上 下
89 / 215

プレゼントは頂きましたが?

しおりを挟む
朝から私はハル様とエド様から頂いた本棚からハル様が選んで下さった本を取り出して読み始めました。
本棚にはダニー様から頂いたチェスボードもしまってあります。
本を手にソファに座りテーブルにはエド様から頂いたお義姉様とおそろいの栞を置いています。
アリーさんが紅茶を淹れて下さいます。
レナイト公爵家にいた時には全てのことを自分でしていましたし、本は図書館でしか読むことができず自分の本を部屋でゆっくり読めるなんて信じられません。
本を読み始めて暫くするとドアをノックする音が聞こえました。

トントン

今週は誰とも一緒に過ごす日にはなっていませんでした。
だからノックがした時に部屋にいらっしゃったのはお義母様だと思いました。
私は読んでいた本に栞を挟みお義母様と会う準備をします。
私が準備している間にアリーさんが確認に向かわれます。

ガチャ

「ハロルド様!」

「イオはいるかな?」

「お嬢様にご用でございますね。少々お待ちくださいませ。」

私はお義母様だと思っていたのですが、アリーさんの話し声を聞いて急に緊張感が高まってしまいます。

「お嬢様、ハロルド様がお越しでございます。」

「は、はい‼︎」

「お会いになりますよね?」

ニコリと微笑むアリーさんは私の気持ちを知っているのではないかと思ってしまいます。

「は、はい‼︎」

「ではご案内いたしますね。」

「お、お願いします‼︎」

「畏まりました。」

礼をしてハル様を呼びに行かれるアリーさんを見つめながらも、私の心臓はドキドキとしてしまいます。
どうにか平常心を保とうと思うのですが平常心って何でしたっけ?
どうしましょう?どうしましょう?
そう思っているとハル様の姿が見えました。
驚きで席を立ち上がってしまいます。

「おはよう、イオ。昨日はよく眠れた?今日は会う日ではなかったのに来てごめんね。」

「あっ、いえ。あの昨日はありがとうございました。それにこれも…選んでいただいた本、とても面白いです。ありがとうございます。」

頂いた本を手に取りペコリと頭を下げてお礼を伝えます。
平静に平静にと思えば思うほどドキドキとしてしまいます。
ガバッと頭を上げると思ったよりもハル様のお顔が近くにありました。
自分の顔が物凄く赤くなるのが分かりました。

「イオ大丈夫?」

「な、何がですか?」

「顔、赤くない?具合悪い?」

「い、いえ。元気です。本当に大丈夫です。」

ハル様は普通にしていらっしゃるのに私だけこんなに動揺してしまうなんて恥ずかしいです。

「そう?イオが大丈夫なら今日は外に出掛けないか?」

「えっ?外ですか?」

「うん。イオが良ければ街を見に行かないかと思っているんだけど。」

「街にですか?」

「そう。一緒に本を見に行かないか?」

「邸に持ってきてもらってもいいけど、イオなら自分で選びたいかなと思ってね。」

「本を…自分で選んで良いんですか?」

「そう。どうだろう?」

「ですが…」

「本は俺からのプレゼントだから気にしないで。」

「本でしたら頂いています。」

「本棚の本は…実は俺のなんだよね。」

「へ?」

「つまり俺が持っていた本。イオにあげたのは本当なんだけど、俺としてはイオだけの本を買ってあげたくて実は初めから今日は一緒に出かけようと思っていたんだよね。だから、これから一緒に買いに行かないか?」

ど、どういうことですか?
私が頂いた本はハル様ので…でも頂いた本で…でも本を買いに行くって…

ハル様どういう事ですか????
しおりを挟む
感想 93

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。 やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。 お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。 初めて投稿します。 書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。 初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。 小説家になろう様にも掲載しております。 読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。 新○文庫風に作ったそうです。 気に入っています(╹◡╹)

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

処理中です...