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本編

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「…」

 ノヴァは目を覚ました。肌触りの良いシーツがいつもより肌にあたるようなと思いながらもぞもぞと動く。

 それといつもの人の体温に顔を上げた。そこには瞼を閉じ穏やかな顔をしたリヒトがいた。

 よかったなんともなさそうだ。

 しかし、その寝顔を見てノヴァは一気に昨日の記憶が蘇った。爆発音が聞こえるのではと思うほど顔を真っ赤にしリヒトの腕の中で顔を覆った。

 昨日、マジで何やってんの?
 記憶消してくれ!!

「おはよう」

 突然聞こえた声にノヴァは肩を揺らして、声の方へ顔を向ける。そこには先ほどまでと変わって爽やかな笑みを浮かべた兄がいた。

「お、はようごさいます」

「お腹すいた?」

「えっ、はい。それより体調は…」

 リヒトは起き上がりノヴァから離れてベッドを降りる。ノヴァも一緒に降りようとしたところで、あれ、と違和感に気づいた。

 そのまま自分の視線は下へ下がり…。

「えっ、ふ、服っ着てない!」

 状況を把握してすぐさまベッドのシーツを勢いよく自分に巻きつけた。

「昨日はごめんね。力尽きて、そのまま寝てしまったんだ」

 はっ、と思い出したようにこちらに近づいてきたリヒトは、申し訳なさそうにしてノヴァに謝る。ちなみにリヒトは服を着ていた。

 え、まて。それって、昨日のこと普通に記憶残ってるってことだよな。

 普段通りすぎて、もしかしたら熱にうなされて記憶がないのかと思いかけていたが。

「あ、え?に、兄様、昨日のこと覚えて、、」

「…本当にごめん。許してくれるかな」

 リヒトはシーツに包まれたノヴァをシーツごと抱きしめる。その直前、リヒトの表情が今まで見たことないくらいに苦しそうに見えた。そして、リヒトの声が少し震えていた。

 …これは、許す許さないではない。だって、毒を飲んだのはリヒトのせいではないのだから。

 自分を責めているんだろうなと伝わってくるのがわかる。



「兄様、僕は大丈夫です」

 だから、安心させようとノヴァはできるだけ優しくそう言った。

 それでもずっと離れないリヒトにノヴァはシーツから腕を出して抱きしめ返した。

 そうすればビクッとリヒトの肩が動いた。

「…先にお風呂行こうか」

 一瞬力を込めた後、すぐに緩めるとリヒトはノヴァに向けてニコッと笑みを浮かべた。少し困ったような顔をしていた気がする。




 そのあとリヒトは普段通りで、2人でお風呂朝食と過ごし、ノヴァは離宮に戻った。
 
 別れ際に「またね」そう言ってリヒトがノヴァのこめかみに口付けをした。

 急なことで予測できなかったノヴァは、リヒトの行動に、昨日のことを思い出して赤くなった。

 心臓バクバクしすぎだろ。

「ま、また」

 少し挙動不審になってしまった…。

 リヒト兄様がいつも通りニコニコに戻ったので、いいことにしよう。





 



 色々あったけど、昨日の今日で関係は変わらなかったのがノヴァにとって救いだった。

 よし、切り替えよう。

 離宮に戻ったノヴァは自室へ向かい引き出しから紙とペンを取り出した。

 計画の続きだ。
 一つ、昨日の昼間に思いついたことがある。俺でもできそうなものを。

 それは、コンビニだ。

 この前市場や店が並ぶ通りを見て思っていたが、基本売っているものがひとつだ。

 市場だと野菜でも根菜のみ、果物のみ、肉だけと言った売り方だ。店が並ぶ通りでもパン屋、酒屋といった専門のお店ばかりだった。

 そして、もう一つ。この大きな街は、皇宮があることで貴族の邸宅が多くある。そして、その近くには富裕層の帝国民も多く集まる。

 つまり、使用人を雇っていることが多く、使用人たちは買い物に出なければならない。
 しかし、その近くに食品、日用品なんでも揃うお店があればどうだろうか。
 あの店へこの店へと行く手間が省けるので負担も減るのではないだろうか。

 そう考えた。仕入れ先はもちろん街の人気店からするつもりなので、厳選して一流のものを仕入れる予定だ。

 まあ、これはざっくりしていて現実味がないのでできるかは分からない。
 だから、明日とあるところへ行く。
 最近魔術師からもらった飴で街へ降りていたがそこでとある噂を耳にした。

 それは商業ギルドへ行くといいということだ。


 初めて聞く単語だったが、前世だとゲームにあったなとぼんやりと思った。
 あまり詳しくはなかったが、一時期勧められてそういったものがあるゲームをしていたことがあったので。

 商業、と付くくらいだし一旦いってみてから考えよう。

 ノヴァはそう呑気に考えて一日を過ごした。

 


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