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マルコイ・ラドルフ ハル視点

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イオの本を買うために店主の元へ行く。
馴染みの店主のため手続きはスムーズに進む。
手続きが終わるまでの間マルについて考えていた。

マルの事は昔から知っていた。
仲良くなろうとは思っていなかった。
家族以外信じる事の出来ない俺には、友人を作れるはずもなかったからだ。
今だって何もかもを話す存在ではない。
話せないのは俺の心の問題だと分かっている。
それでもマルだけは普通に話せる唯一と言って良い相手…友人だ。
夜会で俺とエドの話を聞いていたマルは俺と友人になりたいと言ってきた。
最初は相手にしていなかったが、マルは見た目に反して物凄くしつこかった。
何度も話しかけてくるマルに根負けして普通に話す様になった。
エドがマルと仲良くする様に勧めてきたのも大きかった。
マルは軽い男に見られがちだが、俺は人の事をよく見ていて相手に合わせて自分を演じ分けていると思っている。
それは俺達兄弟の事を『ハルは臆病だよな。臆病だから自衛のために殻に閉じこもる。ダニーは逆で自衛のために攻撃してくる感じ?その点エド兄は懐が広いなって思うんだよね!』と言った事からそう思う様になった。
俺も俺達兄弟の事をそう思う所があるから納得してしまった。
マルという男はそういう男なのだ…エドにどこか似ていると思う。
とにかくそんな男がイオに会いにきた事は予想通りだったが早すぎる。
本棚が欲しいと相談しただけで何でイオに会いにくる事になるのか…侮っていた訳ではないけとれど、どうして今日会う事がバレたんだ?
イオと出掛ける事を知っていたのは母さんとエドだけだ。
2人のうちのどちらかからマルに話がもれたのか?
勘弁して欲しい。
イオと出掛けられる貴重な時間なのに…
とにかくマルの話を聞いて早く帰ってもらおう。
そう思っている間に店主との話が終わりイオの元に戻ると、外に出ていたはずのマルがまたイオの側にいる…何なんだよ一体…
イオに話しかけようとしたところでイオの顔が曇っている事に気付く。
マルが何か言ったのだろうと思う。
声を掛けようとしたその時イオが話始めた。

「マルコイ様が仰る様に私もハル様を傷つける事はしたくありません。心配しないで下さいませ。」

「そう。それなら良かった。」

そうマルが言った瞬間にイオが泣きそうな顔になる。
何を話していたか分からないためマルを怒鳴ることが正しいか分からない。
俺は無言でマルを睨んでいた。

「ん?ハル!」

俺の気配に気がついて睨んでいるのもお構いなしに普通に話しかけてくるマル。
イオも俺を見る。
その顔には笑顔があった。
でも、今までとは違って貼り付けた様なぎこちない笑顔だった。
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