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第三章今川vs織田 怨恨渦巻く桶狭間
今川義元という女
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上杉家との誤解が解けてから三ヶ月程が経った。
双方が一触即発の事態は免れ両家の関係も今まで通りに修復した。
これでしばらくはゆっくりできる時間が手に入ったと思ったところに……
「で、今回の話は本当なのか?」
俺は二日前に渡された資料に目を通しながら聞く。
「はい、既に今川軍は進軍をしています。向かう先は桶狭間……今川家にとっては忌むべき場所といった所です」
答えたのは「綾」前の上杉との誤解を解いたとして正式に「山県昌景」の名前を継ぎ名実共に武田家赤備えの長になった。そればかりでは無く、武田家の筆頭家老に最年少で就任したのだ。
「まぁ、内容を見る限りとうとう動き出したと言いたいところだがまた桶狭間にこだわっているというのか」
俺は今川の進軍ルートをもう一度確認しながら少しばかり呆れてしまう。
ここ数百年、安定した時代が続いていたのはどの勢力も争わず絶妙な関係で平和を守ってきた。
だがその間の間に小競り合いがあった事もあった。それの最もたる戦場は「川中島」や
「桶狭間」、「三方原」など歴史の分岐点になるところばかりで起きた。
今川は初代から領土的野心に囚われていた。その為に彼らは何代も懲りずに他国の国に攻めては手痛い反撃を受けて来ていた。
場合によっては当主自身が命を落とす事があった、もちろん先代の今川義元も同じように戦死してしまっている。
その為に今回もまた同じように懲りない遠征でたものだと他国の人々は思ってしまう。
「だが……あの聡明な義元がこんな簡単に出兵を決めるとは思えない…何かしら裏がある筈だ。それに……」
さらに資料のページをめくり不可解な点があることに俺は顔をしかめてしまう。
あまりにもずさんな準備であり、そして何か急いでいるような、怒りに任せて決めたような必死さが感じられてしまう。
「何より、北条氏康…あの引きこもり女が風魔の部隊を動かしているのと自ら動いて後詰めとしているのがあまりにも不可解ではある」
本来北条氏康は全く他国に干渉をしないという独立性を持っている国であり、それが同盟国が危機であっても動く事はしなかっただが今回初めて北条が動くことになった。
彼女は先代から続けていた不干渉を、 破り今回初めて今川と共に出兵した。
「どうやら…….俺達も聞くべきなのだろうな。「綾」俺達も動くとする」
「はい!」
「よし!そうなら早く動くとするかあのバカが来る前に!」
同盟国である、北条が動くのに武田が動がないのは他国に示しがつかない。
俺達は、嫌な予感を感じながらも今川について行くことを決めた。
決めたならすぐに動く準備をしなければ間に合わない。あとから兵を連れて行く事にし俺と「綾」は二人で今川の軍に向かう事にした。
軍の指揮は「綾」の叔父である、「飯富虎昌」に任せ俺達は向かう事にしたのだが…
「なんで!お前達まで来ているだよ!」
ついに我慢の限界がきて俺は叫んでしまう。
「まぁ、まぁそう怒らなくてもいいじゃないですか?大将」
補給部隊からくすねた食料を食べながら「馬場信房」が答える。彼女も名実共に武田家の重鎮として要職についているのだが勝手に飛び出してきたのだ。
「全く私達のような若いのが数人いなくなっても武田家は大丈夫ですよ」
呑気な声で答えるのは「内藤昌豊」で彼女も「信房」同様要職につきながらも勝手に出てきたのだ。
「やっぱりダメだったんですよ!こんな怒っておられるんですから!」
ワタワタと慌てているのは「春日虎綱」。
そして……
「ハルくんも忙しいですね。今川なんて放っておけばいいのに」
「お前は特に一番関係がない筈なんだよ!なんでいつもこんな大事な時にくるだ。自分の国を心配してくれ」
そう、こいつはこんな時にでもついてくる。誰にも俺は伝えていないのにどうしてこいつは来たんだ?
「おい!誰だ!こいつ今回のこと教えたのは!」
「それは……アンタの副官が教えたのさ」
「「綾」…教えたらまずいだろ?」
「いえ、今回の出兵には裏があると言われましたので使える戦力は多い方がいいましてそれで「景虎」さんにもお声をかけたんですよね」
「確かに戦力は多い方がいいと言ったがこれはあまりにも多い感じがすると思うのだがそれに同盟国の当主自らが動くのはマズイだろ?こいつのことだ何も言わずに出てきたに違いない」
俺はどうにかこいつに越後に帰ってもらおうと必死に説明するのだがそれを遮るように奴が口を挟む。
「大丈夫だ「ハル」、既に上杉には説明ははしてある。それに上杉に何かあれば武田が動く手筈にはなっているから大丈夫だと言ってあるんだ、何も心配する必要はない」
それには及ばないと自信たっぷりで答えるのは武田四天王の黒幕「内藤昌豊」に対して俺は頭を抱えて告げる。
「お前らは北条と上杉の関係を忘れているぞ」
そう、現代においても上杉と北条は因縁浅からぬ関係になっており、先代同士は相打ちになるほどの戦をしていた間柄だ。
「そうだな……ここは二人には仲良くなってもらうしかないですね」
丸投げな答えに対して俺は「景虎」に確認する。
「ちなみに氏康との仲は?」
少し考える顔をした後に彼女はとびっきりの笑顔でこう答えた。
「今度、一騎討ちしましょう!と言える間柄だかしら!」
全く関係性が見えてこない。
「そうか…なら出会ってみないとわからないという事か………」
俺は疲れた表情をしながらゆっくりと足をすすめる。
どうやら俺はトラブルに巻き込まれる事に関して運命を感じてしまう。
「どうか、氏康が切り掛かったりしないことを祈るしかないかぁ………」
双方が一触即発の事態は免れ両家の関係も今まで通りに修復した。
これでしばらくはゆっくりできる時間が手に入ったと思ったところに……
「で、今回の話は本当なのか?」
俺は二日前に渡された資料に目を通しながら聞く。
「はい、既に今川軍は進軍をしています。向かう先は桶狭間……今川家にとっては忌むべき場所といった所です」
答えたのは「綾」前の上杉との誤解を解いたとして正式に「山県昌景」の名前を継ぎ名実共に武田家赤備えの長になった。そればかりでは無く、武田家の筆頭家老に最年少で就任したのだ。
「まぁ、内容を見る限りとうとう動き出したと言いたいところだがまた桶狭間にこだわっているというのか」
俺は今川の進軍ルートをもう一度確認しながら少しばかり呆れてしまう。
ここ数百年、安定した時代が続いていたのはどの勢力も争わず絶妙な関係で平和を守ってきた。
だがその間の間に小競り合いがあった事もあった。それの最もたる戦場は「川中島」や
「桶狭間」、「三方原」など歴史の分岐点になるところばかりで起きた。
今川は初代から領土的野心に囚われていた。その為に彼らは何代も懲りずに他国の国に攻めては手痛い反撃を受けて来ていた。
場合によっては当主自身が命を落とす事があった、もちろん先代の今川義元も同じように戦死してしまっている。
その為に今回もまた同じように懲りない遠征でたものだと他国の人々は思ってしまう。
「だが……あの聡明な義元がこんな簡単に出兵を決めるとは思えない…何かしら裏がある筈だ。それに……」
さらに資料のページをめくり不可解な点があることに俺は顔をしかめてしまう。
あまりにもずさんな準備であり、そして何か急いでいるような、怒りに任せて決めたような必死さが感じられてしまう。
「何より、北条氏康…あの引きこもり女が風魔の部隊を動かしているのと自ら動いて後詰めとしているのがあまりにも不可解ではある」
本来北条氏康は全く他国に干渉をしないという独立性を持っている国であり、それが同盟国が危機であっても動く事はしなかっただが今回初めて北条が動くことになった。
彼女は先代から続けていた不干渉を、 破り今回初めて今川と共に出兵した。
「どうやら…….俺達も聞くべきなのだろうな。「綾」俺達も動くとする」
「はい!」
「よし!そうなら早く動くとするかあのバカが来る前に!」
同盟国である、北条が動くのに武田が動がないのは他国に示しがつかない。
俺達は、嫌な予感を感じながらも今川について行くことを決めた。
決めたならすぐに動く準備をしなければ間に合わない。あとから兵を連れて行く事にし俺と「綾」は二人で今川の軍に向かう事にした。
軍の指揮は「綾」の叔父である、「飯富虎昌」に任せ俺達は向かう事にしたのだが…
「なんで!お前達まで来ているだよ!」
ついに我慢の限界がきて俺は叫んでしまう。
「まぁ、まぁそう怒らなくてもいいじゃないですか?大将」
補給部隊からくすねた食料を食べながら「馬場信房」が答える。彼女も名実共に武田家の重鎮として要職についているのだが勝手に飛び出してきたのだ。
「全く私達のような若いのが数人いなくなっても武田家は大丈夫ですよ」
呑気な声で答えるのは「内藤昌豊」で彼女も「信房」同様要職につきながらも勝手に出てきたのだ。
「やっぱりダメだったんですよ!こんな怒っておられるんですから!」
ワタワタと慌てているのは「春日虎綱」。
そして……
「ハルくんも忙しいですね。今川なんて放っておけばいいのに」
「お前は特に一番関係がない筈なんだよ!なんでいつもこんな大事な時にくるだ。自分の国を心配してくれ」
そう、こいつはこんな時にでもついてくる。誰にも俺は伝えていないのにどうしてこいつは来たんだ?
「おい!誰だ!こいつ今回のこと教えたのは!」
「それは……アンタの副官が教えたのさ」
「「綾」…教えたらまずいだろ?」
「いえ、今回の出兵には裏があると言われましたので使える戦力は多い方がいいましてそれで「景虎」さんにもお声をかけたんですよね」
「確かに戦力は多い方がいいと言ったがこれはあまりにも多い感じがすると思うのだがそれに同盟国の当主自らが動くのはマズイだろ?こいつのことだ何も言わずに出てきたに違いない」
俺はどうにかこいつに越後に帰ってもらおうと必死に説明するのだがそれを遮るように奴が口を挟む。
「大丈夫だ「ハル」、既に上杉には説明ははしてある。それに上杉に何かあれば武田が動く手筈にはなっているから大丈夫だと言ってあるんだ、何も心配する必要はない」
それには及ばないと自信たっぷりで答えるのは武田四天王の黒幕「内藤昌豊」に対して俺は頭を抱えて告げる。
「お前らは北条と上杉の関係を忘れているぞ」
そう、現代においても上杉と北条は因縁浅からぬ関係になっており、先代同士は相打ちになるほどの戦をしていた間柄だ。
「そうだな……ここは二人には仲良くなってもらうしかないですね」
丸投げな答えに対して俺は「景虎」に確認する。
「ちなみに氏康との仲は?」
少し考える顔をした後に彼女はとびっきりの笑顔でこう答えた。
「今度、一騎討ちしましょう!と言える間柄だかしら!」
全く関係性が見えてこない。
「そうか…なら出会ってみないとわからないという事か………」
俺は疲れた表情をしながらゆっくりと足をすすめる。
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