チャラ男は愛されたい

梅茶

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生徒会

ドキドキ♡初めての生徒会

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「お前らふざけてるのか?」


そう低い声で問いかけているのは生徒会顧問である鈴木 雅彦すずき まさひこ先生。センター分けされた前髪に黒縁の眼鏡、メガネに隠れているがたまに見える目の下のほくろが大人っぽい雰囲気の清潔感がある素敵な先生なのだが…

今では背後にどす黒いものを背負いながら俺と千歳以外の生徒会メンバーを正座させ般若と化している。はわ…会長と美緒先輩の正座とかレアすぎないか…?昼間の親衛隊の子達もこの光景を写真に撮って渡したら怒りを収めてくれないかな。そんな取り留めのないことを考えてしまうのは目の前の光景からの現実逃避だ。




食堂で茜くんが親衛隊に物申し、なんとも言えない空気の中誰もが動けないでいたのだが…生徒会の人たちが何事もなかったかのように茜くんを連れて上の階で昼食を取り始めたので、食堂に集まっていた人たちは自然に解散となった。俺と千歳や琉生くんも誘われたが、あんな出来事の後に彼らと昼食を共にする勇気はさすがにない。

その後は5時間目6時間目と普通に授業を受け、迎えてしまった放課後。本当ならこのまま帰りたいところだがそうもいかない。だって…!俺、親衛隊に真っ向から喧嘩売ったあの生徒会の会計になっちゃったし~~~!!はぁ、俺本当にやって行けるかなぁ。

…そんなふうに不安に思ってしまうのは、あの茜くんの演説?を聞いたあとから、千歳がどこかぼーっとしているからだ。これは茜くんの演説が効いちゃった説あるか?もしかして茜くんに惚れちゃった…とか?うぅ、やだよ~!!俺千歳がいるから生徒会入ったのに千歳が茜くんとばっか話すようになっちゃったらどうしよぉ~!!!

ちなみに茜くんは『あ、忘れてた!俺生徒会室行かなきゃなんだ!!』と教室にいる親衛隊ちゃんたちを無自覚に煽りながら、俺たちなんかには目もくれずダッシュで先に行ってしまった。その瞬間囁かれる茜くんや生徒会への不満のせいで俺は席をたちにくくなったよ。まあ遅刻してもいけないから行くしかないんだが。

俺のこともなんか言われるかなー?とか思って席を立つ時緊張していたら、2人組の可愛い男の子たちが駆け寄ってくる。多分生徒会メンバー誰かの親衛隊の子だろう。も、もしかして牽制とかか…?やっぱりこんなチャラいやつが生徒会に入ることへの文句とか…!?


「あっ、あの…!」
「く、久遠様!」
「わ!どうしたの~?」


来た!と思いながらも、なんだか緊張している様子だったので文句じゃないのか…?と少し背をかがめ、目線を合わせてから話を聞く。もじもじしていた2人だが、それで話しやすくなったのか顔を真っ赤にしながら手をぎゅっと握りしめ話し始めた。


「っ、あの、ぼ、僕達応援してます!!」
「絶対久遠様の方が優しいしかっこいいし素敵です!!だから負けないでください!!!!」
「ん???」


え???思わず思考停止する。あれ、俺なんか勝負してたっけ…??真剣に応援してくれていることはわかるのだが、あいにく心当たりが無さすぎる。本当にわからんのだがと首を傾げながら、実際聞いてみることにする。


「えーっと…なんのこと?」
「あっ、ご、ごめんなさい!あの、僕達実は食堂で久遠様と鬼十の会話を聞いてしまって…」
「あいつ、久遠様に自分から突っかかってて失礼すぎます!しかもコネで生徒会に入ったって…!!久遠様が副会長様に話しかけようとした時も遮るし!!」 
「で、でも他の生徒会の方も鬼十のこと気に入ってて…久遠様が気にされてしまってるんじゃないかと…いやっ、勝手に失礼でしたよね!ごめんなさい!!」
「うっ、そうですよね、ごめんなさい…僕たちが勝手に突っ走っちゃっただけなんです…久遠様に鬼十なんかのせいで気に病んで欲しくなくて…」


話しているうちに自信がなくなってきたのかしょぼしょぼしだした二人を見てプルプル震えてしまう……え~~!!感動なんだが…!!何この子達いい子すぎない?多分美緒先輩呼びを邪魔された時に拗ねたの見られたんだろうな、とか考えたら恥ずかしすぎるけど、普通に気にかけてくれたことが嬉しすぎる。顔が赤い気がするし表情筋が働かなくてへにゃっと笑ってしまったのを慌てて手で隠す。


「えーーちょっと待って嬉しい…そんなの気にしてくれてたの~?ふふ、なんだか恥ずかしいなぁ」
「はぅっ…!!」
「~ッやっぱり久遠様の方が素敵です!」
「えへ、ありがとぉ。んーでもごめんね、俺別に勝負するつもりは無いんだぁ。その代わり、美緒先輩とか緋月先輩とは仲良くなりたいなって思ってるから…良ければ応援してくれる?」


嬉しいことばっか言ってくれるとこ申し訳ないが、正直俺は茜くんと競う気は無いし出来れば関わりたくないのだ。でも、そうだなぁ…やっぱり生徒会入るからには先輩たちとは仲良くなりたいよなぁ

…ここで生徒会長と伊月先輩の名前を出さないのはご愛嬌である。だってあの2人怖いし…まあ自意識過剰かもだが初対面の相手にキスするやつとしようとしたやつだからね。こんな学園だし俺も警戒しとくに越したことはない。


「もちろんですぅぅ~!!!」
「く、久遠様なら絶対大丈夫です…!!」
「ほんと?嬉しいなぁ~」


うぅ、めっちゃ癒された…この学園可愛い子多すぎるだろ…!ちょっと自分の親衛隊とか欲しくなってきた。2人には改めてお礼を言って、さっきとは打って変わってルンルンで未だにぼーっとしてる千歳を連れて生徒会室に向かう。そして出迎えてくれたクソ豪華な生徒会室の扉に少し固まってしまった。そうだここ金持ちばっかの学園なんだった。ちょっと毒されてきてるな。

少し緊張しながらもコンコンとノックすると、中からどうぞと落ち着いた声が聞こえる。失礼しますと言って生徒会室に入ると、そこには真面目そうな雰囲気の先生と…正座している先輩たち、ついでに茜くんがいたのだ。そこで冒頭に戻るわけだ。




鈴木先生にこっちは気にしないで久遠と四季は少し待っていろとありがたいお言葉を頂いたので、やはりと言うべきかとても豪華な生徒会室に置かれてあった、これまた高級感溢れるソファに座る。やば、めっちゃふかふかなんだが…?

この感動を共有したくて、ダメ元で千歳に声をかけてみる。というかちょっとボーってしすぎじゃない?そろそろ拗ねそうなんだが。先生の邪魔にならないよう少し小声で話す。


「ねね、ちとせ!このソファめっちゃふかふかだよ!」
「………うん」
「それにこの生徒会室も超豪華なんだけど!あそこのツボとか高そう…え、落としたらどうしよ、ちょっと緊張してきた…」
「………うん」
「…今日なんの話しするんだろうね」
「………うん」
「……ちとせ聞いてる…?」
「………うん」
「…」


聞いてないじゃん!!!こっちを見もしない千歳にぷくぅと頬が膨らむのを感じながら、ぷいっとそっぽを向く。…いや、子供っぽいことしている自覚はあるのだが、だって伊月先輩たちに俺の方が先に仲良くなったとか言っといてさぁ~!!なに、今はもう興味ないっていうこと!?そりゃ拗ねますわ!

…と思ったが頬を膨らませたあたりから伊月先輩の視線が痛いので止める。俺は絶対そっち見ないからな。

お喋りも出来ないし生徒会室を動き回るのも怖いので、自重しておいたがついついお説教の内容を盗み聞きしてしまう。どうやら鈴木先生は食堂でのことを怒っているらしい。まあそれしかないよな。


「大体、放課後に会えるのにわざわざ人目が多い食堂で会うなんて何を考えているんだ?」
「だって気になるし~」
「別に放課後会うなら昼に会ってもいーじゃないですかぁ~」
「いいわけないから説教してるんだろう。おい、一ノ瀬は鬼十ばかり見てないできちんと聞け。初対面でキスは普通に犯罪だぞ頭湧いてるのか?」
「俺様は花嫁にキスしただけだが?」
「頭沸いてんだったな。三葉もなぜとめなかったんだ。」
「あぁ、止めようとはしたのですが…私の力不足です。すみません。」

「伊月と緋月、本当は?」
「はいはーい!美緒ちゃんが最初に会いに行きましょうって言いましたー」
「美緒ちゃん会長がキスしてる時も流石ですねぇとか言ってニコニコしてましたー」
「……」
「三葉、嘘はすぐバレるからな」


個性強すぎるだろ。思いがけず美緒先輩の悪い面を見てしまった。驚くことに生徒会は昼間のことを何も気にしていないどころかわざとあんな出来事を起こした感まである。えぇ…?親衛隊ちゃんたち嫌われすぎじゃない??親衛対象と仲悪いとかそんなことあるか…??


「はぁ…鬼十、お前は生徒会になるなら空気ぐらい読めるようになれ。今回はこいつらが焚き付けたのもあるが、あんな真っ向から言うやつがあるか。」
「うぐ、だって…!アイツらの言ってることおかしいだろ!獅音たちのためって言うなら、こいつらの行動を制限したり、制裁なんてやらないはずだろ!!」
「それでもだ。お前は外部生だから知らないだろうがアイツらは幼稚舎からここで育ってるんだ。」
「はっ、だからなんだよ。アイツらは自分のことしか考えてねぇんだよ」
「ふふ、そうですねぇ…いない方がまだいいかもしれませんね。」
「お前ら…鬼十を使って親衛隊解散させるつもりか…?いや、それにしてもやり方ってものがあるだろう。」

「俺、親衛隊もだけど、この学園の身分制度だっておかしいと思う…!だから、生徒会として変えていきたいんだ!!」
「フッ、流石俺の嫁だな」
「誰があなたのですか。…でも、やはり面白い方ですね」
「うーん…まぁ面白そーかな!」
「茜が言うなら賛成~!」


……え"?なんだか衝撃の事実を知ってしまった感があるんだが。え、え…?何その一大プロジェクトみたいな…生徒会みんなが賛成な感じなの??聞いてないが??ポカーンとしていたらこちらにも矛先が向く。


「おい、千歳はどう思うんだ?」
「……親衛隊、めんどくさい…」


生徒会長に聞かれていつの間に正気に戻ったのかポソりと答える千歳。
お、お、お前ーー!!!俺が話しかけた時は無視に限りなく近いことしてきたくせに、会長に話しかけられたら話すんだ!?しかも親衛隊ダメなんかーーい!!

すると、茜くんが今気づいたかのように千歳に近づいていく。あっ、待って待って千歳が茜くんに話しかけて答えたらちょっとショックかも…でも知ってるこれ答えるんでしょ~!!??


「あ、そういえば、お前の名前聞いてなかったよな?」
「………俺?」
「おう!」
「………四季、千歳…」
「千歳って言うのか!」
「……うん」
「もしかして…そんな喋りたくないのか?なら別に無理して喋らなくていいぞ!何となくわかるしな!」
「…!」


うっ、うっうぅ~…ちとせぇ…!!お前ってやつは…お前って奴はぁ!!!生徒会に入るよう俺を誑かしといてもう別の男!?なんてだいぶこの学園に染まりきったことを考えてしまう。ショックに打ちひしがれていたところに、会長の鋭い眼光がこちらに向く。


「遥、お前は親衛隊についてどう思う?」


まるで見極めるかのようなその強い眼差しに思わず緊張で喉がなる。

あ"っっっ何も考えてなかった…!!!!
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