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とある女の子の話…抜け道 最終

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お使いを頼まれた幼子の様にサンの謹慎場所に直行する。
不貞腐れているかと思いきや、意外にもサンは勉強していた。
「何勉強してるの?」
邪魔をされて不機嫌そうに返事をされる。
「…亜鉄数哲学」
「…アっテツ…???」
「……ゴンフォワ紀おける炭元の基準をミュール値に置き換えて…」
「に、ニューるち」
「ミュール値!」
「それって、、、何?」
「バイスルよりも小さな単位を………いや、…もういい。」
「……………今、俺を馬鹿にしたでしょっ…」
「………………………してない。」
「…俺にはサンのそういうの分かるよっ!…っ!」
「してないったら、してないんだよ!!」
「…今度はウザって顔してる」
「…」
「…馬糞かける前と同じ表情…」
「………………続き、しに来たの?」

振り出しに戻る馬鹿…俺は自分がそのレッテルを己にペタンと貼り付けようとしてる。
サンは無表情だけど、両眉の眉尻が下がっている。
困っているのだ。
俺には分かる。
そして、サンの頭も完全にさっきのケンカから冷めている。
それも、自分の事の様に分かるのだ。
それを察した瞬間、右肩上がりを始めた怒りの沸点が氷水の様に下がる。
俺達は写鏡だ。
改めてそう自覚した。

「…俺もごめん。」
素直に謝罪の言葉が出る。
「…馬糞かけられて謝るなよ、俺の方が明らかにやりすぎだったし。」
「…まあ、、ね」
「ひとつ気になってんだけど」
「…?」
「秘密の抜け道の事。…他の誰かに言った?」
「母さんとか、、あの様子じゃ絶対探り入れてきたでしょ?」
「…うん、でも、言わなかったよ」
サンがホッとした表情をみせた。
「でも何かあるって感づいている…感じする」

流石、親子。
サンも勘が鋭い時は鋭い。
ズレてる時の方が圧倒的に多いけど。

「母さん、やたら鋭いときあるから。喧嘩よりもそっちが気になって仕方なかった」
「サンだって、ミイラ取りがミイラになった時も聞かれたんでしょ?戻った時さ」
「…誤魔化したよ。」
サンが勉強道具を片付け始めながら話を続ける。
「俺…勝手に外に出るのは危険だと分かった上でシイに父親と話してこいって背中推した。」
さっきのケンカで一番話さなきゃいけない部分をサンが語り出す。
「気持ちに落とし前つけなきゃ、シイ…前に進めないって思ったから」
「…」
「…逆に俺の場合も同じ。俺はシイの無事を自分の目で確認しなきゃ…学校に戻ってこんな小面倒な教科勉強してられない」
「…」
「…やったちゃった後で、色々文句いうのは無し、だよ」
「…………うん」
「…思う所あるなら、最初から俺に提案に乗らなきゃいい。…俺は強要しないよ」
「ごめん」
サンはニコリと笑っった。
一番気になった事言えてスッキリしたんだろう。

「じゃあ、この話はお終い!…こんな事になったから、抜け道は塞ごう。」
「…え」
「ケチついちゃったし」
「…それはいいけど、おばさんに白状してから閉じる、締めくくりが良くない?」
サンが半目になって俺を睨んだ。
「…嘘や、隠し事は嫌いよっって母さんに詰め寄られたんでしょ?」
嫌いよって部分まで、サンが母親の口調を真似して言った。
俺は思わず、吹き出して笑いそうになった。
いやいや、笑っている場合じゃない。
俺はおじさんもおばさんも大好きだ。
だから誠実に対応したい。
それを言うとシイは言った。
「本当の事ゲロったら、いつもの説教パターンで終わりだよ、意味なし!」
「…心が痛むよ」
「もう、抜け道は使いません!…遵守する事が誠意と思えばいいよ!」
あっけらかんと締め括られる。
その内、そうかも?って気持ちに、俺もなる。
そのタイミングで、腹のむしが鳴り出す。
「仕舞い、終い!…飯、ご飯!」
「…サン、その前に風呂入った方が良くない?」
「…馬糞臭い?」
「…うん」
「ずっと馬糞の隣に居たからね…」
「…不思議。直接付くよりも、同じ空間に居る方が臭うんだね」
お互いケラケラ笑って小屋を出る。

そして抜け道の事は綺麗サッパリ忘れてしまった。

これが良くない結果を生む要素になる。

俺とサンが無邪気にジャレ合うのはこの日が最後になる。

無邪気な最後の思い出は馬糞の臭いってのどうよって思う。
だけど、無性に戻りたいと願う。

戻って、素直に村の大人達に白状するんだ。
抜け道の事。

そうすれば、
俺達一族は変わらない生活をずっと過ごしてたのかもしれない。

変わらないと言う退屈に不満を言う贅沢。
出来なくなって初めてそれが本当の贅沢だと知った。
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