無冠の皇帝

有喜多亜里

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【04】始まりの終わり(上)

02 あと一回になりました(後)

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「これがまだ、あと一回もあるのかよ」

 戦闘終了後、真っ先にそうぼやいたのは、情報処理席にいるディックだった。
 〈旧型〉のその席には、前々回までキメイスが座っていた。が、前回の出撃前にディックが強制異動させられて席替えと相成った。
 異動を命じたドレイクは『約束破ってごめんねごめんねー』と謝っていたが(しかし、誠意はまったく感じられなかった)、ディックは怒るどころかとても嬉しそうだった。自分の元同僚――ウェーバー大佐隊出身者が中心の〈新型〉に飽きていたのだろうか。
 確かに、自分のベストポジションは今の通信席なのだろうとキメイスも思っている。このドレイク大佐隊ではいろいろやらされているが、もともとは通信士だ。
 だが、インカムをつけると、今でもあのときのことを思い出してしまう。
 もう後悔はしていない。しかし、最善策は何だったのだろうと時々考える。
 いつかドレイクに訊ねてみたいが、その前には必ずフォルカスに話そうと思う。彼とした約束はなるべく破りたくない。

「あと一回やらなくても、あれはもう〝栄転〟でいいだろ」

 続けてディックは自分の右隣――操縦席にいるスミスに話しかけた。
 雑談をするなら、やはり元同僚のスミスがいちばんしやすいのだろう。キメイスも馬鹿話はもっぱらフォルカスとしている。
 もっとも、マクスウェル大佐隊に在籍していたときには面識はなかった。そのフォルカスにほとんど無視されている〈新型〉の操縦士とも。

「確かにな。俺もそうは思うが、それを決められるのは殿下だけだ」

 正面を向いたまま、スミスは呆れたような溜め息をついた。

「イルホンによると、殿下もアルスター大佐を〝栄転〟にしたがっているみたいだそうだが」
「大佐がそうしろって言わないから我慢してるのか」

 茶化すことなく真面目にディックが問い返す。スミスの横顔に苦笑いが浮かんだ。

「まあ、そうなんだろうな。でも、大佐はアルスター大佐を〝栄転〟にしろとは絶対に言わないと思うぞ」
「何でまた? 大佐も〝栄転〟になればいいと思ってるんじゃないのか?」
「さあ、どうだかな。もしかしたら〝栄転〟までは望んでないかもしれない。アルスター大佐までいなくなったらこの艦隊、さすがに維持できなくなるだろ」
「そうかぁ? あんなんだったら、いないほうがずっといいと思うけどな」
「俺個人としては、完全に同意する」

 ――殿下が同意するかどうかはわからないがな。
 言外にそう言うと、スミスは〈旧型〉の操縦に集中しだした。
 言葉にはしなかったが、キメイスもディックの意見に完全に同意だった。キメイスだけでなく、砲撃席のギブスンも艦長席のフォルカスもそう思っているだろう。機関席でまた爆睡しているウィルヘルムもたぶん。
 戦闘中はいつものように暴言を吐き散らかしていたフォルカスは、今は見るからに不機嫌そうな表情で押し黙っている。暴言には何とか慣れたが、この顔には慣れない。だからなのか、誰もフォルカスと視線を合わせようとしない。
 触らぬ何とかに祟りなしだ。キメイスも無理にフォルカスの機嫌をとろうとは思わなくなった。〈ワイバーン〉が視界に入れば、きっとまた通常状態に戻るだろう。
 とにかく、あと一回。
 あと一回で、何かが確実に変わるはずだ。

(まあ、アルスター大佐は〝栄転〟になるんだろうけどな)

 当然のようにキメイスは思い、誰にも見られないように冷笑したが、このときの彼はうっかり失念していた。
 時に、あの最高上司は、ドレイクにすら予見できない言動をするのだということを。

 * * *

「これで〝あと一回〟になったねえ」

 戦闘終了直後、オールディスが笑いながらそう言った。
 あと一回で何かが変わる――おそらく、アルスター大佐に何らかの処分が下されると思っているからなのかどうなのか。だが、仮にそうであったとしても笑い事ではないだろうとラッセルは思っている。口では絶対に勝てないから、眉をひそめて睨むだけにとどめているが。
 そんなラッセルとオールディスの間に挟まれている〈新型〉操縦士――セイルは、オールディスが何を言おうが何をしようが、戦闘中はほぼ無反応である。口数も非常に少ない。〈旧型〉の艦長席にいる自分の元部下のことに触れられないかぎり。

「まあ、なったけど、本当にアルスター大佐がどうにかなるかな」

 ある意味つきあいのいいスターリングが、通信席からオールディスに応える。
 ディックもいれば間違いなく同調しただろうが、彼は前回の出撃前に〈旧型〉の情報処理席に異動させられた。空いた機関席には、やはり各艦に一人は整備を乗せておいたほうがいいだろうということで、ラスが座ることになった。
 ラッセルたちにとっては納得の人選だったが、それを知ったセイルは明らかに落胆していた。きっと〝整備監督〟が来るんじゃないかと期待してしまったのだろう。いやいや、あのドレイクがそんな無謀な人事をするはずがないとラッセルたちは思ったが、それを口にしないだけの優しさ――あるいは狡さ――は持ち合わせていたため、みな見て見ぬふりをした。
 しかし、ディックは『俺に情報処理なんて……』などと言いつつも、その喜びを隠しきることができなかった。
 まあ、仕方ないと言えば仕方ない。〈旧型〉にはディックいわく〝ドレイク大佐隊の三大美人〟のうち二人もいるのだから。
 だが、ふとセイルを見た瞬間、ディックのだらけた顔面は凍りついた。いったい何事かとラッセルたちもセイルに注目すると、彼はディックを見すえながら、震えるほど右手を強く握りしめていた。
 まずい。ラッセルたちも顔色を失ったとき、オールディスがすかさず叫んだ。
 ――六班長! 〝操縦士は手が命〟!
 その言葉がセイルに与えた効果は劇的だった。まるで夢から覚めたように我に返ると、『そうだったな』と呟き、いずこかへと去っていった。おそらくは、ディック以外の物を蹴るために。
 そして、その一部始終を見ていたラスは、『すいません、すいません、うちの班長あんなんで、ほんとにすいません!』とラッセルたちに謝りまくり(無論、ラッセルたちは、君が謝る必要はない、むしろ、心から同情すると言ったのだが)、以降、自分の元上官が逸脱行動を起こしそうになるたびに謝罪することが、〈新型〉におけるラスの主要任務となったのだった。

「俺はなると思うけどねえ。とりあえず、何かは変わると思うよ」

 オールディスは呑気に返すと、眼前のモニタに目を戻した。

「始まれば、いつかは終わる。ただ、なるべく損失は少なく終わらせたい。俺はそう思ってると思うけどね。少なくとも、ドレイク大佐は」
「ドレイク大佐? ……殿下は?」

 ラッセルも思ったことを、艦長席にいるバラードが怪訝そうに問う。オールディスは振り返ることなく「まあ、思ってるだろうけど、大佐ほどじゃないだろ」と笑いながら答えた。

「たぶん、最初から大佐がここにいたら、一年でケリをつけてただろ。もっとも、『帝国こっち』で生まれ育ってたら、今の大佐にはなってなかっただろうけどな」
「それはそうだな。『連合あっち』のことを知ってるのが、大佐の強みの一つだろうし」
「俺はさ。この戦争の終わりが見たいんだよ」

 ラッセルは思わずオールディスを見たが――実際に見られたのはオールディスが座っているシートの背中だったが――意外なことに、あのセイルも彼に視線を向けていた。

「ウェーバー大佐隊にいたときには、見られないかもしれないと思ってた。でも、ここに来て、かなり希望が出てきた。終わりを見せてくれるんなら、俺は俺にできることは何でもするよ。ラッセルの代わりに砲撃しろって言うんなら喜んでする」
「いや、それはない」

 とっさにラッセルは否定したが、それに同意してくれた乗組員は一人もいなかった。

「とりあえず、いま俺らがすべきことは、〈ワイバーン〉と合流することだな」

 ラッセルを無視したまま、オールディスはおどけたように〈ワイバーン〉がいる方向を指さした。

「〝有人艦だとバレないようにこっそりと〟。いやもう、完全にバレてると思うけど。そこは本気かどうかわからない」

 おまえの発言もどこまで本気かわからない。ラッセルは心の中で毒づいて、今はアルスター大佐隊・第二分隊と呼ばれている元ウェーバー大佐隊に思いを馳せた。
 ――あと一回だ。あと一回だけ……どうか、耐えてくれ。

 * * *

 ヴァラクが言っていたとおり、今回もアルスターは作戦を変えなかった。

「これがあと一回……ですか」

 呆れまじりにクロケルが艦長席のヴァラクに話しかければ、彼は紅茶色の目を猫のように細め、アイスティーを啜っていたストローから赤い唇を離した。

「予定どおりならな。殿下はきっと、今回でもう終わりにしたいと思っただろうが」
「ドレイク大佐は?」
「さあな。あの人が何をどこまで考えてるかは俺にもわかんねえよ。ただ、アルスター大佐に猶予期間を与えたかったってよりは、自分の隊の訓練期間を延長させたかったからなんじゃねえか、って気もするけどな」
「訓練期間?」

 思わず問い返すと、ヴァラクは紙コップを左右に振って、アイスティーの残量を確認した。

「有人艦を無人艦みたいに動かす訓練。こいつは実戦でなきゃ絶対できねえ」

 ドレイク大佐隊は、公式には有人砲撃艦〈ワイバーン〉一隻しか所有していないことになっている。が、実は〈ワイバーン〉の他に無人砲撃艦に偽装した軍艦を二隻所有していることは、このヴァラクの班――ダーナ大佐隊所属元マクスウェル大佐隊第七班内では、公然の秘密となっていた。
 第七班班長兼元マクスウェル大佐隊隊長であるヴァラクから初めてそう聞かされたときにはクロケルも驚いたが、それを踏まえて注視すれば、なるほど、まるで無人砲撃艦群を率いるように動く無人砲撃艦が、旧型と新型、それぞれ一隻ずつあった。
 今回もその二隻は出撃しており、〈ワイバーン〉が敵旗艦を落とすための援護をした後は、新型がダーナ大佐隊の手伝い、旧型がアルスター大佐隊の尻拭いをしていた。
 〈ワイバーン〉を追跡すれば、その二隻と合流して基地に帰っているのも確認できるはずだが、そもそもそんな軍艦をドレイクに与えたのは、間違いなくこの艦隊の司令官である以上、確認できたところでどうということもない。むしろ、その追跡行為を司令官に知られる危険性のほうが恐ろしい。あの司令官なら何らかの理由をつけて必ず処分するだろう。もちろん、追跡したほうを。

「それはそうですが……実戦で訓練ですか。部下思いと言われているのにスパルタですね」
「〝それはそれ、これはこれ〟、なんだろ。つーか、それでも喜んでついてくる人間しか部下にはしてないと思うぜ。最初っからよ」
「なるほど」

 そこも班長に似ていますね、と続けたくなったが、以前、自分にドレイク大佐が似ているというのは失礼だろうと言われたことを思い出し、空気と一緒に言葉を呑みこんだ。
 不思議なことだが、ヴァラクは自分が依存していた同期――六班長セイルを実質自隊へと引き抜いたドレイクを恨んではいないらしい。ヴァラクの怒りの矛先は常に、その原因を作った直属の上官――ダーナに向けられている。
 しかし、それでダーナに反発しているかと言えばそんなこともなく――自分の行動を反省しているらしいダーナの後ろめたさにつけこみ、日々嫌がらせとも思えることを繰り返してはいるが、ヴァラクが本気で怒っていたらその程度では済まないことは、クロケルたちがいちばんよく知っている――ダーナ大佐隊所属となって以降、右翼の後衛としての仕事を着実にこなしている。正直、左翼のアルスター大佐隊と比べたら、やりすぎではないかと思うくらいだ。
 元マクスウェル大佐隊は、あの整列事件を皮切りにダーナによって翻弄されつづけてきたが、今いる隊員たちは一周回ってダーナの指揮下に入ってよかったと思っているようだ。少なくとも、アルスターの指揮下よりは。
 アルスターは自隊に転属されてきた元マクスウェル大佐隊員を、全員元ウェーバー大佐隊改め第二分隊に押しつけた。すなわち、本来のアルスター大佐隊改め第一分隊には一人も入れなかったのだ。
 砲撃担当の三大佐の中ではアルスターがいちばんまっとうだろうとクロケルは思っていた。だが、比較対象があの二大佐――マクスウェルとウェーバーならば、たいていの大佐はまっとうでいられてしまうのかもしれない。ヴァラクのアルスターに対する評価がさほど高くなかったのは、まさしくまっとうに彼を評価していたからなのだろう。

「まったく、ドレイク大佐が来てくれなかったら、今頃この艦隊、砲撃担当は全部無人艦にされてたな」

 最近気に入りの冗談になっていない冗談を飛ばすと、ヴァラクはまたストローをくわえた。ちなみに、これを飲みはじめたのは戦闘終了になってからで、戦闘中は飲んでいない。一応、それくらいの良識はヴァラクにもある。

「そしたら、俺らはクビにされてましたね」

 そろそろ二杯目を用意しておこうかと考えながら軽く受け答える。と、何がおかしかったのか、ヴァラクは声を立てて笑った。

「クビか。まあ、あの殿下だったらそうしてたかもな。そしたら、俺らはきっと宇宙軍に再就職だ。……あっちには体を張って俺らを守ってくれる無人艦はいないけどな」

 つまり、ここの砲撃担当より、戦死する可能性は桁外れに高い。遠回しにそう言われて、クロケルはぞっとした。
 ヴァラクはともかく、元マクスウェル大佐隊には軍隊以外に行き場所がなかった人間は少なくない。マクスウェルはそこにつけこみ、好き勝手をしていた。ヴァラクがいなかったら今頃どうなっていたか。恐ろしすぎて想像すらしたくない。

「ま、そこも含めて、やっぱりドレイク大佐様々だな」

 クロケルが何も言わなくても、その表情を見ただけで何を考えているかはわかったのだろう。ヴァラクはおどけたように眉を吊り上げた。

「うちの馬鹿大佐も、実はそう思ってんじゃねえの?」

 ヴァラクが〝馬鹿大佐〟と呼んでいるのは、現時点でダーナ一人だけだ。さすがに本人には直接言っていないだろうと思いたいが、ヴァラクいわく、セイルの件でダーナに〝むちゃくちゃ言った〟そうなので、そのとき口にしているかもしれない。――いや、たぶん言った。そして、それについても処罰はまったくされていない。

「ダーナ大佐がですか? 噂じゃ、ドレイク大佐とは大佐会議で怒鳴りあう仲だそうですが」

 あの冷静沈着な男が声を荒立てている姿など、クロケルにはとても想像がつかないが、その噂がガセではないことは確認済みだ。

「逆に言うと、それまでここには、怒鳴りたくなるくらい本音をぶつけられる相手がいなかったってことだろ。で、ドレイク大佐のほうはきっと、馬鹿大佐には怒鳴ったほうがいいって計算して怒鳴ってる」

 クロケルはしばらく考えてから、真面目な顔でこう答えた。

「俺は班長の手下で、本当によかったです」
「おいおい、手下はねえだろ手下は。そこは部下一択だろ」
「どっちでも同じでしょ。とにかく、班長が上官でよかったです。班長に解説してもらえなかったら、俺にはもう、何が何だかさっぱりです」
「俺は別に解説してるつもりはねえよ。たぶんこうなんじゃねえかなって臆測してるだけだ」

 にやにやしながらヴァラクは否定したが、本当にただの臆測であったのなら、〝班長補佐〟の自分に対してでも話したりはしなかっただろう。ヴァラクという男は、ある程度の確信を持っていなければ、たとえ雑談でもこういったことは口には出さないのだ。
 しかし、こうして言葉にした以上、それはクロケルやその周囲でこっそり聞き耳を立てているブリッジクルーにも、共通認識として覚えておけということだ。

 ――ドレイク大佐とは敵対するな。

 ヴァラクが言っていることを、クロケルなりにまとめるとそうなる。
 だが、ヴァラクは積極的にドレイクを支持しろとも言っていない。一見、ドレイクを手放しで賞賛しているように思えるが、ドレイクはドレイクの思惑があって動いていることをそれとなく示唆している。
 今のところ、それがヴァラクの利害と一致しているから〝ドレイク様々〟なのであって、もしこのさき相反することがあれば、ヴァラクはドレイクにすら平然と逆らうだろう。
 いずれにせよ、クロケルたちがすべきことは、いついかなるときでもヴァラクの命令に従うことのみである。そうすれば、彼に切り捨てられることは決してない。自分たちは彼の〝同僚〟ではない。あくまで〝手下〟なのだから。
 とは言うものの、クロケルもヴァラクの言動にまったく疑問を抱いていないわけではない。

(班長、何が狙いでダーナ大佐の執務室で昼寝してんだろうな)

 たぶん今、クロケルがいちばんヴァラクに解説してもらいたいのはこれだ。
 単刀直入に訊ねても怒られはしないと思うのだが、ヴァラクはクロケルが訊ねてこないことを期待しているような気がすごくする。ヴァラクの〝アゲ要員〟たるクロケルのこの手の勘はたいがい当たる。ゆえにどうしても触れられない。ダーナたちがあの執務室に来ない日には、朝からヴァラクが微妙に不機嫌そうなところも含めて。

(かなり模様替えはしたとはいえ、あそこはあのエロ大佐の執務室だったのにな。正直、よく昼寝なんてできるよ)

 ヴァラクもあのソファがダーナが持ちこんだものだから、何のためらいもなく使っているのだろうが、クロケルはやはり部屋自体に抵抗がある。ダーナたちもあの部屋でついこの間まで行われていたことを知っていたら、模様替えどころか建て替えしたいと思うのではないだろうか。

(まあ、知らぬが仏ってやつだな。班長も絶対言わないだろうし)

 目的が何であれ、ヴァラクはあの執務室で快適に過ごさせてもらっているらしい。昼寝の後は、紅茶や菓子まで出してもらっている。ヴァラクの送迎は必ずクロケルがしているのだが、もはやヴァラクの昼寝に慣れきってしまったダーナたちを見ていると、まるで自分が保育園児を送迎している保護者のような気分になる。いっそもう、あそこはヴァラク専用の保育園だと割り切ってしまったほうがいいのだろうか。

(確かに、今はうちの待機室の次にあそこが〝安全〟だしな)

 だから、ヴァラクも昼寝ができるのだろう。そして、明日も昼寝に行く。何だか知らないが、出撃した日の翌日は必ずダーナたちがこちらの執務室に来ることにいつのまにかなっていた。
 ダーナはいつまでこちらの執務室を使いつづけるつもりなのだろう。そう思いはするが、昼寝のついでにヴァラクと作戦会議もしているらしい。その意味では、ヴァラクの昼寝もダーナの役には立っているのかもしれない。

(とりあえず、班長はしたいことできてるみたいだし、今はそれでいいか)

 臆測は苦手でも忖度は得意なクロケルは、結局いつもの結論に至ると、ストローをくわえてズズッズズッと音を立てているヴァラクに、アイスティーのおかわり持ってきましょうかと声をかけた。
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