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入学式編
詐欺だろこんなん
しおりを挟むとんでもねーとこに入学しちゃってたわ。クラスに入った途端感じる視線は、おそらく先程の事件が起こる前の俺ならこんな舐めた生徒だからですよねすみませんと思っていたことだろう。しかし、あの体験を通した今ならわかる。これ俺に惚れてんだ。
その証拠に手前の椅子に座っていた、先程出会ったようなチワワ風の男の子におはよぉ~とニコッと笑って手を振ると顔を真っ赤にして控えめに振り返してくれた。
ちなみに余波に当たったのかその周辺のクラスメートも真っ赤になってキャーキャー言ってた。おいそこの大男前のめりになるんじゃない。怖くなって黒板に書かれた自分の席までスタスタ歩く。
嘘みたいだろ…?そんなみんなが性のあり方に寛容な学校存在する…???たしかに今はジェンダーの問題なんかが身近な世の中だよ???でもこの視線は…なんていうか、欲を孕んでる気がする…!!!純粋じゃないです!!!!
やばいよ~~このままじゃ俺の純潔が危ういよ~~!!俺はまだ童貞処女でいたいんだ…!!というかここはいいとこのお坊ちゃんが集まる名門校なんじゃないの?詐欺だろこんなん。チャラ男の俺の笑顔でキャーキャー言ったり前のめりになっちゃうヤツらが日本の将来担っちゃっていいのか???
うぅ…!これじゃ誰にも話しかけれないじゃん…!友達作る以前の問題じゃん…!こういうのは隣の席の子に話しかけて仲良くなるのが定番なのに…!!そう思って少し眉を下げながらチラッと隣の席を見てみる。
…………え、美し………
あまりの美男子ぶりに言葉を無くしてしまった。眠たげな真っ黒な瞳をバッサバサのまつ毛が覆い、髪は短く切られ濡れているかのように艶がある。ここまで聞いたら女らしく聞こえるかもしれないが眠たげながらも目は切れ長で、背も俺より高そうだし、なんだかガッシリ?ってほどでは無いが筋肉がついてて男らしさもある。完璧か…??俺の語彙力ではこんなことしか言えないが、なんというかオーラがやばい。
そしてこれが一番重要な事だが、この男は俺が隣に座っても何も反応しなかったし、なんなら俺同様みんなから視線を向けられてる。つまりこいつは見られる側の人間なわけだ!!わかった!イケメンはイケメンと友達になれってことか!!
こういうのは勢いが大事。善は急げだ。うし!と頭の中で気合を入れて美男子に話しかける。
「初めまして~俺久遠 遥って言うんだぁ。席も隣だし仲良くしてね~」
「……………俺は四条 千歳…よろしく遥…」
「! うん!よろしくね~~!!」
ふ、普通に喋れた…!!正直心臓バクバクだったし最初返してくれなかった時はもう終わったと思ったが千歳は良い奴だった。こんなチャラチャラしてる奴に話しかけられて普通に挨拶してくれるなんて…!!
話せてニコニコしてたら教室から「きゃー!睡蓮の君が話されてる!?」「イケメンとイケメンの絡み最高…」「睡蓮の君今日も美しい…」なんて声が聞こえてくる。
……睡蓮の君…?もしかして千歳のことか?
「ちとせって睡蓮の君って呼ばれてるの??」
「…………?(コクッ」
「す、すごいねぇ~」
んん、間延びする感じで話してるから千歳の名前呼びにくいな…てかまじか…なんか確かにこういう、異名?っていうのは金持ち学校って感じがするかもしれん。本人も受け入れてるし。はぁーそれにしても睡蓮の君か~たしかに千歳の雰囲気に合ってる気も…せんことがないか…?と感心してたら千歳から不思議そうに話しかけられる。
「……もしかして、遥は外部から来たの?」
「えっ、そうだよぉ~!」
「……あぁ、だから…多分遥もこんな感じの名前、親衛隊の子に付けられるよ」
親衛隊の子????なんの親衛隊???普通の学校生活ではまず出ない単語にハテナが出まくる。あまりにもハテナを出していたからか、千歳が俺がとても聞きたかったことを全て教えてくれた。
曰く、俺の予想通りというかこの学校では同性愛が当たり前で、顔の良い奴は自然と恋愛対象になりやすく、無理やりな性行為を防ぐため親衛隊がルールを作り破ったものを制裁するらしい。
他にも無駄に権力を持っている子供だらけであるため独自のルールやしきたりがあり、大人はあまり関与できなかったり…実質的なこの学校の権力は生徒会が持っており、それは人気投票で選ばれるとか…風紀委員が校則違反などをした生徒を処罰できる権利を持っているとか……。
…………いや、怖すぎか???
他にもいろいろあるらしいが、正直頭がついて行かなかったので止めてもらった。
ガチでとんでもねー学校じゃねぇか。なに???親衛隊持ちの人と勝手に話したら制裁されるとか…ていうか生徒が絶大な権力持ってるとかいやそれ本当に高校生に与えていいの??トップがあれなら無法地帯にだってなりうるくね????
はっ!!ってか…
「えっ、ちとせって親衛隊がいるってことだよね!??お、俺話しかけたらダメだったんじゃない…!?」
「………ん、遥は多分大丈夫…」
えぇ……???適当か…??しかし今は千歳の言うことを信じるしかないというか信じたいので、その事は気にしないことにしておく。そうやって千歳と話していたら、教室の扉がガラッと空く。
「お~いお前ら席に着け~。先生の手を煩わせるなよ~」
なんて割と教師失格なことを言いながらホストか?と思ってしまうような先生が入ってくる。いや、本当にホストか…???スーツは着崩し腕には高そうな腕時計、金と茶色の中間ぐらいの色で染められ、前髪の半分をオールバックにしている髪型と気怠げな雰囲気が合わさり、誰もがいやホストかと思ってしまう見た目だ。というか顔がいいな…
イケメンだったら許されるのかクラスのチワワ系男子がキャーキャー喜んでいた。そしてそれを目線で黙らせるホスト先生。やばい、濃すぎるだろこの学校。
「あー俺はこのクラスの担任を務める睦月 翔だ。と言ってもこのクラスを持つのは最初の定期試験までだけどな。」
「え~~!!!」「そんなぁ!!」「ずっと一緒にいてほしぃ~!!」
「チッ、うっせぇぞ~チワワ共。俺は手のかかるガキが嫌いなんだ。ほら、わかったならさっさと廊下並べ。」
いや口悪いな。しかし俺もこの学園のことが少しわかってきた気がする。顔面偏差値が重要な子の学校じゃこんなに先生の口が悪かろうとイケメンだったら何をしても許されるんだろう。チワワ風な男の子たちはまた色気が~とか何とか言って騒いでる。
………俺この学校でやって行けるかな……。
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