95 / 127
95.弱くて傲慢で情けない男
しおりを挟む
コンコン
「ジーク?今大丈夫?」
「大丈夫だよフィア。入っておいで。」
「もしかしてレオンハルトさん来てた?」
「何で?」
「ん~陛下の顔してたからかな?」
「陛下の顔?いつもの顔と違うの?」
「キリッとしてる。私が知ってるジークよりもずっと大人の男の人の顔。格好いいけど私の知らないジークがいると思うと何だか遠くに感じるの。もうすぐ1年経つのに私はまだまだ弱いままね…。」
寂しげに笑うフィアを抱きしめる。
「何かあった?」
「何も…何もないのよ。ただ怖いのだと思うの。沢山の人が私達の婚約式の為に動いてくれて…沢山の人が私の立てた計画の為に協力してくれて…でも私は何も出来てないから…」
「フィアだって式のために準備を頑張ってるじゃないか。」
「でもそれは…ジークだって準備もして計画の為に動いて政務だってあるのに…」
「フィアは何が怖いの?私と婚約するのが怖くなった?」
「それはないわ‼︎ただ皆さんに失望されるのが怖いの…私は何も知らないから…それに…本当ならジークに相応しくないでしょ?私の身体は傷だらけで醜いもの…」
「どうして?醜いなんて何でそんな事…」
「だって…他のご令嬢はとても綺麗なんだもの…何もかも私と違うの…私…」
わたしはフィアが落ち着くまでただ抱きしめた。
今のフィアに"大丈夫だよ。フィアは綺麗だよ。私が好きなフィアだよ"なんてそんな事は言わなくても分かっているだろう。
それでも7年に渡り受けた心身の傷が思い出したかの様にこうしてフィアを傷付ける。
それは実際にフィアの体に傷があるから。
他の令嬢との会話についていけないから。
1年必死に頑張っても当たり前にはいかない事がフィアには沢山ある。
フィアは以前それぞれの私室で休もうと言ったが、それは恐らく無理だと思う。
普通にしなければと思って言っているだけだろう。
実際に私が政務で遅くなる時はフィアには先に休む様に言っているが、どんなに遅くても起きて待っているし、仮に寝ていても涙を流しうなされていたりしている。
私には想像もつかない様な事とフィアは今も闘っているのだ。
それは過去の出来事でもあり現状でもある。
そんなフィアに何を言えば安心させてあげられるだろうか?
「ごめんねジーク。私も分かっているの…分かっているのに…自分の気持ちがままならないよ…こんな弱い自分嫌だよ…。」
「フィアは弱くないよ。本当に弱いのは私だよ。」
「ジークが弱い?何でそんな嘘つくのよ。」
「嘘じゃないよ。私は弱くて傲慢で情けない男だよ。だって私はフィアに嫌われるのが怖い。フィアを失ったら私は生きていけない。フィアに出会っていなかったら私は王ではなくなっていた。フィアがいなかったら私は生きていなかった。私にはフィアしかいない。フィアだけいたらいい。フィアをもっと早く助けられていたらフィアに辛い想いをさせずにいられたのに…。ね、フィア私は弱くて傲慢で情けない男だろ?でも、それでも私の事好きでいてくれる?」
「…っ好きよ。弱くても…傲慢でも…情けなくても…意地悪でも‼︎」
「ふはっ意地悪って…そんなに意地してないでしょ?」
「意地悪されてるわ!毎日ものすごくドキドキさせられてるもの。」
「それならフィアは出会った頃から意地悪になっちゃうよ?……好きだよフィア…愛してる。」
幾度目かになる口づけは長かった。
「ジーク?今大丈夫?」
「大丈夫だよフィア。入っておいで。」
「もしかしてレオンハルトさん来てた?」
「何で?」
「ん~陛下の顔してたからかな?」
「陛下の顔?いつもの顔と違うの?」
「キリッとしてる。私が知ってるジークよりもずっと大人の男の人の顔。格好いいけど私の知らないジークがいると思うと何だか遠くに感じるの。もうすぐ1年経つのに私はまだまだ弱いままね…。」
寂しげに笑うフィアを抱きしめる。
「何かあった?」
「何も…何もないのよ。ただ怖いのだと思うの。沢山の人が私達の婚約式の為に動いてくれて…沢山の人が私の立てた計画の為に協力してくれて…でも私は何も出来てないから…」
「フィアだって式のために準備を頑張ってるじゃないか。」
「でもそれは…ジークだって準備もして計画の為に動いて政務だってあるのに…」
「フィアは何が怖いの?私と婚約するのが怖くなった?」
「それはないわ‼︎ただ皆さんに失望されるのが怖いの…私は何も知らないから…それに…本当ならジークに相応しくないでしょ?私の身体は傷だらけで醜いもの…」
「どうして?醜いなんて何でそんな事…」
「だって…他のご令嬢はとても綺麗なんだもの…何もかも私と違うの…私…」
わたしはフィアが落ち着くまでただ抱きしめた。
今のフィアに"大丈夫だよ。フィアは綺麗だよ。私が好きなフィアだよ"なんてそんな事は言わなくても分かっているだろう。
それでも7年に渡り受けた心身の傷が思い出したかの様にこうしてフィアを傷付ける。
それは実際にフィアの体に傷があるから。
他の令嬢との会話についていけないから。
1年必死に頑張っても当たり前にはいかない事がフィアには沢山ある。
フィアは以前それぞれの私室で休もうと言ったが、それは恐らく無理だと思う。
普通にしなければと思って言っているだけだろう。
実際に私が政務で遅くなる時はフィアには先に休む様に言っているが、どんなに遅くても起きて待っているし、仮に寝ていても涙を流しうなされていたりしている。
私には想像もつかない様な事とフィアは今も闘っているのだ。
それは過去の出来事でもあり現状でもある。
そんなフィアに何を言えば安心させてあげられるだろうか?
「ごめんねジーク。私も分かっているの…分かっているのに…自分の気持ちがままならないよ…こんな弱い自分嫌だよ…。」
「フィアは弱くないよ。本当に弱いのは私だよ。」
「ジークが弱い?何でそんな嘘つくのよ。」
「嘘じゃないよ。私は弱くて傲慢で情けない男だよ。だって私はフィアに嫌われるのが怖い。フィアを失ったら私は生きていけない。フィアに出会っていなかったら私は王ではなくなっていた。フィアがいなかったら私は生きていなかった。私にはフィアしかいない。フィアだけいたらいい。フィアをもっと早く助けられていたらフィアに辛い想いをさせずにいられたのに…。ね、フィア私は弱くて傲慢で情けない男だろ?でも、それでも私の事好きでいてくれる?」
「…っ好きよ。弱くても…傲慢でも…情けなくても…意地悪でも‼︎」
「ふはっ意地悪って…そんなに意地してないでしょ?」
「意地悪されてるわ!毎日ものすごくドキドキさせられてるもの。」
「それならフィアは出会った頃から意地悪になっちゃうよ?……好きだよフィア…愛してる。」
幾度目かになる口づけは長かった。
0
お気に入りに追加
122
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

【完結】お姉様の婚約者
七瀬菜々
恋愛
姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。
残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。
サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。
誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。
けれど私の心は晴れやかだった。
だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。
ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。
捨てられた王妃は情熱王子に攫われて
きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。
貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?
猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。
疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り――
ざまあ系の物語です。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。
112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。
エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。
庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる