老冒険者、娘兼弟子を育てる

流柳

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第五話[娘になってくれないか?]

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 さて、さてさて、パルフェットちゃんを連れてきてくれるのはいいんだが……、パルフェットちゃんと何から話すとか考えてなかった! どうする。どう話せばいいんだ? 単刀直入に行くか? いや、まずは自己紹介からか? どうするどうする。自己紹介をした後に少し雑談してから養子の事を話すか? むむむ……、よし! 最後の案で行こう。

 コンコンッ。
「フェシオン様、連れてきましたよ」

 おお!? 超ギリギリじゃねぇか! 早く決めれてよかった……。

「おう。さっきぶりだな。嬢ちゃ、パルフェットちゃん」
「……名前、言った?」
「いいや? ルウェアさんから聞いたんだが、いきなり呼ばれるのは嫌だったか?」
「大丈夫、良い」
「へいへい」

 いやー、やっぱり可愛いなぁ! 容姿はもちろんだが、何より喋り方が可愛い。言葉足らずだが、静かに要点だけ言う感じがいいな! うんうん、是が非でも娘にしたい。あたりまえだが、無理強いするのはダメだ。俺の娘になるメリットをどれだけ伝えられるかにかかっているぞ。頑張れ、俺。

「あ、あの。フェシオン様……?」
「ん? どうした?」
「パルフェットちゃんが言ってること、分かったんですか……?」
「おう。多少言葉足らずだが、俺の友達程じゃねぇからな。これくらいならまだ楽だぜ」
「そ、そうなんですか……」

 あいつはなぁ……。言葉足らずどころか喋んねぇし、目で察しろって訴えかけてくるからなぁ……。あれに慣れちまったら、多少言葉足らない程度なら普通に喋ってるのと変わんねぇだよな。しっかし、今だけはあいつに感謝するしかねぇな。あいつと喋るのに慣れてなかったら、パルフェットちゃんの言ってることを理解できなかったかもしれねぇ。

「っと、パルフェットちゃん。まずは自己紹介だ。どっちからする?」
「私からでいい」
「へいへい」
「……パルフェット・フォルツァ。13。ハーフエルフ。パルでいい。よろしく」
「パルね、了解。んじゃ、俺の番だな。名はフェシオン・フォルツァ。歳はー……、確か198だ。俺の事はシオンでいいぜ。よろしくな」
「……フェシオン・フォルツァ? 英雄?」
「おう。あまり英雄って呼ばれるのは好きじゃないけどな。おっと、敬称はつけなくていいぞ?」
「元からつける気はない。けど、わかった。それで私に用事って何?」

 元からつける気はない、か。そういう無遠慮なとこも可愛いな! ……いかんいかん。まだ親になってすらいないのに親馬鹿になっている気がするぞ? 敬称つけない事は叱るべきだろう。俺。でもなぁ……、俺が親になったら誰にも文句は言わせねぇし、親になってから追々教えればいいか!

「あー、単刀直入に言っていいか?」
「いい」
「……俺の娘になってくれないか?」
「いいよ」
「……え? 即答? いいの?」
「うん、いい」

 え? マジ? 何で即答? いやまあ、俺の娘になってくれるんだから、めっちゃ嬉しいけどさ? こう、なんだ。頑張って俺の娘になるメリットとか、説得の方法とか色々考えてたんだぜ? なんだろう……。こんな呆気なくていいのだろうか……。まあいいや、パルが良いって言ってんだからいいんだろう。うん。あ、即答の理由は聞いとくか。

「えっと、即答の理由を教えてくれねぇか? 即答されるのは予想外だったからよ」
「わかった。でも、理由は単純。私が冒険者になりたいから。旅をしたかったから。それだけ」
「……え? それだけ?」
「うん。ダメ?」
「いや、いいけどよ。こう、孤児院から離れるのが寂しいとか、そういういのはないのか?」
「ある。けど、シオンが私の新しい家族になってくれる。だから、寂しけど悲しくはない」
「嬉しい事言ってくれるじゃねぇか! よし、パルに色んなもん見せてやる! 俺の持っている全てを使ってな!」
「ん、楽しみ」

 フハハハハ! 楽しくなってきたぞ! よしよし、家に帰ってあいつらにパルの事を伝えて旅に出たら何を見せるか。……おっ、そうだ。あいつに頼んで城の中を見せてもらうか? いや、魔境にある絶景もいいな。ドラゴンを見せてやるのもいい。ついでにドラゴンステーキを食わせるのもいいかもしれんな! くぅッ! ワクワクが止まらん!

「あ、あの。フェシオン様?」
「む? なんだ? ルフェアさん」
「弟子にする事は伝えなくていいんですか?」
「あ、忘れてたわ。ありがとな」
「い、いえ。大事な事ですから」

 いかんいかん。ワクワクしすぎて弟子の事を言い忘れるとこだったぜ。あっぶねぇ。ルフェアさんに言われなきゃ絶対忘れたままだったな。感謝しねぇと。……ってか俺、今日心の中で感謝しまくってねぇか? してるよな? ……まあ、だからといって何かあるとかじゃねぇけどな!

「パル。大事な話を忘れてたぜ」
「ん、なに?」
「パルには俺の弟子になってもらうんだが、いいか?」
「いいよ。魔獣と戦ってみたいし」
「オッケー。辛くない程度に厳しくいくから、覚悟しとけよ?」
「……ん、わかった」
「じゃ、シスターさん俺の要件は完全に終わったし、明日にはパルを連れて俺の家に連れ帰りたいんだが、いいか?」
「ええ、構いません。ですが、早朝に出てくださいね。子供たちが起きている時間帯だと、絶対にうるさいので」
「ルフェアさん……、結構辛辣なんだな」
「そうですか?」

「自覚無し」
「……パル。お前も結構辛辣なんだな」




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