【完】太陽の王が愛する妖精王の寵児

奏直

文字の大きさ
上 下
100 / 127

100.婚約式③

しおりを挟む
「おめでとうございます陛下、オフィーリア様。」

サラエン夫人がそう言いながら近寄って来る。
此方を窺っているキラデル侯爵の瞳には苛立ちが見える。
まぁまだ大聖堂に残っている貴族が口々に私の両親の話をしているからだろう。

「ありがとうございます。どうぞこの後の夜会にもお越しくださいませ。」

そう言いながら夫人に祝福の花を贈るフィア。
サラエン夫人も中々に食えない相手だから私は警戒している。

「ありがとうございます、オフィーリア様。お2人の馴れ初めをお聞きしましたわ。とても運命的な出会いなのですよね。」

「…はい。」

「まぁ照れてるお顔がとても初々しいわ。」

「やめてくださいサラエン夫人。ですが陛下との出会いは陛下のご両親のお導きだと思っています。」

「そうなんですのよね。確かおオフィーリア様はグロリア妃と同じ花の妖精フロリス様の加護を受けているのですよね?」

フィアが花の妖精フロリスの加護を受けていると聞くなりキラデル侯爵が瞳を輝かせたように見える。
だが次のフィアの発言で苛立ちを更に膨らませる。

「はい。ですので陛下と出会えたのは陛下がお義父様から受け継いだ妖精様の加護と、私がグロリアお義母様から受け継いだ妖精様の加護により出会えたのだと思っていますの。」

「そうなのですね。確かにお2人はお互いをとても大切に想い合っていましたわ。そんな相手に出会えることはとても素敵な事ですわよね。」

「はい。ですので今回の婚約式は陛下と相談して、ご両親の婚約式に倣わさせていただいたんです。」

「えぇ。私の両親の様に仲睦まじい家族になりたいとフィアとはいつも話しているんです。」

「素敵ですわね。あっ申し訳ございません長々と話してしまって。もし機会があれば夜会の時にまたお話しさせて下さい。あなたは?陛下とオフィーリア様にお祝いの言葉はないの?」

「…君が話を楽しんでいたから言えなかったんだよ。陛下……オフィーリア様………おめでとうございます。この後の夜会も楽しみにしていますよ。」

「ありがとう。キラデル侯爵。」

「ありがとうございます。キラデル侯爵様。」

「それでは、また。」

そう言い立ち去るキラデル侯爵が最後に見たのはフィアだった。
母と同じ妖精の加護を持っているフィアに興味を持ったのか?
何か引っかかる…見落としてはいけない何かを見落としているような気がして焦燥感に襲われる。
でもその何かに思い当たる前に挨拶をすることになる。
最後に叔父夫婦と挨拶した時にその焦燥感は薄れ忘れていた。
でも最後まで考えておくべきだったんだ。
そうすれば、あんな事にはならなかった筈なのに…。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】お姉様の婚約者

七瀬菜々
恋愛
 姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。  残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。    サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。  誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。  けれど私の心は晴れやかだった。  だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。  ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。

捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。 貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?  猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。  疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り―― ざまあ系の物語です。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

身代わりの私は退場します

ピコっぴ
恋愛
本物のお嬢様が帰って来た   身代わりの、偽者の私は退場します ⋯⋯さようなら、婚約者殿

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。

112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。 エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。 庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──

処理中です...