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最大の壁と新たな決意 ハル視点

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「…………そう言うことで、イオと…ネイオウミ・レナイト嬢と婚約します。」

「違う。ネイオウミ・フィッツジェラルドだ。」

この人はまた…

「まだ、国王の娘にはなっていないですよね?」

「実質なったも同じだ。」

こういう言い方をし始めたら従っておいた方が身のためかな。

「では、改めます。そう言うことで、ネイオウミ・フィッツジェラルド王女と婚約します。」

「だめだ。」

言うと思った。
イオはまさか反対されるとは思っていなかったのだろう、目を丸くして驚きを表している。
伯父がイオを娘にすると言った時に厄介な事になったと思った。
むしろイオとの約束を早く破って婚約するべきだったと後悔した。
今後、この人が最大の壁になるのは間違いない。
今まで子供ができなかった国王が娘を持つ。
溺愛するに決まっている。
伯父の性格的にそうなるに決まっている。
しかも隠されてきた異母妹の娘なんだから。
だからってこの話を譲るつもりはない。

「反対する理由は?」

「まだ早い。」

「婚約することがですか?」

「そうだ。」

「王女の年齢からすれば遅すぎるくらいでは?」

「ネイオウミは今まで辛い思いをして生きてきた。家族の中で幸せに暮らすことを知るべきだ。」

「と言いますと?」

「俺と妻達と過ごす時間が足りないだろう?」

「婚約を反対される理由にはならないですよね?」

「それは俺が嫌だからだよ。何処の馬の骨とも分からない人間に大事な娘はやれん。」

「貴方の弟の息子です。何処の馬の骨ではありません。」

「大事な娘なんだ。」

「俺にとっても大切な人です。」

「お前少しは折れろよ。」

「嫌です。イオと婚約させて下さい。」

何で折れなきゃいけないんだ。
揶揄われているのか?巫山戯ているだけなのか?

「あの…国王様…」

珍しくイオが自分から話し始める。

「ネイオウミ、さっきも言っただろう?お父様だ。」

なのに伯父が横槍を入れる。
せっかく勇気を振り絞って話し始めたはずなんだからやめてあげてほしい。

「あの…私もハル様…ハロルド・サミュエル様と婚約させていただきたいです。」

イオがはっきりとそう言う。
俺だけが願っているわけではないと嬉しくなる。

「私が2人を反対いているのは何も私情によるものだけではないんだよ。」

おおよそ9割は私情だとは思うが、他にも反対する理由があるのか?

「反対する理由は主に3つある。まず1つ目に、2人が今同じ邸に住んでいることだ。それは他の貴族令息・令嬢から見ればふしだらだと言われかねない。だからネイオウミには直ぐにでも王宮に住んでもらう。」

なるほど…それは真っ先に考えておくべき事だな。
伯父も本当にちゃんと考えているんだな。

「それから2つ目にネイオウミが淑女たる教育を受けてきていないことだ。ネイオウミには悪いが私の娘として王女として今後は過ごしてもらう。だから、きちんとした教育を身につけることは最大にして最低限しなければならないことだ。」

婚約を反対する理由かは分からないが話は正しい。
今後、王女として過ごすのに今のネイオウミの本による知識だけでは限界があるからな。

「最後に…ハロルド・サミュエルが次期国王たる器があるかどうか、現国王として見極めなければならない。ネイオウミと結婚をすると言うことは国王になると言う事だろう?俺だって本気でネイオウミを王女として立位させようとは思っていない。だからハルに国王になる資格があるかを見極めるまでは、現王として2人の事を認めるわけにはいかない。なんせ今まで3人とも次期国王になるための準備を適当にこなしてきていたからな。ハル、自分の今までの行動を反省するんだな。好きな女と結婚するために国を支えるという気持ちだけでは国民はついてこない。意味は分かるな?」

もっともだ…今までの自分の行動を後悔しても遅い。
これからの行動で認めてもらうしかない。

「分かりました。これから精進します。」

「まずは1年だ。1年俺について学べ。婚約を認めるかはその時改めて考える。」

1年…長いとは言えないな…イオと共に生きるためにも必死で学ばないとな。

「分かりました。これから宜しくお願いします。イオ、待っててくれる?」

「もちろんです。私も淑女教育頑張ります。」

2人で生きる未来のために決意を新たにした。
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