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第三章今川vs織田 怨恨渦巻く桶狭間
義元の危機からの逆転の一手
しおりを挟むわかっていた。こうなってしまう事事態はわかっていたのだが……。
わずかな手勢だけ連れて義元は深い森の中を走っていた。
既に敵方の奇襲を受けてしまい、本陣は大混乱に陥ってしまっているだろうと冷静に判断する。
「殿、やはりこんな奇襲のやり方はあの小娘にはできないと思います」
ついてくる、手勢の中に一人だけ義元の護衛として配置されていた。今川に置いて勇将として名高い岡部元信があたりを警戒しながら義元に尋ねる。
「確かにあの「織田信長」であればこの様なタイミングでやってはこないわ。それにあんな挑発めいた文をわざわざ送ってくる様なことはしない筈」
義元がこの出兵を決めた理由があった。それは本当にこの文を書いたのが、あの内容の手紙を送ってきたのが本当に「織田信長」なのか確かめる為に動いた。
結果、分かったことはこの手紙を送ったのは「信長」ではなく違う人物つまり、全くの別人が代わりに書いて送ってきたのだ。
「やはり……織田家の中で何かあったとしか思えないですね」
元信の言葉に私は首を振ってしまう。
「確かにそう考えるのが妥当かもしれないわね。織田家内部でのクーデターによる当主交代があったのかもしれない。それでもまだ不可解な点があるわ」
「と申されますと……」
兵士に達に休憩を、取る様に促しながら元信は少し難しそうな顔で聞く。
「この戦に対してのメリットがあまり無い様な気がしてならない。現状見る限りではそこまで領土的野心はなかったはずよ」
現在の尾張の状況は決して良くはない。家中はまとまり始めたのも「織田信長」が当主の座についてからであり、本人の功績が多いところがある。
「信長」自身そこまで領土的野心があったわけでは無かった、彼女は自分の国を豊かにするのにしか興味が無い、氏康タイプの筈であり、新しい技術などを試したり、物を買ったりするなどとにかく新しい事に対して奴は積極的に動くやつであった。
そもそも、奴の「織田家」自体がそんな動きしか見せていなかった、尾張自体この百年以上他国を攻めることはしていないそれどころかこんな挑発めいたことはしていなかったのだ。
その国がこんな挑発めいた文を送ってくるとは思ってもいなかった。だからあえて私は罠だとしてもこの誘いに乗る事にした。
結果、私の予想は的中したのだが予想よりも相手の方が上手であった。
「殿、ここまで来たら駿河まで戻りましょうぞ。既に本陣が攻められ大将が行方不明になったことは既に知れ渡っている筈です。もはや我々の勝機はありません」
元信は神妙な面持ちで具申する、既にわずかな手勢な五十にも満たず確かに撤退するのが一番いいのかもしれない。
「いや、このまま私が死んだ事にしてくれたらいい。その方がかえって動きやすいかもしれん」
義元は元信の意見をキッパリと断る。
「やはり……黒幕が気になりますか?なら一人でとは言わずに私もお供につけてください、義元様の身に何か有れば…」
君主の意見を尊重しながらも元信は義元から離れる気は無かった。もしかしたら彼女が死ぬかもしれないと思い彼はついていくつもりでいた。
「………わかった。だがこの感じからするとかなり「織田家」の内部はかなり深刻になっている筈だわ。ならこのまま黒幕がいるかもしれない尾張に向かい潜伏するとしよう」
「わかりました。でしたら駿河はどうしますか?このまま奴等の好きにさせるつもりですか」
「いや、このまま奴等の好きにはさせんませんよ。それに……」
さっきまで余裕のなかった、私の顔に少しだけ笑みがこぼれてしまう。それは信頼からくるものであり、何百年争ったことがある彼らの実力を知っているからかもしれない。
「「彼ら」に賭けましょう、私達の同盟国に任せましょう」
この絶対絶命の中でも希望がある事を信じながら残った手勢五十名は暗闇の森の中に静かにくらます。
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