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第一章 軍神が迫ってきて辛い
もはや日常になりつつある…
しおりを挟む「でさー!宇佐美の奴が「今日も行くのですか!ならば私を倒してからに!」って意気揚々と言うからさ。
ボコボコにしてここまできたのですよ、私と互角に戦えるのはハルくんしかいないのにね。まったく身の程を知ってもらいたいですよね!」
腕を絡めながら俺に同意を求めてくる彼女に俺はうなづきつつ周囲に助けを求める視線を向けるが誰も俺に視線を合わせることはしなかった。
この暴走女を止めるために本日の被害者に武田家きっての猛将である飯富虎昌が瞬殺されてしまっていたために誰も関わりたくないようなのだ。
「宇佐美殿も大変だなお前のような女の面倒を見なければならないとはな」
「それは失礼ですよ、私は唯ハルくんに会いたいだけなのにそれを止める宇佐美が悪いんですよ!」
頬を膨らませながら彼女は強く腕を握りしめてきた。
ミシミシと腕が軋む音が響く。
「わかった、わかった。俺が悪かったからそんなに腕に力を込めないでくれ折れてしまう」
「あっ、ごめん。でも宇佐美の味方をするハルくんがわるいのですからね」
「まったく、じゃあ今日は何しに来たんだ?遊ぶとは何して遊ぶんだ?」
握りしめられた腕をさすりながら俺は彼女の目的を聞く。
すると彼女の目が少し虚な瞳になりゆっくりと刀を半分ほど抜きながら。
「今日も模擬戦がしたくてね、相模の氏康君も義元君も相手にしてくれないから痺れを切らして二人の本拠地まで攻めに行ったらハルくんが何やら「新しい事」をしているからきっと楽しめるって聞いたから私ワクワクしながらきたんだよ」
「あいつら、俺を売りやがったな」
数日前に二人から「すまない」という返事がきた為にある程度は覚悟はしてはいたがそういう事だったとは俺は思いもしてはいなかった。
(「まぁ、話では機嫌が悪かったこいつの相手を二人がかりで止めていただけでもあいつらも化け物なんだがな」)
「で、実際のところどうなの?その新しい事ってのは私を倒せるくらいの自信はあるのかな?」
ズィっとこちらに顔を向けてくる彼女の目はすでに濁り始めており、「軍神」としての側面が色濃く出始めていた。
「あぁ、だがそんなに模擬戦ばかりでお前は楽しいのか?もっと買い物とか、服とか買いには行かなくていいのか?」
「そのあたりは大丈夫!直江達が色々としてくれているから、毎回必死になって服を買ってきているらしいって聞くから」
「直江殿……」
上杉四天王の一人である彼の苦労を思ってしまうと嘆くことしかできない、彼の苦労が報われる事を願うばかりである。
「で、それが直江殿が選んでもらった服なのか?」
謙信の服装はいつもの鎧姿であり、俺は少しばかり直江殿のセンスがないのかと思ったのだが。
「いや、これは私が選んだのですよ。どうせ鎧でもボロボロになるんだし、魔力で身体強化はするんですから、私服でも良いかなと思ったんですが……直江に必死に止められてしまいましてね」
「それは直江殿も必死で止めるわな、彼なりに必死に選んだ服を一回着ただけでボロボロにされてはたまらないからな」
「まぁ、そうですけど……私的にはあまり関係ないかなぁと思ってしまうのですね」
特に気にしてない感じで謙信は鼻歌を歌いながらいつもの模擬戦場へと向かう。
「なぁ、本当にお前が望んでいるデートがこれでいいのか?お前的には付き合っている事になっているんだろう俺らは」
改めて言うと少し恥ずかしくなり、少し頬を掻きながら俺は謙信を見つめる。
鎧姿であるのだが長い白い髪、そして透き通るような彼女の青い瞳を見てしまうとやはり美しい女性だと勘違いしてしまいそうになってしまう。
「私はそのつもりですよ、それに私にとっては誰かと戦うのは半ば趣味みたいなもんですからね。それに付き合ってもらっている時点で私は感謝しているんですよ」
振り向き様に彼女は目を細めながら笑みを浮かべてくる。しおらしく、少し恥ずかしそうに頬を染めながら後ろに腕を組みながら俺の目をみつめてくる。
「そうか、お前がそう言うのなら、それでいいのだがな」
不意に見せる女らしさに内心ドキッとしながら俺達は模擬戦場につくのであった。
「ここもかなり地形が変ったな」
着いて早々俺は、ため息混じりに周囲を見渡す。
今回で何十回目になるかわからない模擬戦になる、既にあちらこちらが陥没していたり地面が抉れたりしておりかつての姿とはかなりかけ離れてしまっている。
最初の頃は大量の人員を、割いてえぐれた地面などの整備をしていたのだが、彼女が頻繁に来るようになり、整備が追いつかなくなってしまった為に整備するのを諦めたのだ。
「いい加減直したら、どうですかね?なかなか味のある地形ではあるのですがそろそろ飽きてきましたので」
「簡単に言ってくれるな。ほぼ毎日きて模擬戦しているんだからな、整備する暇がないんだ。こっちだって毎回かなりの人員を割いて整備しているんだが…それでもかなりコストがかかってしまうから放置する事に決めたんだ」
「まぁ、そう言うのでしたら……仕方のない事ですし、諦めます」
「やけに今日は何も言わないんだな。いつもなら少しごねたりするじゃあねーか」
「むぅ、心外ですね。私をそんな風に見ていたとは。ですが直さないのであればそれもいいでしょう、なぜなら」
ニコっとこちらを見て微笑む彼女に俺は身構えてしまう。
ここ一年で彼女についてわかった事は悪意がない事それに殺意がない事がわかった。
だがそれは彼女基準での話であるためにタチが悪い。その為に彼女のこの時の笑顔は始まりの合図だと気づくのに数秒かかってしまう。
キィーン!と鉄同士がぶつかり火花が散りあたりの雑草を少し焦がす程に降り注ぐ。
「チィ!相変わらず読みにくいんだよ!おかげでお気に入りの服が少しだけ焦げてしまったじゃあないか!!」
相手の出方を見るために数メートル程距離をとる。いつも護身用に持っていた鉄扇で防ぐことができたが不意の一撃であっ為に魔力による保護をできなかった鉄扇は既にひしゃげていて開くことができなくなってしまっていた。
「流石、ハルくん。私の一撃を華麗に防ぐとは今回かなりの速さで斬ったつもりだったのですよ~」
「フン、そうかよ。だがその程度の小細工ではこの「信玄」には傷つける事はできないぞ」
嘘である、本人の名誉の為に説明するが実はかなり危なかったのである。たまたま護身用として持っていたおかげでなんとかなっているだけでさっきの一撃であっさり病院送りになっていたのだ。
現在、彼は冷や汗をかきながら、次はどう動くか必死に考えている状況なのだ。
「じゃあ!!、これはどう出るのかな!!」
簡単に安い挑発に乗った、彼女はすぐに距離を詰めてくる。
今度は信玄が視認できるレベルで彼女が持っている獲物がわかった。
(「刀か!?、なら!」)
全身を魔力で強化し、紙一重で彼女の一撃をかわす。
しかしその動きは既に見破られていた。既に新しい獲物が握られている。
「流石に甘かったか!」
すぐさま鎧の小手部分を召喚し、装着し防御魔術を三重に、かけ両腕で彼女の一撃を受け止める。
ズンっと重い一撃が両腕に伝わり受け止めきれずに吹き飛んでしまう。
地面に三回程バウンドしたところでやっと止まる。
腕が吹き飛ぶ事はなかったがそのかわり激しい打身程度までにダメージを、抑えることができた。
「ったく、本来なら死んで…いる!って!」
信玄は一息つけると思っていたが甘かったのだ。
既に彼女は薙刀と刀を持ち、勢いよくジャンプをしながら切り掛かっていたのだ。
だが信玄も冷静に魔力で作った、土の盾でなんとか一瞬だけ防ぎ、さらに後ろに下がりつつ、やっとの思いで鎧を全て装着する。
「う~ん、やっぱり鎧が出てしまうのか」
残念そうに彼女は薙刀を片手で回しながら近づいてくる。
「そりゃ、出さないと流石の俺でもお前相手にはキツすぎる」
実際はかなり追い込まれてしまっており、なんとか、打身程度ですんだ腕を治療している事を悟られないように時間稼ぎをしようと考える。
「だって、鎧を着られたゃうといつもみたいに決着がつかなくなると思ったから今回は速攻で決めようと思ったのになー」
「そんな理由であんな不意打ちみたいな事をしてくるなよ!今までで一番死ぬかと思ったからな!それにあれで勝ってもあんまり嬉しくないだろ?」
「確かにそれはありますね。でも先に興味が湧いてしまいましたので試したくなりまして」
少し考えるそぶりをしながら彼女は素直に答える。
「これでも私、まだ本気は出していないのですからね……今日は少しばかり本気でやってもいいでしょうかね」
妖艶な笑みを浮かべる。彼女の後ろが眩い光に包まれていく。
「チィ!、マジか「あの時以来」じゃあないか!」
距離を取る事はせずにこちらも魔力を全力で回しはじめさらに完全回避のスキルを重ねがけをして彼女の猛攻に耐えるため、全力で防御系のスキル魔術を使う。
だがここまでしても彼女の差は縮まらない精々耐え忍ぶことしかできない所詮時間稼ぎ用のでしかないからだ。
だが今回は少し違っている。いつまでも逃げ回る気はなかった。
「奥の手」、信玄というより武田家が持っている家宝の中でトップクラスの物がある。
「ここまでの力を出すとは思いもしなかったんだが……仕方ない。対謙信用に開発と改造を重ねたこの新しい「鎧」をお前に見せてやる!」
「ほぅ、まさか「人」ごときが我に勝とうと言うわけではないであろうな、それも「源氏」の大鎧如きで我を止めれると?」
対する彼女の反応は冷めていて口調も変わってしまっていた。
既にさっきまでの少女では無くなり「神」の一部がすでに降りてきており、彼女と人格が入れ替わってしまっていた。
「流石に見破られていたか…だがそいつはどうかな?お前がでてくると言う事はこっちにも勝機がまだあるってことだ」
さっきまで余裕がなかった表情とは違い不敵な笑みを浮かべる甲斐の虎に対して、人格が変った「謙信」は怪訝な表情で睨みつける。
「どう言う事だ童?我がお前に負けると言うのか?」
「あぁ、それはお前があいつではないからだ」
どういう意味なのか理解ができていない「謙信」は思考を放棄し神の一撃を信玄へと放つ。
そう一撃は大量の魔力を槍に見立てた一撃であり、彼の体は光に包まれてしまう。
普通ならこの一撃で体はおろか肉片でさえ残っていない。
「!?、馬鹿な……何故無事で済んでいるのだ」
今まで数多くの模擬戦をしていた中で「神」としての人格の謙信に焦りの表情があらわれる。
そこには、五体満足で堂々と立っている信玄がいたのだからだ。さらには赤い大鎧に装備が切り替わっており、軍配ににた両刃のの着いた斧剣を右手に、左手には刀を握っている。
「確かにお前は強い、だがその人格は多分造られたものであり、「毘沙門天」自身では無い。おそらく……何かの魔術によって神の魔力に人格をのせてそれを謙信に外付けしたのだろう。こいつ自身が適正があった」
「………」
「だが、圧倒的な力はあっても主人格と同じ戦闘経験は無い、ただゴリ押しするだけのワンパターンの戦闘だ。なら対処は簡単だしもっと単純に考えればいい」
「まさか……その領域に人の身でくるとは思ってもいなかったぞ」
何かに気づいたのか、「謙信」は信玄に対して厳しい視線を向ける。
「あぁ、ならこの「楯無」を元は「伝説」の「源氏の八領」ひとつであり、武田家においてある程度の信仰がある家宝だ。これだけの材料が揃っていたら少しばかり「神性」を外付けするのには簡単だ」
「つまり……長年の信仰心を材料して「即席の「神性付きの鎧を作った訳か」
「まぁ、そう言うことになるな、後は改良に改良を重ねてやっと実戦に使える段階まで漕ぎ着けることに成功したんだがまさかこんなに早く使うとは思いもしなかった」
説明をしながら彼はゆっくりと武器を構える、先ほどまでの余裕がない感じでは無く、ただ「謙信」を見つめながら彼は告げる。
「さぁ、第二ラウンドの始まりとそろそろ彼女を返してもらうとするか」
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