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第十二話[語彙力が消失した老冒険者とやばそうな領主君]
しおりを挟む何で衛兵が出てくんだ? 俺なんかしたっけか? ……あれ? 衛兵達、武器持ってねぇぞ。それに害意も殺気もねぇし、表情は……なんで嬉しそうな表情してんだ? 本当にわからん……。
お? 凄い仕事できますって雰囲気の執事が出て来たな。んー、強いな。この執事さん。相当歳を取ってるが、もう少しで上位種になれるんじゃねぇか? ……闘いてぇ!
「闘神、フェシオン・フォルツァ様一行とお見受けいたします」
「あ、ああ。俺がフェシオンだが……」
「領主のエリス・スィレイエ・ウォールド伯爵様が、領主館にフォルツァ様が来た場合は連れてくるように、との事ですので、ご同行をお願いします」
「お、おう。領主君に会うんだよな?」
「はい。ウォールド伯爵様はフォルツァ様に大変会いたがっておりますので」
「了解。じゃ、行こうか」
「僕も一緒に行っていいのかい?」
「ええ、構いません。それでは行きましょう」
いやー、衛兵達が門からぞろぞろと出てくるもんだから、何かやらかしたのかと思ったが何もなくてよかったぜ……。いやホント。しっかし、俺が領主館に来ることがなんで分かった……、あ。
俺がこの街に来てるのバレバレじゃねぇか! ちょっと考えれば分かったわ! 冒険者ギルドで色々やったし、そもそも街に入る時に身分確認で衛兵にギルカを提示したしな! バレない方がおかしいわ!
「あ、フォルツァ様。一つだけお知らせしなければいけない事があります」
「なんだ?」
「……ウォールド伯爵様は相当キャラが濃いので、お気お付けを」
「……マジで?」
「はい。やばいです。ウォールド伯爵様がご誕生されてからずっと仕えておりますが、未だに引いてしまう時があります」
「マジか……」
「マジ、でございます。……あ、自己紹介をしていませんでしたね」
「……あれ? 自己紹介されてなかったのか?」
「ええ、してませんでした」
「マジか……」
「マジでございます」
「……シオンの語彙力が無くなってる」
えー? マジでしてなかったのか。完全に自己紹介された気でいたぞ……。歳か? 歳なのか!? ……いや、よく考えろ。俺。俺の肉体年齢は六十八で止まっているハズだ。ということは……精神か! 俺が歳のせいだと思っているからダメなのか!
……そういや、俺って元々忘れっぽかったわ。何だ。ただの杞憂か。よかった。
「では、自己紹介を。私はデルトリュース・ウェルディノスと申します。気軽にリュースとでもお呼びください。よろしくお願いします。フォルツァ様」
「おう。よろしくな。んー、俺の自己紹介は必要ないだろうし……、あ。パルとジレンは自己紹介しといた方がいいな」
「……ん。名前、パルフェット・フォルツァ。よろしく」
「シオンさんの旅仲間で、ジレンです。よろしくお願いしますね。リュースさん」
「はい。よろしくお願いしますね。ジレン様、フォルツァ様……? これではどちらを呼んでいるのか分かりませんね」」
「ん、確かに。パルフェットでいい」
「畏まりました」
リュースさん、めっちゃいい人じゃね? パルの敬語の欠片もねぇ無遠慮な喋り方に怒るどころか、俺と同じ、孫を見守る年寄り目線だし、ノリが良いし、まあまあ強いっぽいし……。こんなに良い人が執事として仕えてる領主君って何者だよ……。
今領主君について分かってるのが、孤児に優しく、冒険者が好きで、領主君が産まれた時から執事として仕えてるリュースさんでも、たまに引くくらいキャラが濃い。……どんな奴か全然想像できねぇ! なんだよ! 領主君は人の良い変人か!? この情報だけだとそうとしか考えられねぇぞ!?
「フォルツァ様?」
「……シオン?」
「んあ? あー、なんだ?」
「私はこれからウォールド伯爵様を呼んできますので、この部屋で少しお待ちください」
「……え? 何時館の中に入ったんだ?」
「先ほどですが……」
「マジ?」
「マジでございます」
「マジか……」
「……シオン、大丈夫?」
「大丈夫だと思うが、心配になってきたわ……」
え? マジでいつの間に領主館の中に入ったんだ? 全く記憶がないんだが……。本当に心配になって来たぞ……。肉体年齢は固定されているから記憶力とかのせいじゃないだろうし……。あ、あれか。思考に集中しすぎたせいか! なんだ。歳のせいじゃないのか。よかった……。
「いや、大丈夫だな。思考に集中しすぎてたみたいだ。すまんな」
「いえ、構いませんよ。時間を忘れて思考に没頭できるというのはとても良いことですから。では、ウォールド伯爵様を呼んできますね」
「おう」
んー、中々に良い部屋だな。孤児院と同じで、下品にならない程度の装飾。質のいい、柔らかいソファ。孤児院にあった椅子と同じ製作者だな? ……領主君に製作者を紹介してもらうか。もし、紹介してもらって、作ってもらえる事になったら俺の家にある椅子と総とっかえだな。
コンコンコンッ
「フェシオン様方、ウォールド伯爵様をお連れしました」
「あいよー」
「失礼します」
さてさて? 領主君はどんな人なの……か、な?
「あらあら、待たせちゃってごめんねぇ? ワタシが領主のエリス・スィレイエ・ウォールドよ。よろしくね? 闘神フォルツァ、サ・マ」
おう……。
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