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第十話[遅いジレンとまたまた遭遇]
しおりを挟むふーむ、後で話があるとは言ったが、何時話すかねぇ? この後の予定は、領主君の所に行って俺の技術を見せるという名目で、パルにいい所を見せるチャンスを作るために交渉して……。適当に色々やったら宿とかの紹介を頼んでー……。お、宿に戻ったら時間があるじゃねぇか。もう数時間もすれば夜更けだしな。ちょうどいい。その時に話すとしようか。
「馬鹿弟子、また夜に来る。それまで待っとけ。あ、待ってる間は好きに飲み食いしといていいぞ。代金は俺が持つ」
「なんだ? やけに太っ腹じゃねぇか。……了解、真面目な話だな。待ってるから、なるべく早くしてくれよ」
「おう。なるべく、な」
「……まあ、いくらでも食ってもいいけどな」
馬鹿弟子が、高いやつを鱈腹食うつもりだなぁ? 別に気にしないけどよ。……しっかし、馬鹿弟子、いなくなる前に比べると色々と成長してんなぁ。身長はー、百五十前後か? ……あれ? 縮んでないか? よくよくみれば、他にも色々と小さくなってるな? なんでだ……あー。習得したのか、身体変化魔術を。
……身体を自由自在に変化できる身体変化魔術なら、そりゃ探しても見つからねぇわけだ。弟子時代に適正はあるとは伝えてたが、ホントに習得するとはなぁ。それに、魔術を使えるってこたぁ、上位種族に至ったってわけか。……こりゃ、夜話す内容が増えたな。
っと、そろそろパルの視線が痛いから行くとするかー。
「さてさて、冒険者登録も終わった事だし、領主君の所に突撃するとしようか? パル」
「ん。何を話すか知らないけど、行く」
「お、おう。そうしてくれ。……それにしても、ジレンのやつ遅いなぁ。ジレンがいねぇと領主君の館が何処にるか分からねぇんだが……」
「ん。遅い。戻ったら説教」
「いや、やめてあげようぜ……?」
……ホントに遅いな? パルに色々と説明してる間に来てると思ったんだが……、何かあったのか? いや、あいつに限ってそれはねぇな。もしもの時のための方法も教えてるし……。んー、もう少し待ってこなかったら探しに行くか? んあー……。
「シオンさーん。パルさーん」
「お、やっときたか」
「遅い」
「いやー、すみません。知り合いとばったり会ってついつい話し込んでしまいました。冒険者登録は……、終わったみたいですね」
「おう。色々と説明してたから、知り合いと話し込んでてよかったな。話し込んでなきゃ、今頃待たされすぎて疲れてたかもしれねぇぞ」
「……そんなにですか。それは、はい。……話し込んでて良かったです」
「だろう?」
「ん、シオン。ジレン。領主のとこ、行く」
「お、そうだったな。そんじゃジレン。道案内頼んだぜ」
「はいはい。分かりましたよー。まあ、案内する程遠くないですし、凄い分かりやすいんですけどね?」
「え? マジ?」
「マジです。冒険者ギルドの前が大通りになっているでしょう? その道を左に進めば領主館につきますよ?」
「……マジか」
案内いらねぇじゃん……。てか、もっと早くに言えよ! 早く言ってくれてれば今頃領主君の所に……ついてねぇわ。絶対、今と同じ状況だな。この会話がないくらいしか違いがなない気がするぞ。……まあいいや。道が分かった事だし、さっさと領主君の所にいくかー。お、出店とか露店があったはずだし、さっさと行くのはやめて食べ歩きとかしながらのんびり行くか?
「パル。確か、大通りなら食べ歩ける美味い食い物を売ってる店があるはずだ。急いで行くのはやめて、のんびり食べ歩きでもしながら領主君の所に行かないか? あ、食い物を以外でもいいぞ」
「……ん。そうする」
「よし、そうと決まれば行くかー。あ、ジレンも食いたいのあったら遠慮せずに言えよ? 買ってやるぞ?」
「分かりました。遠慮なく言いますね」
「お、おう」
ジレン、返事はしたけど即答かよ。いや、遠慮せずに言えって言ったのは俺だけどさ。少しくらい間が空いてから言うと思うだろ? それが即答って……、ジレンはやっぱ面白れぇわ! ……よし、二百年くらいなら遊び倒しても使いきれない程の金があるし、心配することはねぇな。好きな物を好きなだけ買ってやるか!
「よーし、パル。何が欲しい?」
「ん……、剣?」
「剣か……。なんで欲しいと思ったんだ?」
「……使ってみたいから?」
「使ってみたいから、か」
「……だめ?」
「ん? いや、いいぞ。初めて使うし、壊してもいいやつを買うか。上手くなってきたら昔俺が使ってた剣をやるよ」
「……いいの?」
「おう。素手で戦う方が得意だって事に気付いてからずっと使ってねぇからな」
「……ん。ありがとう」
戦闘方法が確立できるまでは、使いたい武器を使わせた方がいいからな。まあ、パルの才能だと素手の方がいいとは思うが、他の武器の使い方を知ってて損はないし……。もしかしたら、新しい技を生み出すかもしれねぇからな。色々使わせた方が得だろ。ハーフエルフの寿命は長いしな。まあ、エルフの血の濃さで差が出来るんだが、エルフの血が濃いらしいって言ってたから、最低でも百五十年以上は生きるだろうし……。うむ。やっぱ色々使わせて体験させた方が得だな。
「さてさて? 剣が欲しいとなると、武器屋か鍛冶屋を探さなきゃならんな」
「……ん。少し探して見つからなかったら今度買う」
「ん? パルがそれでいいならそれでいいけどよ……。ってか、ジレンの奴どこいった?」
「ん。ホント、どこ行った?」
「んー、まあ、そのうち戻ってくるだろ。んじゃ、いい感じの鍛冶屋か武器屋探すかー」
「シオンさーん」
「ジレン、どこいって……たんだ……よ?」
ジレンの隣にいる男は……、まさか……!
「あ、それはですね。話し込んでいた知り合いがシオンさんに会いたいって言ってたのを思い出して、迎えに行ってました」
「……」
「「シオン(さん)?」」
「やぁ。久しぶりだね」
「おお! 久しぶりだな! まさか、ジレンの知り合いがエルセスだとはなぁ」
「それはこっちのセリフだよ。で、どうしてこの街に来てたんだい? あ、僕は領主に呼ばれてね」
「ん? 娘と旅をしてて?」
「娘? ……ああ、隣にいるハーフエルフのお嬢さんか」
「おう。可愛いだろ?」
「ですねぇ」
「あ、そうだ。お前の弟に頼んで娘の剣を作ってくれねぇか?」
「剣かい? いいよ。後で連絡しておくよ」
「助かる。それでよ……」
いやー、まさかこいつとここで会うなんてなぁ。こいつの弟なら安心してパルの剣を作ってもらえるし、運がいいな。ってか、こいつを呼べるって領主君実はすごいやつなのか? まあ、凄いやつでもなんでもいいけどよ。お、いい機会だし、こいつも旅について来てもらって、パルに魔法を教えてもらうか? ……よし、そうしよう。我ながら名案だな。
「……盛り上がってる」
「ですねぇ……」
「シオン」
「……でよ。んお? なんだー? パル」
「その人誰?」」
「ん? ああ、こいつの事か。こいつは昔からの戦友で、俺と同じSランク冒険者だ」
「どうも、お嬢さん。僕の名前はエルセス・セウィルド。種族はエルフ。二つ名は大賢者です。よろしくね」
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