だ?」
『もちろん、ちょっとリッチなコーヒー豆ですよ』
「さすが、俺の〝生き別れの弟〟。よくわかってるな」
『当然でしょ。じゃあ、今日の二時にそちらにお伺いしますね。それではまたー』
ドレイクの返事を待たず、電話は切られた。イルホンは大きく深呼吸すると、にやにやしているドレイクにおそるおそる訊ねた。
「大佐……七班長の目的は何なんでしょう?」
イルホンはあくまで真剣だった。だが、ドレイクは噴き出すと、背中を丸めて笑い出した。
「目的って……本人が言ってたじゃない。昨日のクッキー缶のお礼だよ」
「でも、大佐も言ってましたけど、昨日の今日でお礼なんて、あまりにも早すぎませんか?」
「うん、それは確かに意外だった。でも、それだけ早く七班長も片をつけたがってるってことかな」
「片?」
「アルスター大佐だよ」
こともなげにドレイクは答え、イルホンは灰色の目を見張った。
「まあ、ぶっちゃけると、今日の七班長のお礼参りは、昨日の俺の挨拶回りと同じだよ。俺も七班長も、ダーナの前ではアルスター大佐の話はしたくない」
「……本当に〝生き別れの兄弟〟なんじゃ……?」
「自分で言っといて何だけど、それは絶対ないだろ。何にしろ、七班長が〝大佐〟になってくれて、俺もすごく助かった。ダーナの部下のままだったら、直接交流できなかったからな」
――なるほど。そういう思惑もあったのか。
顔には出さず、イルホンは感嘆した。
ヴァラクの希望を叶えてやりたかったというのも嘘ではないだろう。しかし、自分の同僚にして、一対一で話をしたいという気持ちのほうが強かったのではないだろうか。
ドレイクが〝生き別れの兄弟〟と言いたくなるほど、ヴァラクはドレイクと思考回路がよく似ている。どこまでが本音か、よくわからないところも。
「しかし、七班長がうちに来ると言って、ダーナ大佐が許しますかね……」
「そのへんは七班長がうまくやるだろ。〝クッキーもらったんだからお返ししなくちゃ駄目でしょ〟とか何とか言って」
「本当に尻に敷かれまくってますね……」
「七班長の尻に敷かれるなら、むしろ喜びだろ。……何だ、パラディン大佐以外、元護衛も現護衛もMだな」
「大佐は人のこと言えないでしょ」
他人事のように笑っているドレイクを睨んだイルホンは、ふとある可能性に気がついて表情をなくした。
「まさか……ダーナ大佐も一緒に来たりしませんよね?」
「それじゃ今日来る意味がなくなっちまうだろ。七班長がどんな手を使ってでも阻止するよ。……どんな手を使うかはわからないが」
「いろんな手を持っていそうですよね……」
「〝大佐〟になってからは、さらに増えただろ」
思わずその手を想像しそうになったイルホンは、自らの精神安定のため、あわてて脳内から抹消した。
「確か、七班長はコーヒーが嫌いで、紅茶が好きだったんですよね。用意しておいたほうがいいですか?」
「あー、必要ない必要ない。あいつだけ特別扱いしなくてもいいよ。もう充分特別扱いしてやってるんだから」
「それもそうですね」
ドレイクに右手を左右に振られ、イルホンはあっさり引き下がった。
何しろ、チョコレートの詰め合わせ一つで〝大佐〟にしてやったのだ。特別扱いにもほどがある。
* * *
そのとき、アーウィンが忌々しげに呟いた。
「〝七班長〟が……変態の執務室に電話をした……」
驚いたヴォルフが目を開けば、アーウィンは端末を操作する手を止めて、ディスプレイを見すえていた。
「アーウィン! おまえ、電話のチェックもしてたのかよ!」
「内容は知らん! それならいいだろう!」
「何がどういいんだよ!」
「……む。今度はダーナの執務室に電話か。なぜ、ダーナの携帯に直接かけない?」
「知るか! 〝七班長〟に直接訊け! 訊けるもんならな!」
それまで黙って仕事をしていたキャルは、椅子からすっと立ち上がると、低レベルな言い争いをしている主従に向かって淡々と宣言した。
「休憩にいたします。コーヒーをお淹れしますから、どうぞお好きなだけ騒いでいてください」
ヴォルフはアーウィンと顔を見合わせ、そろって神妙に頭を下げた。
「……はい。申し訳ありませんでした」
幸か不幸か、もともと執務室に引きこもって仕事をするのが好きな男なので、護衛艦隊の人間たちには気づかれていない。しかし、同じ執務室に居ざるを得ないヴォルフとキャルは、もろにその影響を受けていた。
ただし、キャルは自分も仕事をしているから、業務に支障が出ないかぎり、無理にアーウィンの機嫌を直そうとはしない。基本、放置である。
ヴォルフも、できるものならそうしたい。だが、機嫌の悪いアーウィンをどうにかするのが、ヴォルフの仕事の一つでもあった。
(くそう……俺にこっそりドレイクと連絡をとる手段があれば……!)
自分専用の巨大なソファで腕組みをしながら、ヴォルフは延々考えつづけていた。
もちろん、電話もメールも使えるが、使えばすぐにアーウィンに知られるだろう。結果、ただでさえ悪い機嫌がさらに悪化する。まさに本末転倒。そちらのほうがはるかに厄介だ。
ヴォルフはもう何度目かわからない溜め息をついてから、眉間に皺を寄せたまま端末を操作しているアーウィンに声をかけた。
「アーウィン……何度も言ってるが、残りの一個は自分たち用に買ったんだと思うぞ……」
アーウィンは何も言わなかったが、一瞬だけ、横目でヴォルフを睨みつけた。
――自分でもわかっている。しかし、腹立たしい。
もういっそ、自分にも持ってこいとドレイクに言えと思うが、それはプライドが許さないのだろう。あと、なぜ知っているのかと突っこまれたときの回答に困る。ヴォルフも困る。
(そもそも、何で自分ももらえるって思っちまったんだよ……おまえは同僚じゃなくて上司だろうが……)
これもアーウィンはわかっている。だが、悔しい。
たかがクッキー缶。されどクッキー缶。
たとえ隊の経費で買われていても、ドレイクから手渡しされれば、アーウィンにとっては無上の一品となる。
もしかしたらという期待もあって、パラディンとコールタンの遊戯のような合同演習も、笑って見逃していたくらいだ。昨日の挨拶回りの前ではなく、仮に今日あれをやっていたら、二人に何らかの処罰を与えていたかもしれない。――いくら何でも〝栄転〟はないだろう。ないと信じたい。
(ドレイクはドレイクの目的があって、挨拶回りなんてしたんだろうが……まさか、アーウィンが自分のクッキー缶欲しがってるなんて、夢にも思ってないだろうな……)
むしろ、それが当然である。明らかに、アーウィンのほうがおかしい。
だから、アーウィンもドレイクには何も言えないのだろうが。
(ドレイク! もうどんな内容でもいいから、アーウィンにメールしてやってくれ!)
自分ではアーウィンの機嫌をどうにかできないと完全に悟ったヴォルフは、猛々しい金色の目を閉じると、機嫌悪化の原因とも言えるドレイクに念を送った。
* * *
挨拶回りを終えた翌朝。
イルホンが執務机で事務仕事をしていると、卓上の電話機が鳴った。
電話機のパネルで誰がかけてきたかを知ったイルホンは、受話器を取らずにドレイクを呼んだ。
「た、大佐!」
「ん?」
ソファで横になっていたドレイクが、そのままの体勢で、寝ぼけたような声を返してくる。
今日のドレイクは朝からお疲れ気味だ。移動車の運転はイルホンがしたが、助手席に長時間座っているだけでも体力を奪われるらしい。そして、一晩寝たくらいでは完全に回復しない。
「あの……想定外の人が電話かけてきました!」
「想定外? アルスター大佐?」
「それは想定外すぎますね。違います。七班長です」
「七班長?」
その名前を聞いて、ようやくドレイクが上半身を起こす。
「へー、昨日の今日で何の用かな。じゃあ、俺が直接出るから、スピーカーで話せるようにしといて」
「了解しました」
ドレイクはソファから下りると、ズボンのポケットに両手を突っこんだまま、足早にイルホンの隣に立った。準備はいいかと目配せしてから、スピーカーホンのボタンを押す。
「おう、待たせたな。ドレイクだ」
『え、いきなり大佐?』
スピーカーから七班長ことヴァラクの驚いた声が返ってくる。まさか、最初からドレイクが出るとは思っていなかったのだろう。イルホンも思っていなかったが、ヴァラクはすぐにいつもの調子を取り戻した。
『まあ、直接話せてラッキーか。……大佐、おはようございます。昨日はクッキー、ありがとうございました。とってもおいしかったんで、みんなもう食べちゃいました。缶は今、食玩入れに使ってます』
「え? 食玩入れ?」
これにはさすがにドレイクも意表を突かれたようだ。しかし、続く言葉を聞いてイルホンは脱力した。
「おまえにそんな趣味があったとは。いったい何を集めてるんだ?」
『ああ、昔の宇宙船集めて、レトロ艦隊作ってます』
「へえ、そんな食玩があるのか。面白いな」
『昔の〝連合〟のもありますよ。敵艦隊も必要ですから』
「なるほど。そうやって遊ぶのか」
『ですです。そんなわけで、クッキー缶のお礼を大佐の執務室にお持ちしたいんですけど、いつならご都合いいですか?』
「おまえはいつがいいんだ?」
『できれば、今日の午後二時』
「今日とはまたせっかちだな。まあ、俺はかまわないが、ダーナには言ってから来いよ。おまえらの痴話喧嘩に巻きこまれたくねえからな」
『はいはい。ちゃんと言ってから参ります。大佐にご迷惑はおかけしません』
「そうか、それならいいが。ちなみに、礼って何だ?」
『もちろん、ちょっとリッチなコーヒー豆ですよ』
「さすが、俺の〝生き別れの弟〟。よくわかってるな」
『当然でしょ。じゃあ、今日の二時にそちらにお伺いしますね。それではまたー』
ドレイクの返事を待たず、電話は切られた。イルホンは大きく深呼吸すると、にやにやしているドレイクにおそるおそる訊ねた。
「大佐……七班長の目的は何なんでしょう?」
イルホンはあくまで真剣だった。だが、ドレイクは噴き出すと、背中を丸めて笑い出した。
「目的って……本人が言ってたじゃない。昨日のクッキー缶のお礼だよ」
「でも、大佐も言ってましたけど、昨日の今日でお礼なんて、あまりにも早すぎませんか?」
「うん、それは確かに意外だった。でも、それだけ早く七班長も片をつけたがってるってことかな」
「片?」
「アルスター大佐だよ」
こともなげにドレイクは答え、イルホンは灰色の目を見張った。
「まあ、ぶっちゃけると、今日の七班長のお礼参りは、昨日の俺の挨拶回りと同じだよ。俺も七班長も、ダーナの前ではアルスター大佐の話はしたくない」
「……本当に〝生き別れの兄弟〟なんじゃ……?」
「自分で言っといて何だけど、それは絶対ないだろ。何にしろ、七班長が〝大佐〟になってくれて、俺もすごく助かった。ダーナの部下のままだったら、直接交流できなかったからな」
――なるほど。そういう思惑もあったのか。
顔には出さず、イルホンは感嘆した。
ヴァラクの希望を叶えてやりたかったというのも嘘ではないだろう。しかし、自分の同僚にして、一対一で話をしたいという気持ちのほうが強かったのではないだろうか。
ドレイクが〝生き別れの兄弟〟と言いたくなるほど、ヴァラクはドレイクと思考回路がよく似ている。どこまでが本音か、よくわからないところも。
「しかし、七班長がうちに来ると言って、ダーナ大佐が許しますかね……」
「そのへんは七班長がうまくやるだろ。〝クッキーもらったんだからお返ししなくちゃ駄目でしょ〟とか何とか言って」
「本当に尻に敷かれまくってますね……」
「七班長の尻に敷かれるなら、むしろ喜びだろ。……何だ、パラディン大佐以外、元護衛も現護衛もMだな」
「大佐は人のこと言えないでしょ」
他人事のように笑っているドレイクを睨んだイルホンは、ふとある可能性に気がついて表情をなくした。
「まさか……ダーナ大佐も一緒に来たりしませんよね?」
「それじゃ今日来る意味がなくなっちまうだろ。七班長がどんな手を使ってでも阻止するよ。……どんな手を使うかはわからないが」
「いろんな手を持っていそうですよね……」
「〝大佐〟になってからは、さらに増えただろ」
思わずその手を想像しそうになったイルホンは、自らの精神安定のため、あわてて脳内から抹消した。
「確か、七班長はコーヒーが嫌いで、紅茶が好きだったんですよね。用意しておいたほうがいいですか?」
「あー、必要ない必要ない。あいつだけ特別扱いしなくてもいいよ。もう充分特別扱いしてやってるんだから」
「それもそうですね」
ドレイクに右手を左右に振られ、イルホンはあっさり引き下がった。
何しろ、チョコレートの詰め合わせ一つで〝大佐〟にしてやったのだ。特別扱いにもほどがある。
* * *
そのとき、アーウィンが忌々しげに呟いた。
「〝七班長〟が……変態の執務室に電話をした……」
驚いたヴォルフが目を開けば、アーウィンは端末を操作する手を止めて、ディスプレイを見すえていた。
「アーウィン! おまえ、電話のチェックもしてたのかよ!」
「内容は知らん! それならいいだろう!」
「何がどういいんだよ!」
「……む。今度はダーナの執務室に電話か。なぜ、ダーナの携帯に直接かけない?」
「知るか! 〝七班長〟に直接訊け! 訊けるもんならな!」
それまで黙って仕事をしていたキャルは、椅子からすっと立ち上がると、低レベルな言い争いをしている主従に向かって淡々と宣言した。
「休憩にいたします。コーヒーをお淹れしますから、どうぞお好きなだけ騒いでいてください」
ヴォルフはアーウィンと顔を見合わせ、そろって神妙に頭を下げた。
「……はい。申し訳ありませんでした」
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