【完】太陽の王が愛する妖精王の寵児

奏直

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24.滲む手

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フィアが攫われた事を伝えた後意識を失ったウィルはこの3日間眠ったままだ。
フィアの母親は青い顔をしていても、幼い双子の子供がいるためか気丈に振る舞っている。
その姿が痛ましい。
王都にいるフィアの姉兄も直ぐに呼び寄せている。
恐らく明日にでも着くだろう。

私も叔父に手紙を出し騎士を捜索に駆り出していた。
他にも貴族の動向を探る様に頼む。
貴族が関わっていることも視野に入れ情報を得たいと頼んでいた。
私には貴族との関わりが少ない事もあり叔父に頼むことにした。

フィアが拐われたと分かった時、宰相は私の腕を確認してきた。
私の知識は両親から教えられたことのみのため偏りがある。
宰相は私の知らないラピスラズリの誓いについて知っているのだろう。
私に知識がないのは問題だと思ったため、後日宰相に詳しく話を聞く事を願い出た。
宰相は了承した。

4日目になってリアの姉兄が戻り、ウィルも目を覚ました。
ベッドに横になり休むウィルの顔は赤黒く腫れ、頭と手足にはたくさんの包帯が巻かれている状態でとても話ができる様には見えなかった。
私は無意識に腕をさする。

そんな状態でもウィルは少しでも手掛かりになるならと起きたことを順に話した。

「邸に戻り母と共にリアの腕を強引に確認した。リアの腕に見たことのない紋章があった。リアは『私は本気なの』と言うと邸を飛び出した。訳がわからないままにリアを追って、宥めている時に7・8人の男に囲まれ暴行を受けた。リアも殴られ意識を失い連れ去られた。」

話すのも辛い状態でそれでも淡々と話しをしていくウィルは話し終えると涙を流して言った。

「助けてと叫ぶリアの声が離れないんだ…」

夫人は途中耐えられず泣き崩れる。
宰相が抱き止め背中をさすり、姉兄達はウィルの側で涙を流しながら慰めていた。
私の手のひらには爪の痕がくっきりと残った。
(私はこの時からずっと思っていたことがある。妖精の加護とは何なのか…?こんな時に何の力にもならないその加護とは一体何なんだ!フィアを迎えにいくと約束したのに…。それは7年経とうとしている今も変わらない。)

フィアが拐われてから私はまた眠れなくなった。
眠れず部屋の窓から外を眺めると朧月が見える。
フィアが見つからず焦燥と不安な今の私の心情にも似て苦しくなる。
ドアがノックされ視線を部屋の中に戻す。

「誰だ?」

「ネイトです。」

「入れ。」

宰相が1冊の本を手に私の部屋に入る。

「この様な夜更けに失礼致します。恐れながら陛下がまだお休みではない様でしたので、ラピスラズリの誓いについて僭越ながら私がお伝えできる限りを話に来ました。」

「そうか助かる。かけてくれ。」

そう言い椅子に座る宰相に手ずから淹れた紅茶を出す。

「フィアにもよく淹れていたから味は保証しますよ。」

「そうですか…。」

宰相はそう言うもカップの中の紅茶を眺めている。
暫くそうしていた宰相は不意に紅茶を飲むと話し出した。

「…………陛下、申し訳ありません。」

「何を謝る必要が?」

「ウィリアムの話を聞いて考えたのですがオフィーリアはオーウェン侯爵の…私の娘だから拐われたのだと思います。」


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