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43.それぞれが愛した人
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セシル侯爵の執務室に声をかけ入る。
こじんまりとした作りの部屋は雑然としており、普段から領地のために手を尽くしていたのだろうことが伺える。
侯爵の向かいに腰掛け話しかける。
「正気は保てているか?」
「気が狂えた方がいくらかましでした。」
「狂えた方がか…。今後の事だがリズベットと夫人とカルディナ嬢は捕らえた上で裁きを下す。」
「カルディナもですか?」
「あぁ加担していたと証言がある。夫人の事もカルディナ嬢の事も思い当たる節は何もないか?」
「ありません。申し訳ございません陛下。何も気が付きませんでした。」
「隠し扉やあれらの部屋について何故侯爵は知らなかったのだ?」
「マホーティス家はとうの昔に狂っていたのです。私は先代当主の実の子ではありません。先先代当主の愛人の孫になります。先代の子が生まれて直ぐに亡くなったため王家への報告をせず産まれたばかりの私を代わりに据えたのです。そんな私にこの家の秘密が伝えられる事が無かったそれだけです。リズが何故知っていたかは分かりませんが…」
「そうか…。今回の件ではセシル侯爵にも何らかの処罰がある事は覚悟しておけ。」
「私は侯爵位を返上いたします。そのくらいしか私に返せるものはありません。」
「それは…受け入れられない。セシル侯爵の処罰に温情を求める声がある。全く罰しない訳にはいかないが、温情を求めた者達の今回の功績は大きい。故にその者達の声を聞く事にした。」
「恐れながらその温情を求める者とは?」
「セシル侯爵の誠の子であるアルバート殿とセシリア嬢だ。」
「……っ。陛下は何もかもご存知でいらっしゃるのですね…。」
「相手が誰かも知っているのか?私は侯爵のことが理解できない。なぜ知っていながら知らぬふりをした?」
「相手は…存じ上げません。ですが、リズは可哀想な女です。今回のことはリズが悪い。分かっています。でも…リズを見ていると哀れで仕方ないんです。リズは男爵家の三女として生まれ、親からは政略結婚のための道具として扱われ愛されることはなかった。その相手として名が上がったのがリズが好意を抱いた幼馴染だった。でも彼は他の女性と婚約した。政略ではなく恋愛感情で婚約しました。その事がきっかけでリズは少しづつ壊れていった。私はそんなリズを支えたかった。私はリズを愛していた。でもリズは私には心を開くことはなかった。リズが頼ったのは…私ではなかったのです。」
「事情があるのは理解した。それでも許されることではない。私は許すことは出来ない。」
「わかっております。ただ誰かに知っていて欲しかったのです。リズも哀れで悲しい女だったということを…」
私は席を立ち部屋を出た。
これ以上侯爵と話してもお互いに話は平行線を辿るだけだろう。
被害者であるフィアを私は愛しな故に許せず、加害者であるリズベット夫人を侯爵は愛した故に守りたい…ただそれだけだ。
ただそれだけ…
だが起きてしまった事はそのことを覆い隠す程に大きな問題だった…
こじんまりとした作りの部屋は雑然としており、普段から領地のために手を尽くしていたのだろうことが伺える。
侯爵の向かいに腰掛け話しかける。
「正気は保てているか?」
「気が狂えた方がいくらかましでした。」
「狂えた方がか…。今後の事だがリズベットと夫人とカルディナ嬢は捕らえた上で裁きを下す。」
「カルディナもですか?」
「あぁ加担していたと証言がある。夫人の事もカルディナ嬢の事も思い当たる節は何もないか?」
「ありません。申し訳ございません陛下。何も気が付きませんでした。」
「隠し扉やあれらの部屋について何故侯爵は知らなかったのだ?」
「マホーティス家はとうの昔に狂っていたのです。私は先代当主の実の子ではありません。先先代当主の愛人の孫になります。先代の子が生まれて直ぐに亡くなったため王家への報告をせず産まれたばかりの私を代わりに据えたのです。そんな私にこの家の秘密が伝えられる事が無かったそれだけです。リズが何故知っていたかは分かりませんが…」
「そうか…。今回の件ではセシル侯爵にも何らかの処罰がある事は覚悟しておけ。」
「私は侯爵位を返上いたします。そのくらいしか私に返せるものはありません。」
「それは…受け入れられない。セシル侯爵の処罰に温情を求める声がある。全く罰しない訳にはいかないが、温情を求めた者達の今回の功績は大きい。故にその者達の声を聞く事にした。」
「恐れながらその温情を求める者とは?」
「セシル侯爵の誠の子であるアルバート殿とセシリア嬢だ。」
「……っ。陛下は何もかもご存知でいらっしゃるのですね…。」
「相手が誰かも知っているのか?私は侯爵のことが理解できない。なぜ知っていながら知らぬふりをした?」
「相手は…存じ上げません。ですが、リズは可哀想な女です。今回のことはリズが悪い。分かっています。でも…リズを見ていると哀れで仕方ないんです。リズは男爵家の三女として生まれ、親からは政略結婚のための道具として扱われ愛されることはなかった。その相手として名が上がったのがリズが好意を抱いた幼馴染だった。でも彼は他の女性と婚約した。政略ではなく恋愛感情で婚約しました。その事がきっかけでリズは少しづつ壊れていった。私はそんなリズを支えたかった。私はリズを愛していた。でもリズは私には心を開くことはなかった。リズが頼ったのは…私ではなかったのです。」
「事情があるのは理解した。それでも許されることではない。私は許すことは出来ない。」
「わかっております。ただ誰かに知っていて欲しかったのです。リズも哀れで悲しい女だったということを…」
私は席を立ち部屋を出た。
これ以上侯爵と話してもお互いに話は平行線を辿るだけだろう。
被害者であるフィアを私は愛しな故に許せず、加害者であるリズベット夫人を侯爵は愛した故に守りたい…ただそれだけだ。
ただそれだけ…
だが起きてしまった事はそのことを覆い隠す程に大きな問題だった…
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