【完】太陽の王が愛する妖精王の寵児

奏直

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95.弱くて傲慢で情けない男

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コンコン

「ジーク?今大丈夫?」

「大丈夫だよフィア。入っておいで。」

「もしかしてレオンハルトさん来てた?」

「何で?」

「ん~陛下の顔してたからかな?」

「陛下の顔?いつもの顔と違うの?」

「キリッとしてる。私が知ってるジークよりもずっと大人の男の人の顔。格好いいけど私の知らないジークがいると思うと何だか遠くに感じるの。もうすぐ1年経つのに私はまだまだ弱いままね…。」

寂しげに笑うフィアを抱きしめる。

「何かあった?」

「何も…何もないのよ。ただ怖いのだと思うの。沢山の人が私達の婚約式の為に動いてくれて…沢山の人が私の立てた計画の為に協力してくれて…でも私は何も出来てないから…」

「フィアだって式のために準備を頑張ってるじゃないか。」

「でもそれは…ジークだって準備もして計画の為に動いて政務だってあるのに…」

「フィアは何が怖いの?私と婚約するのが怖くなった?」

「それはないわ‼︎ただ皆さんに失望されるのが怖いの…私は何も知らないから…それに…本当ならジークに相応しくないでしょ?私の身体は傷だらけで醜いもの…」

「どうして?醜いなんて何でそんな事…」

「だって…他のご令嬢はとても綺麗なんだもの…何もかも私と違うの…私…」

わたしはフィアが落ち着くまでただ抱きしめた。
今のフィアに"大丈夫だよ。フィアは綺麗だよ。私が好きなフィアだよ"なんてそんな事は言わなくても分かっているだろう。
それでも7年に渡り受けた心身の傷が思い出したかの様にこうしてフィアを傷付ける。

それは実際にフィアの体に傷があるから。
他の令嬢との会話についていけないから。
1年必死に頑張っても当たり前にはいかない事がフィアには沢山ある。
フィアは以前それぞれの私室で休もうと言ったが、それは恐らく無理だと思う。
普通にしなければと思って言っているだけだろう。
実際に私が政務で遅くなる時はフィアには先に休む様に言っているが、どんなに遅くても起きて待っているし、仮に寝ていても涙を流しうなされていたりしている。
私には想像もつかない様な事とフィアは今も闘っているのだ。
それは過去の出来事でもあり現状でもある。
そんなフィアに何を言えば安心させてあげられるだろうか?

「ごめんねジーク。私も分かっているの…分かっているのに…自分の気持ちがままならないよ…こんな弱い自分嫌だよ…。」

「フィアは弱くないよ。本当に弱いのは私だよ。」

「ジークが弱い?何でそんな嘘つくのよ。」

「嘘じゃないよ。私は弱くて傲慢で情けない男だよ。だって私はフィアに嫌われるのが怖い。フィアを失ったら私は生きていけない。フィアに出会っていなかったら私は王ではなくなっていた。フィアがいなかったら私は生きていなかった。私にはフィアしかいない。フィアだけいたらいい。フィアをもっと早く助けられていたらフィアに辛い想いをさせずにいられたのに…。ね、フィア私は弱くて傲慢で情けない男だろ?でも、それでも私の事好きでいてくれる?」

「…っ好きよ。弱くても…傲慢でも…情けなくても…意地悪でも‼︎」

「ふはっ意地悪って…そんなに意地してないでしょ?」

「意地悪されてるわ!毎日ものすごくドキドキさせられてるもの。」

「それならフィアは出会った頃から意地悪になっちゃうよ?……好きだよフィア…愛してる。」

幾度目かになる口づけは長かった。
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