【完】太陽の王が愛する妖精王の寵児

奏直

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40.アルバート・ラグ・マホーティスの告白③

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「すまない。」 

それしか言葉を絞り出せなかった。

「いえ。恐れながら私達の知る天使様は陛下の…」

「婚約者だ。」

『えっ⁉︎』

「7年前拐われた私の婚約者だ。私は婚約者の詳細を公表していない。セシリア嬢が言った彼女の特徴は私の婚約者の特徴と一致する。」

それを聞き2人がガタガタと震え出す。
自分達の家族が知らなかったとはいえ国王の婚約者に非道な行いをしていたのだから。
だからと言って話をやめてもらう訳にはいかなかった。

「アルバート。話せるか?」

「……………」

沈黙が続きこれ以上は無理かと思った時…

「お話しします。出来るわよねアル?」

そうセシリア嬢がはっきりと言ったその言葉にアルバートも何度も頷く。

「私は母と姉に理由は分かりませんが疎まれています。だからか天使様を…すいませんあの御方を何とお呼びすれば良いでしょうか?」

「彼女はオフィーリアと言います。ですがセシリア嬢の呼びたいように呼んで良いですよ。」

「でわ……オフィーリア様と呼ばせて頂きます。私はオフィーリア様を助けたいのです。例えそれが我が侯爵家の不利益になろうとも母も姉も人としてしてはいけない事をしたのですから。ただ陛下に願っても宜しければ父は無関係です。それだけ知って頂ければ…」

「全く咎めが無いと約束する事は出来ないがセシリア嬢の話は心に留めておく。」

「感謝いたします。アルバート話の続きを…」

「はい。僕達は彼女を…あっ!オフィーリア様を隙を見て助けられないか話をしました。普段家にいる僕がその役目を担う事になったのですが…母達がいない時も見張りが付いていて助け出す事は出来ませんでした。それにオフィーリア様は普段…その…逃げ出さないように…鎖に…繋がれているみたいで…その…食事もあまり食べる事が…オフィーリア様に出されていませんでした…僕が行く時は鞭で打たれ罵られている事が多かったです…」

「何を言われていた?」

アルバートがビクリとする。
それくらい感情のない冷めた声色だった。

「その…"裏切の不義の子がお前のせいで皆が不幸になった"とか"お前の浅はかな行動のせいで未来を奪った"それは必ず言われてました。後はその…"出来損ない"とか"気味が悪い"とか"呪われた者"などです。意味がわからなかったのが"正当な血筋"という言葉ですかね。」

「不義の子ってどう言う事だ?リアは間違いなく両親の子だ。証明も出来る。」

「どう言う事だ?」

そう尋ねるとルドが小声で私に伝えてきた。

「私達が産まれた後に両親は例の誓いをしています。」

「成程。それは疑いようがないな。」

「恐れながら…オフィーリア様はオーウェン侯爵家の御令嬢なのですか?」

「セシリア嬢の言う通りだ。オフィーリア・ロサ・オーウェンがフィアの名だ。それにしても【不義の子】【未来を奪う】【正当な血筋】か………フィアがどういう扱いを受けていたかよく分かった。アルバート・ラグ・マホーティスとセシリア・バム・マホーティス。両名とも勇気を持って話をしてくれた事感謝する。ダニー直ぐに大公と宰相を私の執務室に呼べ。ルドとウィルはいつでも出発できるよう準備を進めろ。馬車は不要だ。馬で駆ける。レオンは騎士団から口が固く信頼に厚いものを数名選び説明と同行の準備を任せる。ゼノスは2人の保護と今の話の詳細を聞き取る様に。2人はゼノスの指示に従ってくれ。」

『御意に。』

私が出す命令に慌ただしく皆が動き出す。
フィアを救い出すために。



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