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本編
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「座ってくれ」
ラッドに席を薦められノヴァはラッドと向かい合うようにソファに座った。
「早速で悪いが、この魔石を握ってくれ」
ラッドはポケットから霞んだ青色に光る魔石のようなものを取り出し机に置き、ノヴァの方へ滑らせた。
何かはわからないが、ノヴァは言われた通りにすることにした。
「わかりました」
ノヴァは少し警戒しながらもその魔石を手に取り、軽く握った。
「…っ!?」
魔石を握って数秒、何も起こらないと油断していたが、いきなり体の中で何かが動くのを感じた。石に引き寄せられるような不思議な感覚だった。
似た感覚をどこかで…
あぁ、そうだ。魔法をかけられたときに感じたやつだ。
「おぉ、なるほどな。そりゃ魔法使うわな」
「え?」
石を不思議だなとジッと見つめていれば、ラッドから何故か納得した声が聞こえてノヴァは顔を上げた。
「悪いな。そいつは触ると魔法が解ける魔石だ。」
「はぁ、、?どういう…」
ん?、てことは今って、、、顔バレてるよな?!
未だ混乱したままだが、魔法が解けたのならそれしかないよなと焦ってノヴァは自分の顔に手を当てた。
「そう、今君の本当の顔見えてる」
「えっ、この魔石そんな効果が?…それより、なんでそんなことを…?」
ノヴァは驚きよりも困惑していた。第二皇子は顔も名前も皇宮の中の者でも一部しか知られていないので、身バレすることはないに等しいだろうが、念には念をだ。ノヴァの心臓は変に音を立てていた。
「不法入国対策だ。奴らは大体、犯罪したが運よく逃げられて捕まえられず、帝国全体で指名手配になっている要注意人物が多い。だから奴らは、仕事を受けられるようになり、身分証にもなる商業ギルドカードを作るろうとする。つまり、不法入国した奴らは一番最初に容姿や名前を変えてギルドカードを作ろうとするってわけだ。
それを見分けるための物が、あの手をかざした紫色になる石ね。そう言う奴は大抵、容姿を変える魔法薬とかで見た目を変えていることが多いからな、これを使って見破るんだ。
君はそう入った目的でないようだし言ったけど、これ他言無用ね。」
ああ、なるほど。
ラッドの説明を聞いてノヴァは納得が行った。受付のお姉さんがあの目線を向けてきたのも、ラッドが言ったことが少なくないからなのだろうなと納得した。
「すみません。ややこしくて」
「あぁ、気にするな。むしろ受付の子の態度、すまなかった。あの子はまだ新人なもんでもう一度ちゃんと言い聞かせておく。後でまた一緒に行こう、謝らせるから」
「いえ!本当にお気遣いなく。…それより、ギルド登録はできるってことですよね?」
ノヴァは本当に気にしていない。そんなシステムがあることには驚きだが、目的はギルド登録なのでそっちを早く進めたかった。
「ああ、ここで進めよう。道具が必要なもんで、しばらく待っててくれないか」
「はい、わかりました」
ラッドはそう言い、立ち上がると部屋から出ていった。静まり返った部屋になり、ノヴァは少し落ち着かない。
キョロキョロと、部屋を見渡せば急に扉をノックされた。
!?
思わず驚いて体がびくりと反応した。ラッドが帰ってくるには早い。
「失礼します~」
のんびりとした声にノックの主がラッドではないと気づいて、素早くマントのフードを被った。
入ってきたのは癖のある灰色の髪をした女性だった。服装がギルドの制服であったので職員ということだろう。
「こちら、お茶です~。ラッドさんに言われて持ってきたので変なものではないです~。」
「あ、ありがとうございます」
「君の影にいる人たちってなんなんでしょう?こう言っちゃなんですが、やる気なさそうですね~」
女性は最後の方だけノヴァの耳に寄せて秘密のヒソヒソ話をするように話してきた。
「それってどういう…」
「あ、客と話すなって言われてたの忘れてた。では~」
ノヴァは女性が言ってきた言葉を聞き返そうとしたが、ほぼ被せるように女性は思い出したかのようにハッとした。そして、すぐに背を向けて出ていってしまった。
用事は本当にこれだけだったらしい。
すごいマイペースっぽいな。
え、ていうか何。さっきのはどういう意味だ…?
そう思ってノヴァは考えてみるが、結局思い当たるのはなく何もわからない。目の前では香りの良い紅茶から湯気が立っている。
「いただきます。…おいし」
考えながらせっかく淹れてもらったので、手に取って飲めばその美味しさに驚いた。皇宮で兄とお茶するときに出されるのと同じくらいの美味しさだ。
まあ、別に気にしなくていいか。不思議ちゃんみたいな人なんだろう。
お茶飲んだらなんとなくスッキリとしたので、考えるのはやめた。
「待たせたな」
と、そんなことを思っていればラッドが帰ってきた。
ラッドに席を薦められノヴァはラッドと向かい合うようにソファに座った。
「早速で悪いが、この魔石を握ってくれ」
ラッドはポケットから霞んだ青色に光る魔石のようなものを取り出し机に置き、ノヴァの方へ滑らせた。
何かはわからないが、ノヴァは言われた通りにすることにした。
「わかりました」
ノヴァは少し警戒しながらもその魔石を手に取り、軽く握った。
「…っ!?」
魔石を握って数秒、何も起こらないと油断していたが、いきなり体の中で何かが動くのを感じた。石に引き寄せられるような不思議な感覚だった。
似た感覚をどこかで…
あぁ、そうだ。魔法をかけられたときに感じたやつだ。
「おぉ、なるほどな。そりゃ魔法使うわな」
「え?」
石を不思議だなとジッと見つめていれば、ラッドから何故か納得した声が聞こえてノヴァは顔を上げた。
「悪いな。そいつは触ると魔法が解ける魔石だ。」
「はぁ、、?どういう…」
ん?、てことは今って、、、顔バレてるよな?!
未だ混乱したままだが、魔法が解けたのならそれしかないよなと焦ってノヴァは自分の顔に手を当てた。
「そう、今君の本当の顔見えてる」
「えっ、この魔石そんな効果が?…それより、なんでそんなことを…?」
ノヴァは驚きよりも困惑していた。第二皇子は顔も名前も皇宮の中の者でも一部しか知られていないので、身バレすることはないに等しいだろうが、念には念をだ。ノヴァの心臓は変に音を立てていた。
「不法入国対策だ。奴らは大体、犯罪したが運よく逃げられて捕まえられず、帝国全体で指名手配になっている要注意人物が多い。だから奴らは、仕事を受けられるようになり、身分証にもなる商業ギルドカードを作るろうとする。つまり、不法入国した奴らは一番最初に容姿や名前を変えてギルドカードを作ろうとするってわけだ。
それを見分けるための物が、あの手をかざした紫色になる石ね。そう言う奴は大抵、容姿を変える魔法薬とかで見た目を変えていることが多いからな、これを使って見破るんだ。
君はそう入った目的でないようだし言ったけど、これ他言無用ね。」
ああ、なるほど。
ラッドの説明を聞いてノヴァは納得が行った。受付のお姉さんがあの目線を向けてきたのも、ラッドが言ったことが少なくないからなのだろうなと納得した。
「すみません。ややこしくて」
「あぁ、気にするな。むしろ受付の子の態度、すまなかった。あの子はまだ新人なもんでもう一度ちゃんと言い聞かせておく。後でまた一緒に行こう、謝らせるから」
「いえ!本当にお気遣いなく。…それより、ギルド登録はできるってことですよね?」
ノヴァは本当に気にしていない。そんなシステムがあることには驚きだが、目的はギルド登録なのでそっちを早く進めたかった。
「ああ、ここで進めよう。道具が必要なもんで、しばらく待っててくれないか」
「はい、わかりました」
ラッドはそう言い、立ち上がると部屋から出ていった。静まり返った部屋になり、ノヴァは少し落ち着かない。
キョロキョロと、部屋を見渡せば急に扉をノックされた。
!?
思わず驚いて体がびくりと反応した。ラッドが帰ってくるには早い。
「失礼します~」
のんびりとした声にノックの主がラッドではないと気づいて、素早くマントのフードを被った。
入ってきたのは癖のある灰色の髪をした女性だった。服装がギルドの制服であったので職員ということだろう。
「こちら、お茶です~。ラッドさんに言われて持ってきたので変なものではないです~。」
「あ、ありがとうございます」
「君の影にいる人たちってなんなんでしょう?こう言っちゃなんですが、やる気なさそうですね~」
女性は最後の方だけノヴァの耳に寄せて秘密のヒソヒソ話をするように話してきた。
「それってどういう…」
「あ、客と話すなって言われてたの忘れてた。では~」
ノヴァは女性が言ってきた言葉を聞き返そうとしたが、ほぼ被せるように女性は思い出したかのようにハッとした。そして、すぐに背を向けて出ていってしまった。
用事は本当にこれだけだったらしい。
すごいマイペースっぽいな。
え、ていうか何。さっきのはどういう意味だ…?
そう思ってノヴァは考えてみるが、結局思い当たるのはなく何もわからない。目の前では香りの良い紅茶から湯気が立っている。
「いただきます。…おいし」
考えながらせっかく淹れてもらったので、手に取って飲めばその美味しさに驚いた。皇宮で兄とお茶するときに出されるのと同じくらいの美味しさだ。
まあ、別に気にしなくていいか。不思議ちゃんみたいな人なんだろう。
お茶飲んだらなんとなくスッキリとしたので、考えるのはやめた。
「待たせたな」
と、そんなことを思っていればラッドが帰ってきた。
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