無冠の皇帝

有喜多亜里

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【06】始まりの終わり(下)

プロローグ

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 「連合」の萌芽は、〝地球〟と自称していた惑星が「連邦」に加盟したときから始まっていた。
 ありふれた、ごくごく平凡な惑星。そこに住む自称〝地球人〟は「連邦」の中では短命種であったが、そのような種によくあるように繁殖力が非常に強く、しかも多くの異星人と生殖活動が可能だった。
 好奇心旺盛な地球人は続々と宇宙に飛び出し、同じ地球人とは言うに及ばす、異星人とも積極的に交わり、ねずみ算的に子孫の数を増やしていった。その結果、「連邦」の中枢も地球系が大部分を占めるまでになった。
 しかし、地球系は性欲のみならず、征服欲や支配欲もことさら強い種でもあった。本来、「連邦」への加盟はあくまで未加盟の惑星または星系の自由意志によるとされていたのだが、地球系の幹部の一部は彼らに加盟を強制し、もしそれを拒否した場合には、銀河系一の戦闘力を誇る「連邦」軍を使って制圧、彼らの惑星または星系を「連邦」の直轄領――つまり〝植民地〟としたのだった。
 これには、非地球系はもちろんのこと、同じ地球系も猛反発した。ある非地球系の「連邦」幹部は、地球など「連邦」に加盟させなければよかった、あいつらは銀河系のガンだった、我々はそのガンを死滅させるどころか、逆に銀河系中に転移させてしまったとまで言い放ったという。

 一方、非難された側の地球系にとっては、彼らの批判はただの綺麗事としか思えなかった。自由意志などと聞こえのいいことを言っているが、実際のところ、「連邦」が加盟以外の選択を許した例しはない。「連邦」が加盟を呼びかけるのは、将来、自分たちを攻撃するかもしれない敵を少しでも減らすためなのだから。ならば、加盟を拒否した時点でその相手はもう敵だ。敵を屈服させ、逆らえないように支配・搾取する。それのどこがいったい悪い?
 「連邦」上層部は、従来派と強硬派の二つに大きく割れた。幾度となく話し合いが持たれたが、両者とも自分たちの考えを決して曲げようとはしなかった。
 しばらく膠着状態が続いた。が、強硬派がそれに終止符を打った。彼らの中心となっていた五星系――ヴァウ星系、ザイン星系、ラメド星系、メム星系、タウ星系が「連邦」を脱退、新たに「連合」を創設したのである。「連邦」は内部分裂の危機は回避できたが、外部に厄介な敵を作る羽目になったのだった。

 「連合」の創設により、複雑な立場に置かれたのが、彼らの故郷である地球――血の気の多い連中がこぞって宇宙に出ていってくれたため、すっかり平和で美しい星となっていた――の中央政府だった。「連合」に「連邦」からの脱退と「連合」への加盟を促されたが、銀河系の最大勢力である「連邦」を敵に回さなければならない理由など、「連合」にはあっても自分たちにはまるでない。中央政府は「連邦」内に留まる選択をし、以後「連合」とは「連邦」経由でしか交渉しないと回答した。事実上の絶縁宣言である。
 それなら力ずくでというのが〝「連合」魂〟だが、今の「連邦」にとっても地球は故郷であり聖地であった。「連邦」は地球および太陽系の軍備を拡張・増強することにより、戦わずして〝「連合」魂〟を打ち砕いたのだった。

 しかし、「連合」は〝聖地〟奪還を諦めたわけではなかった。地球の中央政府が自分たちを拒絶したのは「連邦」よりも弱体だったからである。単純にそう考えた彼らは、まずは勢力を拡大し、「連邦」に匹敵する存在になろうとしたのだった。
 「連邦」というくびきから解放された「連合」は、「連邦」領外の惑星または星系に今度は加盟ではなく従属だけを求めた。かつて地球上で彼らの遠い祖先たちがしていたように、武力でもって版図を広げ、〝植民地〟から資源や食料、労働力など、必要なものだけを必要以上に吸い上げ、それを自星系民たちだけで享受していたのである。

 のちに〝ケテル〟と名を改めたその星も、「連合」の植民地支配の犠牲となった数ある惑星の一つだった。まだ「連邦」の手も及んでおらず、文明度も地球でいう近代程度だったその星を侵略するのは、「連合」――より正確には「連合」の五大星系の一つザイン星系にとってはあまりにもたやすかった。抵抗するだけ無駄であると早々に悟ったその星の代表者は、住民たちの命の確保を条件に、ザイン星系の支配下に入るという苦渋の決断をしたのだった。

 こうしてザイン星系が新たに手に入れたその星は、彼らを〝勘当〟した地球にとてもよく似ていたが、若干重力が弱かったため、その住民たちは地球系よりも華奢でなおかつ優美な者が多かった。「連合」の中でも特に強く地球文化を固持していたザイン星系人たちは、彼らの星を勝手に〝エデン〟と改名し、その住民たちを〝天使〟と呼んだが、その〝天使〟たちに対して行ったのは、不敬きわまりないことばかりだった。

 だが、この〝天使〟たちは非常に勤勉で聡明でもあった。あらゆる意味で奴隷とされていても、「連合」が持ちこんだ知識・技術・文化等を貪欲に吸収しつづけ、ザイン星系人たちが気づいたときには、彼らよりも優れたものを数多く生み出すまでになっていた。
 ザイン星系人以外だったら、そんな彼らを警戒し、単純な肉体労働だけを強いたかもしれない。しかし、ザイン星系人たちは、後世の〝天使〟たちいわく〝おめでたい奴ら〟でもあった。自分たちよりもうまくやれるならと、知的労働ばかりでなく、様々な分野の研究や開発にも〝天使〟たちを従事させたのである。

 彼らはどの分野でも非凡な才能を発揮したが、特に機械関係にかけては目を見張るものがあった。同じ製品でも、ザイン星系人が作るより彼らが作ったほうがはるかに品質は高く、しかもコストは安い。目先のことしか考えないザイン星系人たちは、〝天使〟たちの作った部品や機械を愛用し、やがて機械関係の半分以上を彼らに依存するようになった。
 だが、それこそ〝天使〟たちがザイン星系に仕掛けた周到な罠だった。〝エデン〟がザイン星系の植民地となった百回目の記念日のある時刻、ザイン星系軍が使用していた〝エデン〟製品が一斉に故障した。つまり、コンピュータも小銃も軍艦さえも、たった一個でも〝エデン〟製の部品が組みこまれていたものは、すべて使用不能になってしまったのである。
 もちろん、ザイン星系人は大混乱に陥った。しかし、その原因を突き止める前に、ザイン星系人の大半は〝天使〟たちやその協力者たちの手によって殺されていた。皮肉にも、旧時代の純ザイン星系製の武器類によって。

 かつてザイン星系人が〝エデン〟と名づけた青い星は、環境保全よりも急速な工業化を優先させられたために、住民はドームの中でしか生活できない赤い星に変えられてしまっていた。
 だが、〝天使〟たちとその協力者たちは、ザイン星系人には気づかれないよう、少しずつ少しずつその星を一個の巨大なコンピュータへと作り変えていた。
 通称〈智天使ケルビム〉。たった一人の〝天使〟にしか従わない、空前絶後のメガ・コンピュータである。
 〝エデン〟製の部品には、このコンピュータの命令を受けて周囲を破壊する極小チップがすべて仕込まれていた。ザイン星系人たちは〝天使〟たちがそんな裏工作をしているなど夢にも思わず、ただただ高性能で低価格だからと〝エデン〟製品を使用していたのである。

 驚くべきことに、〈智天使ケルビム〉の命令は、〝エデン〟だけでなくそこを足がかりに植民地化された他星系にまで及んでいた。〝エデン〟と秘密裏に同盟を結んでいた非ザイン星系人たちは、〝エデン〟と同様、ザイン星系人の殺害や捕縛を行った。一応、一般人――主に入植者たち――は殺さず捕縛するとしていたが、絶対厳守というわけでもなく、それまで植民地の人間に対してどのような態度をとってきたかが彼らの生死を大きく分けた。

 捕縛されたザイン星系人たちは、片っ端から宇宙船の中に詰めこまれ、自動操縦でザイン星系領へと飛ばされた。その光景はザイン星系人が植民地の奴隷を〝出荷〟しているときとまるで同じだったという。
 しかし、〝天使〟たちはザイン星系人の死体もすべて宇宙船の中に放りこみ、同じくザイン星系領へと送り返した。自分たちの土地に埋葬するのはもちろん、死体の処分をすることすら彼らは厭ったのだ。それどころか、死体を別便にしただけ、ザイン星系人よりましだと思っていたかもしれない。その宇宙船を発見して中を覗いたザイン星系人には、とてもそうは思えなかっただろうが。

 〝エデン〟およびその同盟星系内からザイン星系人たちをあらかた追い出した後、〝天使〟たちの代表者は、まだ何が起こったかも把握できていないザイン星系に対し、ある宣言を一方的に伝えた。

 ――今この瞬間から、〝エデン〟は〝ケテル〟と名を改め、〝ケテル〟およびその同盟星系は「帝国」としてザイン星系から独立する。

 この宣言を発した、まさに天使のような金髪碧眼の青年こそ、〈智天使ケルビム〉に命令できるただ一人の〝天使〟であり、「帝国」の初代皇帝にして代々の〝オリジナル〟でもあった。
 彼の独立宣言がザイン星系領内に広まると、領内にいた〝天使〟たちはことごとく自殺した。人質として利用される前にあの世へ逃れたのだろう。中にはザイン星系人の配偶者となっていた者もいたが、彼らも迷わず死を選んだ。

 この段階になって、ようやくザイン星系人たちは、自分たちが〝天使〟たちの本性を完全に見誤っていたことに気がついた。
 彼らがザイン星系の支配を受け入れたのは、今はまだ勝てないと割り切っただけのことだったのだ。数々の屈辱に耐えながら、いつの日かザイン星系人を追い出すため、ザイン星系人から学べることは学び、得られるものは得た。他の植民地に比べて驚くほど従順だったのも、自分たちに反逆心はないと油断させるための演技でしかなく、ザイン星系人が予想していた恐れも親しみも抱いてはいなかった。おそらくは憎しみ。あるいは蔑み。ザイン星系に押しつけられた地球時間にして百年間。あの〝天使〟たちはその感情を見事に隠し通した。

 それでも、ザイン星系に彼らの独立を認める気は毛頭なかった。それは宗主としての沽券に関わる。だが、ザイン星系はあまりに多くの製造を彼らに委ねてしまっていた。得意の武力を行使しようにも、彼らの作ったチップはあらゆるものに組みこまれていて、うかつに近寄ればそれだけで軍艦も使い物にならなくされてしまうのだ。

 このとき、ザイン星系が同じ「連合」の四星系に支援を要請していれば、おそらく「帝国」の独立を阻めただろう。しかし、ザイン星系はその後のことを恐れてそれをしなかった。
 自星系の植民地の鎮圧に支援を要請すれば、奴らはそれを口実に「帝国」の分割を要求してくるだろう。それだけは断じて応じるわけにはいかない。あの星は、あの〝天使〟たちは、ザイン星系が見つけてあそこまで育ててやったのだ。他に譲るくらいなら、自分たちの手で滅ぼす。

 〝エデン〟製部品がいっさい使われていない軍艦や物品を領内中から掻き集め、ザイン星系はかつて〝エデン〟に乗りこんだときとは比較にならないほどの大規模な艦隊を「帝国」領へと送りこんだ。が、〝エデン〟製を使用しないということは、百年前の水準に後退してしまったのに他ならなかった。
 一方、〈智天使ケルビム〉は「帝国」の軍艦は狂わせないという器用な命令もできた。「帝国」の最先端技術を駆使した軍艦に、それを操る百戦錬磨の傭兵たちや、ザイン星系に反感を持っていた優秀な元軍人たち。「帝国」は人材にも恵まれていた。彼らはザイン星系軍の侵入を決して許さなかった。
 さらに、ザイン星系の足を引っ張ったのが、「帝国」の独立宣言に刺激されたのだろう、ザイン星系領内の植民地で次々と勃発した反乱だった。さすがに「帝国」クラスのものはなかったが――その意味でも、やはりあの〝天使〟たちは〝特別〟だったのだ――手に負えなくなるほど大きくなる前に、軍隊を向かわせて鎮圧しなければならない。「帝国」侵攻が思うように進まず、鬱憤が溜まっていたザイン星系軍は、それを晴らすかのように徹底的に彼らを蹂躙したが、それは次の火種を自ら作り出しているのも同然だった。

 ザイン星系軍と「帝国」軍の戦闘は、「帝国」が独立宣言をしてから一年近く続いた。その間に「帝国」は四星系から六星系に規模を拡大していた。
 〝領土〟が広くなれば、それだけ守りも薄くなる。そう考えたザイン星系は「帝国」大包囲網を敷き、全軍で一斉攻撃を仕掛けた。
 しかし、それは結果的に、あの〈智天使ケルビム〉の真価を銀河系内に知らしめることになってしまった。
 〈智天使ケルビム〉は、「帝国」の軍艦も軍事衛星も軍事基地も、あの皇帝の命令どおりに動かせた。つまり、「帝国」領内にあった兵器という兵器が、宇宙空間から、大気圏内から、地上から、海上から、同時にザイン星系の全艦隊を総攻撃したのだった。
 ――なすすべもなかった。まるで「帝国」領全体が、一個の艦隊になったかのようだった。あのしたたかな〝天使〟たちが〈智天使ケルビム〉を作り出したのは、このように戦うためでもあったのだ。

 「帝国」が独立を宣言してからちょうど一年後。ザイン星系は「帝国」に停戦条約締結を申し出、事実上「帝国」の独立を承諾した。ザイン星系単独によるこれ以上の戦闘行為はザイン星系の存続そのものを危うくさせる。ザイン星系の最高意志決定機関である〝理事会〟がそう判断したのだった。
 軍部はこれに異を唱えたが、ではあとどれだけの時間と金をかければ「帝国」を落とせるかと問われて沈黙した。「帝国」の敵は今のところザイン星系一つだけだったが、ザイン星系のそれは数え上げるのもむなしくなるほど多く、しかも日々増えつづけていたからである。

 だが、ザイン星系が「帝国」の独立を認める気になったのは、宗主と植民地という関係でなくなってしまっても、今度は表向き対等な同盟関係を結び直せばいいと考えたからだった。やはり、ザイン星系人は〝おめでたい奴ら〟であった。〝天使〟たちのあの凄まじい執念を目の当たりにしながら、まだ彼らをわかっていなかったのだ。
 停戦条約の締結に際して、なんと「帝国」は「連邦」領内で「連邦」を〝立会人〟として調印式を行うことを絶対条件とした。「帝国」の独立戦争に関しては、ザイン星系以外の「連合」と同様、「連邦」も傍観の立場をとってはいたが、前代未聞の戦略で独立を勝ち取った「帝国」に強い関心を抱いていたのは周知の事実だった。その「帝国」のほうから声をかけてくれるとは、まさに渡りに船と色めきだった。
 しかし、「帝国」は、ザイン星系は論外として、「連邦」に対しても同盟関係を結ぶ気はさらさらないと早々に明言した。

 ――あなた方が躾のなっていない犬どもを放したせいで、我々は百年以上もさんざんな目に遭わされました。一度飼った犬は最後まで責任を持って飼っていただきたいものですな。

 「帝国」の皇帝代理人は、皇帝からの伝言として、あくまで淡々とそのように告げた。〝天使〟ではないらしい剛健な男の口から出た痛烈な嫌味に、「連邦」の幹部たちはかすかに顔を歪めて耐えるしかなかった。
 だが、それでもザイン星系に対するよりは〝優しかった〟のだ。皇帝代理人は、やはり皇帝からの伝言と前置きして、ザイン星系の代表者にこう言い渡した。

 ――我々は、あなた方とは、この先未来永劫、〝無関係〟という関係でありたいと思っております。

 直接言われた代表者はもちろんのこと、同席していたザイン星系の関係者たちも一瞬で顔色を失った。
 ひらたく言えば、「帝国」は絶縁状を叩きつけたのだ。そうされてもやむなし、と「連邦」側は思っただろうが、ザイン星系側は承服しかねた。現時点ではその気はなさそうだが、将来「帝国」が「連邦」あるいはザイン星系以外の「連合」と手を組まないとは限らない。敵に回った「帝国」がどれだけ恐ろしいかは、全宇宙でいちばんザイン星系が知っている。

 ――いや、我々はあなた方に謝罪と賠償を……

 とっさにそう口走ったザイン星系の代表者に、皇帝代理人はすげなく答えた。

 ――もう二度と我々に関わらない。それがあなた方ができる、たった一つの〝謝罪と賠償〟です。

 ザイン星系の代表者は、それでいっさいの反論を諦めた。逆に言えば、そこまで言われなければこの〝おめでたい奴ら〟は理解できなかったのだ。「連邦」式の〝交渉〟をせず、力ずくで植民地としたときに、〝天使〟たちの信頼を得る機会は永久に失われてしまったことを。

 こうして停戦条約は締結され、「帝国」は間接的に「連邦」の承認を得た形で、ザイン星系から正式に独立した。勢力範囲は「連邦」や「連合」よりも圧倒的に狭かったが、領内は非常によく安定していた。その理由としては、「帝国」領内のコンピュータを一瞬にして支配できる〈智天使ケルビム〉の存在が第一に挙げられるだろうが、その〈智天使ケルビム〉に唯一命令できる皇帝がとても見目麗しい青年だったのも少なからずあっただろう。
 手段はどうあれ、あのザイン星系から「帝国」が独立を果たした事実は、他の植民地や植民地にされそうな惑星や星系に大きな希望と憧憬をもたらした。「連合」のザイン星系以外の植民地でも反乱が頻発し、「帝国」に自ら帰順を申し出る惑星や星系が続出したのである。

 一方、これに呼応するように、「連邦」もまた新たな動きを見せはじめた。
 「帝国」が独立するまで、「連邦」は「連合」に対して基本的に不干渉の立場をとっていたが、あの「帝国」の〝嫌味〟がよほど骨身に染みたのか、「連合」の植民地支配を正面から非難するようになった。また、「連邦」に〝救助〟を求める惑星や星系があれば、積極的にそれに応じ、時には「連合」と直接交戦もした。
 以降、「連邦」と「連合」は完全に対立しているわけではないが、〝こっちは停戦、あっちは開戦、いつもどこかは戦闘中〟と内外から揶揄される微妙な関係となるのである。

 そんな「連邦」と「連合」の〝親子喧嘩〟を尻目に、「帝国」は堅実にその勢力範囲を広げていた。帰順を申し出てきた惑星や星系に対しては、「帝国」にしかわからない基準で厳格に審査した上で、「帝国」製のコンピュータを導入することに同意した場合のみ、「帝国」の一員とした。
 ただし、ザイン星系人の帰化だけは、原則不許可とした。どうしてもと食い下がる者には、脳内にチップを埋めこめば許可すると回答した。〈智天使ケルビム〉の命令一つで脳を破壊できるチップである。これでほとんどのザイン星系人は帰化を諦め、ザイン星系領へと帰っていったが、その際には必ず何らかの形で例のチップを持たされているのだった。いつかザイン星系人が〝約束〟を破ったときのために。

 ――『愚者の末裔』(作者不明)より前半部分を引用。
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