【完】太陽の王が愛する妖精王の寵児

奏直

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89.専属執事改め補佐官①

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ダニエル・ジル・マーキスという男はいくつもの顔を持っている。
公爵家の跡取、王位継承権第二位、国王の専属執事、そして夫であり父親である。
色々な顔を使い分ける彼は自慢の従兄弟であり優秀な右腕なのだ。

そんな彼の肩書きである専属執事であるが、正しくは補佐官だった。
王位を継いだ時の私は11歳、ダニーは16歳。
王位継承権第三位から私が王になった事で位が継承権第二になり、その立場からダニーが補佐官とう肩書きを持つことで良からぬ事を考える貴族に利用されかねない事を大公は心配した。
また、私とダニーを争わせる勢力を出さないためにも大公はダニーの肩書きを専属執事としその権限が高くないと暗に示した。
高位貴族の…しかも私の側で働く者はその意味を理解していたが、一部の頭の悪い貴族の目には違って見えていたようだ。

一部の貴族はダニーに舐めた真似をしていた。
ダニーは全く相手にしていなかったが、最近になって目に余るものになったためこの機会に補佐官の肩書きに戻した。
ダニーは望まなかったが、そうしなければ大公の怒りを収められなかったのもある。

それは、とある夜会に私に付き添う形で同行したダニーにある貴族が絡んだ事が始まりだった。

◇◇◇◇◇◇◇◇

「おいお前!従者はホールに入ることは出来ないんだよ。従者用の別室があるからそこで待機しな。田舎者に優しく教えてやる俺に感謝しな。」

ダニーの事を知ってる者達は顔面蒼白だった。
相手の貴族はダバル伯爵子息。
私が以前問い詰めた貴族の息子だが、現在22・3歳だっただろうか?領地の事は何もせず遊び歩いているとレオンから報告を受けている。

ーあの時は父親の爵位を奪うまではしなかったが、今度は息子が問題を起こすなんて…頭の痛い話だ。

私達は彼を無視して会場に入った。
が、彼はその後もダニーに突っかかる。

「執事の分際で何でここまで入ってきているの?」
「お前のような身分の者が来るところじゃないんだぞ。」
「マナーの知らない奴は本当に頭が痛い。」

ダバル伯爵子息はダニーが私の側を離れる時を狙って話しかける。
大公もその様子を睨み見ているが彼は図太いのか大公の視線を一切気にしないでいる。
私と大公は王族専用席が用意されておりそこに座って歓談していた。
ダニーの席も用意されていたが、ダニー自ら不要と申し出た。
何でも専属執事として私の世話をするからだと言う。
ー絶対にダニーはこの状況すらも楽しんでいるな。それにしてもダバル伯爵子息…面倒だからダバルで良いか。ダバルは本当にダニーの事を知らないのだろうか?やめる気配もないのだが…まぁこの位の事であればダニーは問題なく処理するだろうがな。そう思っているのは大公もかな。

大体にしてダニーはダバルの話しかけに一切応じる事はしなかった。
ダニーが相手にしていないこの時にダバルがやめておけば温厚なダニーを怒らせる事も、大公の逆鱗に触れ伯爵家が取り潰しになる事も無かっただろうに…まぁ全てダバルが悪いのだがな。
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