28 / 127
28.マホーティス侯爵の令息
しおりを挟む
講堂に移動し壇上に用意された貴賓席に座る。
その席から先程の新入生を探す。
暫くすると入り口から静かに入ってくるのが見える。
今日の私は生徒ではなく国王としての参加となる。
壇上から気付かれない様に生徒を伺う。
見知ったものがいないのだろう誰にも声をかけず席に着く。
ーソワソワしているのは緊張からなのかそれとも何かあるのか?レオンの情報を聞いてから判断しても良いだろうが…ん?今、目が合ったか?
そう思った時、照明が落とされ式が開始される。
その時私の背後にレオンの気配がし小声で報告してくる。
「あの生徒はアルバート・ラグ・マホーティス。マホーティス侯爵家の嫡男になります。彼には2人の姉がおります。」
「マホーティスか…確か彼の母親はフィアの両親の友人だったな。」
「はい。リズベット・サンノ・マホーティスはザラス男爵の三女でネイト宰相とは幼馴染です。アリシア夫人とは学園に入学してからの友人ですね。」
「そうか。ダニーに伝えろ。」
「準備を進めます。」
レオンがそう言うと気配が消える。
私がダニーに伝えろと言っただけで正しく意図を汲み取ったレオンは流石だ。
本当に優秀で助かる。
薄暗い講堂の中に座るアルバートを見る。
彼もこちらを伺っている。
ー私に用事があるなら聞いてやろう。
始まったばかりの退屈な式が終わるのをじっと待った。
アルバートの出身であるマホーティス侯爵領は王都から北の海沿いに位置し、馬車で10日程の距離にある。
マホーティス侯爵は人は良いが領地経営は苦手だと報告を受けている。
資金繰りに苦労しているのか長女のカルディナ嬢以外は次女のセシリア嬢もアルバートも13歳のデビュタントはおろか他の夜会も参加できていない。
フィアの件はオーウェン侯爵家に恨みがある者の犯行である可能性が高かったことから侯爵夫妻の両親と友人であるマホーティス侯爵夫人も詳しく調査した。
ー不審な点はなかったと報告を受けている。が、何か見落としがあったのか?不審な点は無かったが継続調査は続けていた。それでも何も無かった。なのに今になって何故息子が出てくる?
喉に苦いものが広がる感じがした。
黄昏時…ゼノスがアルバートを王城に連れてきた。
執務室を出て先に通しいていた応接室に向かう。
中に入ると小柄な体躯のアルバートがビクビクと怯えながら座っている。
「初めまして。アルバート・ラグ・マホーティス君。講堂では私と目が合ったよね?君は私に用がったのだろう?」
どんな意図があるか分からないから威圧するように話す。
私も後ろに控える側近も少しも笑わない。
アルバートの反応を見るためだ。
が、先程より怯えが酷くなりビクビクと震え小動物が小さく丸まっている様に見える。
それでも反応を見るため黙っている。
「ジ……ジ……ジ……」
ーん?何の音だ?アルバートか?威圧しすぎたか?
「ジ…ジ…ジ…ジ…」
「陛下いつまで続けますか?」
「そうだな。」
「ジー…ジー…ジー…」
「陛下。このままじゃ壊れちゃいます。さすがに可哀想です。」
ーはぁ、この展開は考えてなかった。さて、どうしたものか…
その席から先程の新入生を探す。
暫くすると入り口から静かに入ってくるのが見える。
今日の私は生徒ではなく国王としての参加となる。
壇上から気付かれない様に生徒を伺う。
見知ったものがいないのだろう誰にも声をかけず席に着く。
ーソワソワしているのは緊張からなのかそれとも何かあるのか?レオンの情報を聞いてから判断しても良いだろうが…ん?今、目が合ったか?
そう思った時、照明が落とされ式が開始される。
その時私の背後にレオンの気配がし小声で報告してくる。
「あの生徒はアルバート・ラグ・マホーティス。マホーティス侯爵家の嫡男になります。彼には2人の姉がおります。」
「マホーティスか…確か彼の母親はフィアの両親の友人だったな。」
「はい。リズベット・サンノ・マホーティスはザラス男爵の三女でネイト宰相とは幼馴染です。アリシア夫人とは学園に入学してからの友人ですね。」
「そうか。ダニーに伝えろ。」
「準備を進めます。」
レオンがそう言うと気配が消える。
私がダニーに伝えろと言っただけで正しく意図を汲み取ったレオンは流石だ。
本当に優秀で助かる。
薄暗い講堂の中に座るアルバートを見る。
彼もこちらを伺っている。
ー私に用事があるなら聞いてやろう。
始まったばかりの退屈な式が終わるのをじっと待った。
アルバートの出身であるマホーティス侯爵領は王都から北の海沿いに位置し、馬車で10日程の距離にある。
マホーティス侯爵は人は良いが領地経営は苦手だと報告を受けている。
資金繰りに苦労しているのか長女のカルディナ嬢以外は次女のセシリア嬢もアルバートも13歳のデビュタントはおろか他の夜会も参加できていない。
フィアの件はオーウェン侯爵家に恨みがある者の犯行である可能性が高かったことから侯爵夫妻の両親と友人であるマホーティス侯爵夫人も詳しく調査した。
ー不審な点はなかったと報告を受けている。が、何か見落としがあったのか?不審な点は無かったが継続調査は続けていた。それでも何も無かった。なのに今になって何故息子が出てくる?
喉に苦いものが広がる感じがした。
黄昏時…ゼノスがアルバートを王城に連れてきた。
執務室を出て先に通しいていた応接室に向かう。
中に入ると小柄な体躯のアルバートがビクビクと怯えながら座っている。
「初めまして。アルバート・ラグ・マホーティス君。講堂では私と目が合ったよね?君は私に用がったのだろう?」
どんな意図があるか分からないから威圧するように話す。
私も後ろに控える側近も少しも笑わない。
アルバートの反応を見るためだ。
が、先程より怯えが酷くなりビクビクと震え小動物が小さく丸まっている様に見える。
それでも反応を見るため黙っている。
「ジ……ジ……ジ……」
ーん?何の音だ?アルバートか?威圧しすぎたか?
「ジ…ジ…ジ…ジ…」
「陛下いつまで続けますか?」
「そうだな。」
「ジー…ジー…ジー…」
「陛下。このままじゃ壊れちゃいます。さすがに可哀想です。」
ーはぁ、この展開は考えてなかった。さて、どうしたものか…
0
お気に入りに追加
122
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
旦那様は離縁をお望みでしょうか
村上かおり
恋愛
ルーベンス子爵家の三女、バーバラはアルトワイス伯爵家の次男であるリカルドと22歳の時に結婚した。
けれど最初の顔合わせの時から、リカルドは不機嫌丸出しで、王都に来てもバーバラを家に一人残して帰ってくる事もなかった。
バーバラは行き遅れと言われていた自分との政略結婚が気に入らないだろうと思いつつも、いずれはリカルドともいい関係を築けるのではないかと待ち続けていたが。
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
王妃さまは断罪劇に異議を唱える
土岐ゆうば(金湯叶)
恋愛
パーティー会場の中心で王太子クロードが婚約者のセリーヌに婚約破棄を突きつける。彼の側には愛らしい娘のアンナがいた。
そんな茶番劇のような場面を見て、王妃クラウディアは待ったをかける。
彼女が反対するのは、セリーヌとの婚約破棄ではなく、アンナとの再婚約だったーー。
王族の結婚とは。
王妃と国王の思いや、国王の愛妾や婚外子など。
王宮をとりまく複雑な関係が繰り広げられる。
ある者にとってはゲームの世界、ある者にとっては現実のお話。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
もう、愛はいりませんから
さくたろう
恋愛
ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。
王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる