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第二章 魔物討伐
13(レオナード視点)
しおりを挟むリオをマリーに預け、再び森に入る。
騎士団が到着し、戦いに参戦したことで悪化していた戦況が良好になりつつある。
もう日も暮れて、夜が来ることを知らせてきた。
夜は魔物が有利になる。
一度、撤退命令を出して、町に戻った。
交代制で門へ襲ってくる魔物に対処しながら、朝日が昇るのを待った。
***
戦いの始めと比べて、魔物の勢いが減っている。
このままいけば、長期戦に持ち込まれずに勝つことが出来るだろう。
日が上り、そろそろ昼を迎える頃、それはやって来た。
グウォォォォォォォ!!!
空気を切り裂くような雄叫びが鼓膜を揺らす。
「っ! なんだ!!」
あまり近くない位置にいるにも関わらず感じる圧倒的存在感。
日の光を反射させる大きな黒塗りの鱗に覆われた巨体。ギョロリと辺りを見回す縦長の赤い瞳孔。長く、少し動く度に揺れて地面を這う尾。
龍の中でも強者と呼ばれる五指の一体、黒龍が佇んでいた。
五指――それはこの世界の龍を表している。
炎と熱を司る、赤龍。
水と氷雪を司る青龍。
雷と天候を司る黄龍。
植物と精神を司る緑龍。
そしてチュアルに顕現した、地と重力を司る黒龍。
五指である龍は、神の御遣いという存在として扱われている。戦うなど考えるだけでも頭がおかしいと言われるぐらい超絶な存在。
人前に出てくることは、ほぼないに近いはずだ。それこそ御伽噺の中のような存在なのだから。
そんなことを考えながら、黒龍が顕現した場所へ向かう。他の奴らから見たら滑稽だろう。五指の一体に挑むなど自殺行為どころの話ではない。
思わず自嘲する。そんなこと百も承知だ。
近づくに連れ、威圧感で関節の動きが鈍くなる。まるでそこだけ重力が変わっているかのように。
今まで戦ってきた魔物とは比べものにならないくらいの威圧感。いや、まあいい。
顕現してから、ほとんど動かなかった黒龍がチュアルを見つめると歩き出した。
鋭く長い尾で何本もの木々を薙ぎ倒しながら、ゆっくりとした足取りで歩き始める。一歩進む事に地面が大きく揺れて、それが一層どれだけ大きな図体なのかを教えてくるようだった。
黒龍の周辺にいた冒険者は既に避難しており、黒龍による被害者はまだいないと考えられる。
止まり、ギョロリと辺りを見回していた目と一瞬視線が交わった。
たったそれだけで、背中に冷たいものが走る感覚があり、額から汗が滲み出す。
場所がバレたことに焦りながら身構えるが、一向に襲ってくる気配はない。
チュアルに顔を向けると、瞳をギョロギョロと動かし、何かを探しているような雰囲気があった。
どういうことだ? 一体何を――
『月の精霊か』
頭に直接響き渡った声。すぐに黒龍の声だと悟る。
龍の固有スキル、[テレパシー]だ。
龍が神の御遣いと呼ばれる理由の一つに固有スキル持ちというものが含まれている。固有スキルは種族スキルとも言う。
固有スキルと普通のスキルは違うもので、どちらも持っていることもある。
日と月の精霊もテレパシーのように話すが、全く関係はない。精霊は存在そのものが魔力。
龍のようにスキルを持つことはないからだ。
思考を切り替え、黒龍が言った言葉について考える。
月の精霊…まさか、リオ――
『ほう?』
その声と共に重力が増し、身動きがとれなくなる。無理に抗おうとし、ピキッと骨から音が聞こえ激痛に襲われた。
チッ。あばらにヒビが入ったか…!
『これは興味深い。加護と祝福持ちか』
オレを見つめ、黒龍が呟く。
加護と祝福? 全く心当たりがない。
フッと軽くなった重力に顔を上げ、黒龍を見上げる。
黒龍はもう一度チュアルを見つめると、もう用はないばかりに翼を大きく広げ飛び去っていった。
▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪
黒龍は近くに人を来るのを防ぐために重力を周囲にかけていました。
近くまで進んで骨折で済むのはレオナードが強いからですね。本人は近づいただけで傷を負ったことに対して、ショックを受けているようですが…
更新が今まで以上に遅れてしまい、すみません。m(_ _)m
ゆっくりですが、更新していきます!
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