【完】太陽の王が愛する妖精王の寵児

91．専属執事改め補佐官③

その後はダバルも大人しくしていたように見えたため、予定通り退席しようとした。
…が、席を立ち会場内を歩き始めた時にある一画から話し声がダバルの声が聞こえた。
聞こえたところまではまだいいが、その内容がいけなかった。

「オーウェン家のマリーベルって女いるだろう？」

「あぁ美しい女性だよな。双子のお姉さんだったか？確か公爵家に嫁いだんだよな？僕はエミーリアさんとクラスが一緒だったんだがダンザはマリーベルさんと同じクラスだったよな？」

「あぁ。彼女とは親密な仲だよ。俺の恋人だ。公爵家に嫁ぐのは嫌だと言って泣いていたが、伯爵家の俺では権力に潰されてしまう事は目に見えていた。結局彼女は私のために公爵家に嫁いだのだ。」

「そんな‼︎」

「しかも公爵家の女主人は人の血も通ってないくらい恐ろしく非道な女性だと聞く。彼女が虐げられていないか心配だよ。」

その話を聞いた大公とダニーの顔には青筋が浮かんでいる。

ーダバルよなんて事をしてれたんだ。こんな恐ろしい場面に何故立ち会わなければならない。こんなに激怒している2人を私とウィルだけで止められるか？今日に限って宰相とルドは遅れてくる…そもそも私が退席した後に来る予定なのだ…。まずい…よな…

ウィルを見ると同じく顔を青くさせている。
会場中がしんと静まる。
ダバルとその友人は気付かず話し続ける声だけが響いて聞こえる中、大公とダニーの靴の音が轟く。
その靴音から激怒している事が分かる。

「ほぉ面白い話をしているな若者よ。私も混ぜてもらいたいものだな。」

「そうですね父さん。」

顔に青筋立てながら満面の笑みを浮かべているその姿はもう恐怖そのものだ。

「何ですか？それにお前、何のようだ！…ん？父さん？この男の父親か、使用人の分際が俺に話しかけるな‼︎」

ダバルの友人は大公に気付き青ざめる。

「良いじゃないですか。マリーベル夫人が何ですって？」

「何だ興味があるのか？私と彼女の睦言に！彼女の艶かしい肌に…ククッ。お前のような下々の者には決して分からないだろうな。」

ーうん。私はもう止めないよ。フィアが同じように言われたら誰が止めようと暴れるだろうからね。

「陛下！我が息子の本来の職階である肩書きは何ですかな？」

ーうん。ここで公表するつもりはなかったんだけどな…言わないと大公が暴れそうだな…まぁ良いか、どちらにしても私の責任において任命しているのだから。

「ダニエル・ジル・マーキス国王補佐官。好きなだけやれ。私が許す。」

「陛下の許可を得られたので遠慮なく。ダンザ・リグ・ダバルよ私の妻マリーベルが何だって？お前の恋人？睦言？話してみろよ俺が直々に聞いてやるから。」

「若造よ私の妻が人の血の通わない非道な女だと？義娘のマリーとも仲良くしていると夫である私の目には見えるのだがな。欲目だったか？どういう事か教えてくれ。」

ー大公には言ってないんだけど？

「えっ？えっ？まさか…そんな…」

「ここに改めて宣言するがダニエルは本来の補佐官の肩書きに戻す。まぁ元々補佐官なんだが無知な者は困るな。ウィル、2人は急用が出来たそうだ。私は予定通りここで退席するから着いてこい。」

「御意に。」

私は予定通りウィルを伴い退席する。
帰り際に宰相とルドとすれ違い「後は頼んだ。」とだけ言っておく。
戸惑う2人を置いて計画を進めることにした。