【完】太陽の王が愛する妖精王の寵児

奏直

文字の大きさ
上 下
118 / 127

118.目覚めの朝

しおりを挟む
3日振りにゆっくりと寝た。
いつもフィアの温もりに癒されていたのは私の方だったのかと今更気づく。
意識が浮上してくると視線に気付く。
ゆっくりと瞳を開けると私を見つめる瞳がある。
アメジストとアクアマリンの瞳と目が合うと三日月型に細められる。

「おはようジーク。」

「…………………………」

「どうしたの?」

「フィア?」

「そうだよ。」

「フィア…フィア…良かったフィア…良かった…」

フィアの髪や頬等に触れ確かめる。

「どうしたの?ふふっ、そこはくすぐった…っつつ。」

「ごめんフィア大丈夫?」

「大丈夫よ。少し痛かっただけ。そんなに青い顔しないで!」

「ごめんフィア。でもフィアが私を庇って…刺されてから3日も目覚めないから…すごく心配したんだ。」

「えっ?えっ?私がジークを庇ったことになってるの?」

「え?」

「ううん。それならいいの。そういう事にしましょう。」

そう言いながら顔を真っ赤にしたフィアが頬を押さえる。

「フィア?どうしてそんなに真っ赤なの?」

「今は…その回復したら説明するね。」

「…うん。そうだね。元気になったら教えて!」

「そういえばサラエン夫人は?」

「まだ目覚めない。」

「そう…元気になったらサラエン夫人のお見舞いに行きたいわ。」

「うん。そうしよう。」

「ねぇジーク、キラデル侯爵はどうなったの?」

「あ…あぁ。それは後で教えてあげるね。まずはオリヴィア医師を呼んでくるから待っててね。」

ー奴の事は何も把握していないんだよな…オリヴィア夫人がフィアを診察している時に確認しておくか。

「待って。もう少しこのままでもいい?まだ朝早いでしょ?ヴィア先生達にご迷惑だと思うから…」

「ダメだ。頼むから自分の事も大事にしてくれ。本当にフィアが目覚めない間の3日間は生きた心地がしなかったんだから。私のためにも直ぐ診察を受けてくれ。」

「心配かけてごめんね。ヴィア先生呼んでください。」

「あぁ少し待っていて。」

私は急ぎ執務室へ向かう。
臣下の誰かはいるだろうと思っていたら全員いて流石に驚いた。
ウィルにはオリヴィア医師を呼ぶように伝える。
ダニーはマーキス公爵家にルドはオーウェン侯爵家にフィアが目覚めた事を伝えに行く。
ゼノスが他三公と四侯に頼りを出しレオンが掴んでいる情報を私に報告する。
本当に頼りになる臣下達だ。
ふと久々に見るゼノスに視線をやる。

ーゼノス…この間は忘れていてすまなかった。お前のおかげでフィアも目覚めたよ。ずっとアルバートとセシリア嬢の事を面倒見てたんだな…

ゼノスには落ち着いたら今度何かお礼をしようと思いながらレオンの報告を聞く。
オリヴィア夫人をフィアの部屋に連れて行ったウィルが戻る。

「診察が終わりましたら声をかけますと言ってました。」

「そうか分かった。」

「もう大丈夫そうだな。」

「あぁ。心配掛けたな。アルバートとセシリア嬢のおかげで目が覚めたよ。」

「えっ?僕は?」

「それとゼノスに殴られて目が覚めた。」

「おいゼノス、陛下を殴ったのか?」

「ウィルさん?落ち着いて…殴ってないから。ただこう胸ぐらを掴んで揺すりはしたけど…」

「はははっ!お前もやればできるんだな。」

そう話しながらウィルがゼノスの頭を撫で回す。
その時、オリヴィア夫人が診察が終わったと報告に来た。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】お姉様の婚約者

七瀬菜々
恋愛
 姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。  残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。    サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。  誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。  けれど私の心は晴れやかだった。  だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。  ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。

捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。 貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?  猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。  疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り―― ざまあ系の物語です。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

身代わりの私は退場します

ピコっぴ
恋愛
本物のお嬢様が帰って来た   身代わりの、偽者の私は退場します ⋯⋯さようなら、婚約者殿

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。

112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。 エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。 庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──

処理中です...