58 / 127
58.王都に…
しおりを挟む 怪我をしたドラゴンもどきはゆっくりと回復していった。サマリエは授業が終わると治療科を訪れ、安静にするために檻に入れられたドラゴンもどきを見舞ってから、モンスター舎でマルモットたちの世話をする日々を送っていた。
1週間後、サマリエが見舞いに来ても、いつも姿を見せることのないライミが、ドラゴンもどきの檻の前にやってきた。今日も胸筋が逞しい。
「毎日、こんなところに来やがって。育成科ってのはそんなに暇なのか」
「暇じゃないですよ。でも、この子のことが心配で」
サマリエは檻の中で、黄色いクッションに頭を預けて眠るドラゴンもどきを見た。冷たい金属の檻の中は、ドラゴンもどきが過ごしやすいように、マットが敷かれ、餌箱には瑞々しいフルーツが入れられている。
「変わったやつだな……モンスターに肩入れするやつなんて滅多にいないってのに」
ポツリとライミが呟いて、白衣のポケットからタバコを取り出した。
「あ、ダメですよ! こんなところで」
サマリエは勢い込んで注意した。ここにはドラゴンもどきの他にも怪我をしたり、病気のモンスターたちが檻に入れられている。そのどれもに、愛情のこもったひと手間が加えられている。
ライミはめんどくさそうに髪をかき乱して、火のついていないタバコを咥えた。
「わかってるよ、咥えてるだけだ」
ヘビースモーカーだなと思いつつ、サマリエはライミの言葉を反芻した。
──モンスターに肩入れするやつなんて滅多にいない。
前世の記憶を取り戻してから、ずっと違和感を抱いていた。この世界でのモンスターの扱われ方に。
サマリエの感覚では、モンスターたちは前世での犬や猫と同じで、愛すべき家族や仲間のような存在だ。それが、この世界の人間からは、モンスターたちは道具扱いされている。サマリエも記憶を取り戻す前は、世話をしているモンスターたちに名前をつけることもなく、それが普通だと思っていた。誰がしてくれたのかわからないが、檻にマットを敷いたり、モンスターにクッションを与えたりするのは珍しいことなのだ。
モンスターを育てる育成科の生徒でも、モンスターをただの道具として見ている者が少なくない。退学になったミックスも、モンスターを可愛がってはいたが、健康を無視した育成は虐待と変わらない。
「どうして、みんなモンスターを大切にしないのかな」
半分独り言の様にサマリエが呟く。
「それは、モンスターたちがまだ魔物と呼ばれていた時代に、人間をたくさん殺したからだろう」
ライミの言葉にサマリエは、目をぱちぱちさせた。
(モンスターたちが魔物と呼ばれていた時代?)
サマリエは記憶の奥から、埃を被った知識を引っ張り出す。
(あぁ、そう言えば……)
この世界はゲームの設定では剣と魔法が失われた世界となっている。その前は魔法が存在していたということだ。この世界に転生したサマリエは、幼い頃にそんな昔話を読んでもらった記憶がある。
まだ魔法が生きていた頃、モンスターたちは魔物と呼ばれ、村を襲い、人間を食べていた。魔法が失われる時、魔物たちも力を失った。魔法を使えなくなった人間は、剣を捨て、弱くはなったが、それでも人間よりも力のある魔物をモンスターと呼び、使役するようになったのだ。
それはもう、ずっと昔々の話だ。
モンスターたちがかつては人間を食べていたとしても、それは何世代も前のことだ。今生きているモンスターたちに、いまだにその罪を背負わせているのだとしたら酷な話だ。
魔物に親を殺されたとか、傷を負わされたという人間は、とうに亡くなり存在しない。その一方で、人間に親を殺されたとか、傷を負わされたモンスターは現在進行形で増え続けている。
モンスターが人間への復讐を考えてもおかしくない話だ。
(もしかして、それがモンスターの暴走のきっかけ?)
シナリオ攻略の手がかりを見つけて、サマリエは天啓を受けたように閃いた。
(ってことは、モンスターたちの地位を向上させたら、最悪のシナリオは回避できるんじゃない?)
サマリエはドラゴンもどきの檻の前で、ふんすと鼻息を吐いた。
モンスターの地位を向上させる。それがサマリエの当面の目標になりそうだ。何をすればみんながモンスターに対して優しくなるのか見当もつかないが、シナリオが始まるには、まだ時間があるはずだ。
考え込んで、くるくると表情を変えるサマリエを、ライミは不思議そうな顔で見下ろしていた。
「お前、自分のモンスターの世話はいいのか?」
「ハッ! 今日はトカゲ三吉の水槽の水を変えるんだった!」
「トカゲ三吉……?」
「それじゃ、失礼しまっす!」
脱兎の如く、駆け出すサマリエに、ライミが怒鳴る。
「おいこら! 病室で走るんじゃねぇ!」
「すみませーん!」
シャカシャカと手を動かす早歩きになったサマリエの姿にライミは吹き出した。
「本当に変なやつだな……お前も次は、ああいうやつに世話されるといいな」
ライミは口の端でタバコを咥え、ドラゴンもどきに優しく語りかけた。決して人間相手には見せない柔和な表情で、眠るドラゴンもどきの小さな頭を人差し指で軽く撫でた。
ドラゴンもどきは薄目を開けたが、ペロリと舌を出して、すぐにまた目を瞑った。
モンスター舎ではサマリエがトカゲ三吉の水槽を洗っていた。睡眠も食事も排泄も水の中で済ます水トカゲは、水槽で飼っているなら3日に1度は、水の入れ替えをしなければならない。水の入れ替え中は、水トカゲを外に出して、日光に当たらせる。時々、こうして体を乾かさなければ、病気になったりもする。野生の水トカゲなら自分の好きな時に、日向ぼっこをするが、狭い場所で飼われている水トカゲは人間がきちんと管理しなければ、すぐに病気で死んでしまう。
(もっと広い場所でのびのび過ごさせてやれたらなぁ……)
せっせと水槽を洗い、新しい水を入れていると、ヒエラがやってきた。
「こんにちは……サマリエさんは、いつもモンスターたちの世話を丁寧にしていて感心ですね」
「それは、どうも」
軽くお礼を言ったサマリエを、ヒエラは頬を赤く染めて見つめている。不思議な沈黙が2人に流れた。
「先生、何かご用ですか?」
サマリエがそう訊くと、ヒエラは「あぁ!」と声を出し、脇に挟んでいた封筒を手に持った。
「捨てられていたドラゴンもどきの所有者と思われる生徒が見つかったので、お知らせに……
」
(それを早く言えよ!)
突っ込みたい衝動を抑え、サマリエは笑顔を浮かべた。
「誰だったんですか?」
「これを……」
訊ねるサマリエに、ヒエラは封筒を差し出す。アカデミーの校章の入った封筒だ。サマリエは濡れた手を制服の脇で拭き、封筒を受け取る。
封筒の中には数枚の書類が入っていた。精巧な似顔絵と共に、生徒の名前と世話をしているモンスターの種類、付き合いのある生徒、行動パターンなどの情報が手書きで記載されている。まるで探偵が作る調査報告書のようだ。
「な、なんですか……これ」
サマリエは眉間に皺を寄せ、恐る恐る訊ねた。
「犯人と思われる生徒の情報です。必要かと思いまして」
「いや、いらない……」
思わず本音が出てしまい、サマリエは慌てて取り繕う。
「それより、この生徒は罰せられるんですか?」
「そうですね、アカデミー側にも報告書を上げたので、近々、監査が入ると思います。その結果で、処分が下るかどうかが決まると思いますよ」
ふむ、とサマリエは調査報告書を見た。似顔絵には見覚えのある男の顔が描かれていた。改造した制服を着て、いつも違う女生徒を連れ歩いているハントだ。
報告書の中には、いつどこで誰と何をしていたかが事細かく書かれていた。A4の用紙に日時付きで、米粒大の文字がびっしり並んださまは異様だ。まるで呪いの手紙にでも対面しているかのような恐怖に襲われる。
(この報告書、アカデミーに提出するために書かれたものでありますように……)
ヒエラの恐ろしい性癖を見てしまったようで、サマリエは必死にそう願った。しかし、アカデミーへの提出書類がこんなおぞましい書式であるはずもなく。サマリエはそっと書類を封筒にしまった。それを丁寧にヒエラに突き返す。
「正当な罰が下ることを願っています!」
言下に帰れという思いを含んでいたが、ヒエラは封筒を受け取ることもなく、サマリエを見つめている。
(え……持って帰ってよ)
しばし、封筒を前に睨み合っていたが、根負けしたのはサマリエだった。水槽の水が溢れそうになっているのもあり、封筒はサマリエの元に残った。慌てて、水を止めるサマリエの後ろ姿を、ヒエラは何をするでもなく、ただ突っ立って見守っていた。
(ここで攻略対象が関わってくるのか……)
水を止めた水槽に手をついて、サマリエは考え込んだ。どうにか自分が関わることなく収まってほしいが、どうにも不穏な予感が拭えない。背後に控えるヒエラのまとわりつくような視線も手伝って、サマリエは悪寒にブルリと体を震わせた。
1週間後、サマリエが見舞いに来ても、いつも姿を見せることのないライミが、ドラゴンもどきの檻の前にやってきた。今日も胸筋が逞しい。
「毎日、こんなところに来やがって。育成科ってのはそんなに暇なのか」
「暇じゃないですよ。でも、この子のことが心配で」
サマリエは檻の中で、黄色いクッションに頭を預けて眠るドラゴンもどきを見た。冷たい金属の檻の中は、ドラゴンもどきが過ごしやすいように、マットが敷かれ、餌箱には瑞々しいフルーツが入れられている。
「変わったやつだな……モンスターに肩入れするやつなんて滅多にいないってのに」
ポツリとライミが呟いて、白衣のポケットからタバコを取り出した。
「あ、ダメですよ! こんなところで」
サマリエは勢い込んで注意した。ここにはドラゴンもどきの他にも怪我をしたり、病気のモンスターたちが檻に入れられている。そのどれもに、愛情のこもったひと手間が加えられている。
ライミはめんどくさそうに髪をかき乱して、火のついていないタバコを咥えた。
「わかってるよ、咥えてるだけだ」
ヘビースモーカーだなと思いつつ、サマリエはライミの言葉を反芻した。
──モンスターに肩入れするやつなんて滅多にいない。
前世の記憶を取り戻してから、ずっと違和感を抱いていた。この世界でのモンスターの扱われ方に。
サマリエの感覚では、モンスターたちは前世での犬や猫と同じで、愛すべき家族や仲間のような存在だ。それが、この世界の人間からは、モンスターたちは道具扱いされている。サマリエも記憶を取り戻す前は、世話をしているモンスターたちに名前をつけることもなく、それが普通だと思っていた。誰がしてくれたのかわからないが、檻にマットを敷いたり、モンスターにクッションを与えたりするのは珍しいことなのだ。
モンスターを育てる育成科の生徒でも、モンスターをただの道具として見ている者が少なくない。退学になったミックスも、モンスターを可愛がってはいたが、健康を無視した育成は虐待と変わらない。
「どうして、みんなモンスターを大切にしないのかな」
半分独り言の様にサマリエが呟く。
「それは、モンスターたちがまだ魔物と呼ばれていた時代に、人間をたくさん殺したからだろう」
ライミの言葉にサマリエは、目をぱちぱちさせた。
(モンスターたちが魔物と呼ばれていた時代?)
サマリエは記憶の奥から、埃を被った知識を引っ張り出す。
(あぁ、そう言えば……)
この世界はゲームの設定では剣と魔法が失われた世界となっている。その前は魔法が存在していたということだ。この世界に転生したサマリエは、幼い頃にそんな昔話を読んでもらった記憶がある。
まだ魔法が生きていた頃、モンスターたちは魔物と呼ばれ、村を襲い、人間を食べていた。魔法が失われる時、魔物たちも力を失った。魔法を使えなくなった人間は、剣を捨て、弱くはなったが、それでも人間よりも力のある魔物をモンスターと呼び、使役するようになったのだ。
それはもう、ずっと昔々の話だ。
モンスターたちがかつては人間を食べていたとしても、それは何世代も前のことだ。今生きているモンスターたちに、いまだにその罪を背負わせているのだとしたら酷な話だ。
魔物に親を殺されたとか、傷を負わされたという人間は、とうに亡くなり存在しない。その一方で、人間に親を殺されたとか、傷を負わされたモンスターは現在進行形で増え続けている。
モンスターが人間への復讐を考えてもおかしくない話だ。
(もしかして、それがモンスターの暴走のきっかけ?)
シナリオ攻略の手がかりを見つけて、サマリエは天啓を受けたように閃いた。
(ってことは、モンスターたちの地位を向上させたら、最悪のシナリオは回避できるんじゃない?)
サマリエはドラゴンもどきの檻の前で、ふんすと鼻息を吐いた。
モンスターの地位を向上させる。それがサマリエの当面の目標になりそうだ。何をすればみんながモンスターに対して優しくなるのか見当もつかないが、シナリオが始まるには、まだ時間があるはずだ。
考え込んで、くるくると表情を変えるサマリエを、ライミは不思議そうな顔で見下ろしていた。
「お前、自分のモンスターの世話はいいのか?」
「ハッ! 今日はトカゲ三吉の水槽の水を変えるんだった!」
「トカゲ三吉……?」
「それじゃ、失礼しまっす!」
脱兎の如く、駆け出すサマリエに、ライミが怒鳴る。
「おいこら! 病室で走るんじゃねぇ!」
「すみませーん!」
シャカシャカと手を動かす早歩きになったサマリエの姿にライミは吹き出した。
「本当に変なやつだな……お前も次は、ああいうやつに世話されるといいな」
ライミは口の端でタバコを咥え、ドラゴンもどきに優しく語りかけた。決して人間相手には見せない柔和な表情で、眠るドラゴンもどきの小さな頭を人差し指で軽く撫でた。
ドラゴンもどきは薄目を開けたが、ペロリと舌を出して、すぐにまた目を瞑った。
モンスター舎ではサマリエがトカゲ三吉の水槽を洗っていた。睡眠も食事も排泄も水の中で済ます水トカゲは、水槽で飼っているなら3日に1度は、水の入れ替えをしなければならない。水の入れ替え中は、水トカゲを外に出して、日光に当たらせる。時々、こうして体を乾かさなければ、病気になったりもする。野生の水トカゲなら自分の好きな時に、日向ぼっこをするが、狭い場所で飼われている水トカゲは人間がきちんと管理しなければ、すぐに病気で死んでしまう。
(もっと広い場所でのびのび過ごさせてやれたらなぁ……)
せっせと水槽を洗い、新しい水を入れていると、ヒエラがやってきた。
「こんにちは……サマリエさんは、いつもモンスターたちの世話を丁寧にしていて感心ですね」
「それは、どうも」
軽くお礼を言ったサマリエを、ヒエラは頬を赤く染めて見つめている。不思議な沈黙が2人に流れた。
「先生、何かご用ですか?」
サマリエがそう訊くと、ヒエラは「あぁ!」と声を出し、脇に挟んでいた封筒を手に持った。
「捨てられていたドラゴンもどきの所有者と思われる生徒が見つかったので、お知らせに……
」
(それを早く言えよ!)
突っ込みたい衝動を抑え、サマリエは笑顔を浮かべた。
「誰だったんですか?」
「これを……」
訊ねるサマリエに、ヒエラは封筒を差し出す。アカデミーの校章の入った封筒だ。サマリエは濡れた手を制服の脇で拭き、封筒を受け取る。
封筒の中には数枚の書類が入っていた。精巧な似顔絵と共に、生徒の名前と世話をしているモンスターの種類、付き合いのある生徒、行動パターンなどの情報が手書きで記載されている。まるで探偵が作る調査報告書のようだ。
「な、なんですか……これ」
サマリエは眉間に皺を寄せ、恐る恐る訊ねた。
「犯人と思われる生徒の情報です。必要かと思いまして」
「いや、いらない……」
思わず本音が出てしまい、サマリエは慌てて取り繕う。
「それより、この生徒は罰せられるんですか?」
「そうですね、アカデミー側にも報告書を上げたので、近々、監査が入ると思います。その結果で、処分が下るかどうかが決まると思いますよ」
ふむ、とサマリエは調査報告書を見た。似顔絵には見覚えのある男の顔が描かれていた。改造した制服を着て、いつも違う女生徒を連れ歩いているハントだ。
報告書の中には、いつどこで誰と何をしていたかが事細かく書かれていた。A4の用紙に日時付きで、米粒大の文字がびっしり並んださまは異様だ。まるで呪いの手紙にでも対面しているかのような恐怖に襲われる。
(この報告書、アカデミーに提出するために書かれたものでありますように……)
ヒエラの恐ろしい性癖を見てしまったようで、サマリエは必死にそう願った。しかし、アカデミーへの提出書類がこんなおぞましい書式であるはずもなく。サマリエはそっと書類を封筒にしまった。それを丁寧にヒエラに突き返す。
「正当な罰が下ることを願っています!」
言下に帰れという思いを含んでいたが、ヒエラは封筒を受け取ることもなく、サマリエを見つめている。
(え……持って帰ってよ)
しばし、封筒を前に睨み合っていたが、根負けしたのはサマリエだった。水槽の水が溢れそうになっているのもあり、封筒はサマリエの元に残った。慌てて、水を止めるサマリエの後ろ姿を、ヒエラは何をするでもなく、ただ突っ立って見守っていた。
(ここで攻略対象が関わってくるのか……)
水を止めた水槽に手をついて、サマリエは考え込んだ。どうにか自分が関わることなく収まってほしいが、どうにも不穏な予感が拭えない。背後に控えるヒエラのまとわりつくような視線も手伝って、サマリエは悪寒にブルリと体を震わせた。
0
お気に入りに追加
122
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

【完結】お姉様の婚約者
七瀬菜々
恋愛
姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。
残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。
サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。
誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。
けれど私の心は晴れやかだった。
だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。
ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。
捨てられた王妃は情熱王子に攫われて
きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。
貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?
猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。
疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り――
ざまあ系の物語です。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

【完結】「君を手に入れるためなら、何でもするよ?」――冷徹公爵の執着愛から逃げられません」
21時完結
恋愛
「君との婚約はなかったことにしよう」
そう言い放ったのは、幼い頃から婚約者だった第一王子アレクシス。
理由は簡単――新たな愛を見つけたから。
(まあ、よくある話よね)
私は王子の愛を信じていたわけでもないし、泣き喚くつもりもない。
むしろ、自由になれてラッキー! これで平穏な人生を――
そう思っていたのに。
「お前が王子との婚約を解消したと聞いた時、心が震えたよ」
「これで、ようやく君を手に入れられる」
王都一の冷徹貴族と恐れられる公爵・レオンハルトが、なぜか私に異常な執着を見せ始めた。
それどころか、王子が私に未練がましく接しようとすると――
「君を奪う者は、例外なく排除する」
と、不穏な笑みを浮かべながら告げてきて――!?
(ちょっと待って、これって普通の求愛じゃない!)
冷酷無慈悲と噂される公爵様は、どうやら私のためなら何でもするらしい。
……って、私の周りから次々と邪魔者が消えていくのは気のせいですか!?
自由を手に入れるはずが、今度は公爵様の異常な愛から逃げられなくなってしまいました――。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる